あなたとよむ短歌 テーマ詠「匂い」佳作・入選 結果発表


それでは、佳作5首のご紹介です!
おばあちゃん家の匂いとか好きだった カルピスあるよ・あいたいですね
(白川譽さん)
下句の「・」が独特。お決まりのやりとりという感じが出ています。おばあちゃんは昔は「カルピスあるよ」と家を訪ねるたびに言い、今では「あいたいですね」と手紙やLINEなどをくれるのかもしれません。お家はもう無いのかも。
シャンプーの香りをきみは引き連れて ゴースト ドライヤーで吹き飛ばせ
(稲野さん)
香りというのは確かに形がない幽霊ようです。掃除機で吸い込んだのがゴーストバスターズですが、ドライヤーで吹き飛ばすのも面白いですね。濡れた髪、引き連れる、ゴーストという冷たく湿った言葉が、吹き飛ばしたい「何か」を醸しています。
宿題の漢字ドリルをする息子もう泥団子の匂いがしない
(みあさん)
「匂い」がテーマの短歌で「匂いがしない」という点に注目した発想が◎です。漢字ドリルに向かう息子の丸い頭と、泥団子のイメージが重なります。泥団子の匂いがしないと気づいたとき、最も泥団子の匂いを意識した瞬間かも。
古書店でひらいたページから誰かの誕生日みたいな匂いがした
(Sizukuさん)
「誕生日みたいな」という比喩は、古い本の甘い匂い(紙やインクが経年劣化したものだそうです)や、重なった年月、元々の所有者の存在をイメージさせます。それぞれのページに思い出があるのでしょう。
口の中りんごジュースのにおいしてそんなことばを言わないでくれ
(すずらんこさん)
自分の子どもでしょうか。まだりんごジュースを好んで飲むような年齢でも、かえって幼さゆえに残酷なことを言ったり、どこで知ったのかと思うような言葉を言ったりするものです。どうしたらいいものか。
つづいて、入選10首のご紹介です!
清潔なみどりの匂い詩も歌も必要とせず生きてきた人
(牧角うらさん)
ニンニクの匂いを牛乳で消して午後もいつもの総務の山田
(泰源さん)
温かくなると匂いがする箱を開いて食べる冷凍パスタ
(稲野さん)
新しい朝の匂いがする夜だ あなたの彼女やめていいかな
(本田つづりさん)
ごめんなさいキンモクセイからトイレしか思い出せない家で育って
(畑依裕さん)
紫陽花の匂いを思い出せなくて結婚指輪を静かに置いた
(大野美波さん)
オムライスふたつ頼んで横並び同じにおいのする友と昼
(大橋奥文さん)
ミステリー小説からは生姜焼き風のにおいが何故かしらする
(大橋奥文さん)
カラオケのろうかで友が突然に生のニンジンの匂いがするという
(あきのさくらさん)
香辛の風からみつき路地をゆくインドの午後に私が滲む
(和啓さん)