【短歌のお悩み回答】AIに作品を採点されて苦しいあなたへ――『自分の感性』を信じていい理由


最後に、投稿者の皆さまから寄せられた質問を見ていきましょう。
生成AIが発達していく中で、人間の詩人とAIはどのように共存していくと思いますか? また、詩を書くという行為の価値は今後どのように変わっていくとお考えですか?
AIによく詩を採点してもらいます。しかし自分の考えていることと彼らの考えていることが噛み合わないことが多く、私は自分の考えた詩を正解にしたいのですが、彼らの言っていることも確かに納得できることが多いのです。この場合、私は自分を信じても良いのでしょうか。
今回はAIについての質問が2つ寄せられました。ホットな話題なので、考えていきましょう。
個人的な考えとしては、まず、AIを「創作」に使用することの社会的・芸術的・文学的な意義やメリットが今ひとつわかりません。
たとえば資料作成など、道具として適切に活用できるなら相当な業務効率化になるでしょう。権利問題の不透明さが課題(このままではAI自体を全面的に潰しかねないほどの大きな問題)だと認識していますが、それがもし法整備などされて解決するならば、広告や情報媒体への適切な活用もより広がるでしょうね。
また、本来なら大幅にコストがかかる仕事へのカウンターにもなるでしょう。例えば、何かを説明するための映像が必要な場合、本来なら撮影場所・撮影器具・出演者の手配が必要ですが、AIを使えばそれらを用意せずとも「事足りる映像」を作ることができます。もちろん、これによって死ぬ業界・業種も出てくるでしょう。また、権利関係が完全にクリアになっているツールが、安く一般的に使えるかというと、現時点では違うようですね。
こうした問題点はあれど、仕事の効率化やコストダウンという側面からすると、AIの技術には大きな可能性があります。しかし、詩や文学や芸術の創作活動は仕事ではありません。やらなくても誰も困りません。
だとすれば、効率化する必要がどこにあるのでしょうか。また、短歌(や詩など)を書くこと自体に特別な道具は不要です。お金もかかりません。本来ならAIで業務を効率化させて生活にゆとりをつくり、その時間で人間がゆっくりゆっくり生涯をかけて短歌を詠んだらいいんじゃないかな……と個人的には思っています。
一方で、短歌をAIに詠ませる試みについては、単純に興味深いと思います。どこまでできるのか、何がでてくるのか。私もやったことがあります。良い短歌はなかなか出てきませんが、ごく稀に「お、これは」という短歌ができたりします。やっている方の人間は、結構、アドレナリンも出ます。ガチャと似ていますね。
AIプロンプターなどを自称する人は、出力結果を求めて試行錯誤する点に自らの価値や面白さを見出しているのでしょう。また、その出力結果の良し悪しを見極める判断力も必要です。このような「AIをいかに使うか」という能力は、より一層必要になるでしょう。けれども、こと短歌について……大量生産する必要もなく、常識を守る必要も世間の賛同を得る必要もない短歌というものについて、詠む・読むことをAIに明け渡すメリットがどのへんにあるのか、やっぱり私にはわかりません。
何度か書いていますが、短歌は、情報を正しく伝達するだけの音数を持ちません。すべての人間に同じ解読を促しません。情報伝達や解読が目的ではありません。短歌は、短歌に向き合ったときの脳の動き、字を追う視線、音読したときの喉の震え、心拍が高鳴ったり落ち着いたり、そういう身体的な面白さがベースにあると思います。短歌の面白さとは、実際、かなり身体的なものです。
だからこそ、短歌を詠む人と読む人が存在すると、詠み・読む「場」のようなものが発生すると感じます。「場」が発生すると様々なものが育ちます。それは何日、何年とかけて、加わった人間に影響を及ぼします。これは、私が演劇を長くやっていた故の感覚かもしれません。でも短歌は演劇と違って文学なので、自分で詠んで、少し未来の自分が読み返してもいいんです。今の自分と未来の自分はイコールではないからです。自分対自分でも「場」は成立します。一方で、個人的な経験というものをせず、身体を持たず、生きないし死なないAIに短歌を読ませても、相互関係からの「場」というものが成立するでしょうか。現時点では、私にはどうもピンときていません。
なお、短歌や俳句、川柳、あるいは文学のジャンルについて、AIが使われるようになってきたデメリットは明確になりつつあります。コンテストや投稿サイトにAIで量産された作品が集まり、母数が桁違いに膨らむことで、見出されるべき作品や才能が見出されづらくなっていることです。「才能があれば関係なくデビューできるはず」というのはあまりに楽観的で、溺れるほどノイズが増えたらジャンルごと衰退するしかありません。
AIは革新的な技術だと私も思っています。ただ、あまりにもまだ法整備や、私を含む利用者側の成熟が追いついていません。是か否かという二元論では語れないでしょう。自分にとって何が必要で、なぜ必要なのか、本当に必要なのか、焦らず考えていきたいものです。
作品や質問のご投稿ありがとうございました。
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