感想文で「あなたらしさ」を表現する技術 Part2|受賞するための読書感想文5大メソッド


あなたらしさを言語化する3つの技術
①感情を身体感覚に落としこむ
感動したとき、体のどこかが動いています。
「うれしかった」と書こうとしたら、一度立ち止まって、自分の体に聞いてみてください。「胸のあたりが温かくなった?」「肩の力が抜けた?」「涙が出そうになった?」——身体の感覚を言葉にすると、「うれしい」には絶対に入っていない情報が出てきます。
実際、コンクールの入賞作を読むと、身体感覚の言葉が驚くほど多く出てきます。「胸がぎゅっとなった」「冷たいものが背中を走った」「足が重くなった気がした」。難しい言葉は一つもない。でも、読んだ人の体にもその感覚が伝わってくる。
感情を頭で整理しようとすると、どうしても「感動した」「悲しかった」という抽象語に落ち着いてしまいます。そこで一度、体に降ろしてみる。それだけで、あなたにしか書けない言葉が出てきます。
【例】
「かなしかった」→「体のどこで感じた?」→「カムパネルラが消えた場面、次のページをめくれなくて、喉のあたりがぎゅっと詰まった感じがした」
②感情を「行動」で描写する
「悲しかった」をそのまま書くのではなく、「そのとき自分はどうしていたか」を書いてみます。
感情は、必ず何かしらの行動や状態を引き起こします。手が止まった、ページをめくれなかった、本を閉じてしばらく動けなかった。そうした行動を書くだけで、「悲しかった」より深いものが伝わります。そのとき何が起きたかを、ただ正直に書くだけです。
「悲しかった」→「そのときどうしてた?」→「カムパネルラが消えた場面で、次のページをめくれなかった。しばらくそこで止まっていた」
「ページをめくれなかった」は事実の描写です。でもこの一文から、どれほど深く心が動いたかが伝わってきます。読み手の想像力を信じて、感情そのものではなく、感情が引き起こした行動を書く。それだけで文章は変わります。
【例】
「せつなかった」→「そのときどうしてた?」→「ジョバンニが祭りの夜に一人で丘に座っている場面、本を持ったまましばらく次を読めなかった」
③感情をしぼりこんでいく
「かなしかった」と書こうとしたとき、「でもなんか複雑な感じがする」と思ったことはないでしょうか。その「複雑」の正体が言葉になると、あなたらしさが生まれます。
ただ「複雑」をそのまま言葉にしようとしても難しい。そこで、二択で絞り込んでいく方法を使います。
「かなしかった」 →「悔しい感じ? それとも、さみしい感じ?」→「さみしい」 →「誰かにそばにいてほしかった感じ? それとも、もう戻れない感じ?」→「もう戻れない感じ」 →「カムパネルラともう話せないとわかったとき、二度と取り戻せないものがあるんだと思った」
二択に正解はありません。「どちらかといえば」で選んでいくだけで、「かなしかった」が一段ずつ具体的になっていきます。最後に出てきた言葉が、あなたにしか書けない感情の正体です。
「感動した」を超える言葉リスト
3つの技術で感情を掘り下げた後、言葉を選ぶときに使う鏡として活用してください。難しい言葉を覚える必要はありません。自分の感動に一番近い言葉を選ぶだけでいいのです。
| 感動の種類 | 言い換えの言葉・表現 |
|---|---|
| せつなさ | 胸が締め付けられた/なぜか目が離せなかった/胸が痛くなった/息が詰まるような気がした/胸がちくちくした |
| 安心 | じわじわと広がった/読み終えた後も残った/温かいものが込み上げた/心が軽くなった |
| 驚き・衝撃 | 予想していなかった/ひっくり返された/そんな見方があるとは思わなかった/言葉を失った/気づかされた/頭を殴られたような気がした |
| 共感・同化 | 主人公と同じ気持ちだった/自分がそこにいるようだった/重なった/わかる、と思った/自分だけじゃなかったんだと思った |
| 悔しさ | なぜそうしなかったのかと思った/歯がゆかった/もっとこうなってほしかった/やるせなかった |
| 読後感 | しばらく本を閉じられなかった/何日も頭に残った/うまく言えないけど忘れられない/読み終わりたくなかった |
自分の言葉をもっと増やすために
上のリストはあくまで出発点です。自分だけの言葉を増やすために、次の3つを試してみてください。
類語辞典(シソーラス)で「かなしい」を引く
「かなしい」「うれしい」など、今使っている感情語を一つ取り出して、類語辞典で引いてみます。WebサイトではWeblioの類語辞典が手軽です。
・https://thesaurus.weblio.jp/
「悲しい」を引くと「せつない」「やるせない」「物悲しい」「胸が痛む」など、似ているようで少しずつ違う言葉がずらりと出てきます。
その中から「あ、これ自分が感じた気持ちに近い」と思う言葉を一つ選びましょう。それだけで、あなたの語彙が一つ増えます。
本を読みながら感情表現を書き抜く
本を読むとき、感情を表している言葉や文章に印をつけてみてください。
「胸がぎゅっとなった」「何日も頭から離れなかった」――。小説でも、エッセイでも、難しくはないけれど妙に心に残る表現が必ずあります。
それをノートに書き抜いておくだけで、自分なりの語彙リストができあがっていきます。「うまい表現を真似る」のではなく、「こういう言い方があるのか」と引き出しを増やすイメージで読んでみてください。
日常の感情に名前をつける習慣をつくる
自分の感情を日常的に言葉にする習慣も効果的です。
今日、何かを見て「いいな」と思ったとき、「いいな」の正体を一言だけ言葉にしてみる。「なんか落ち着く」「懐かしい感じ」「ちょっと羨ましい」。一日一回、その習慣があるだけで、感想文を書くときに言葉が出てくるスピードがまったく変わります。
【もっと深く考えたい人へ】コーパスで「本物の使われ方」を調べる
ここまでの3つで十分ですが、もう一歩踏み込みたい人には、コーパスという方法があります。
コーパスとは、実際に使われた大量の文章を集めたデータベースのことです。
類語辞典が「似ている言葉の一覧」を教えてくれるものだとすると、コーパスは「その言葉が実際にどんな文脈で使われているか」を教えてくれます。
国立国語研究所が無料で公開している「少納言」は、新聞や書籍など実際の日本語テキストを検索できるサービスです。登録不要でWebから使えます。
・https://shonagon.ninjal.ac.jp
たとえば「せつない」で検索すると、小説や新聞の中で「せつない」がどんな場面でどんな言葉と一緒に使われているかが用例つきで確認できます。「やるせない」との違いが感覚ではなく実例として見えてくる、という使い方です。
言葉のニュアンスを正確に掴みたいとき、あるいは「この言葉、本当にここで使っていいのかな」と迷ったときに、確認ツールとして使ってみてください。

あなたらしさを表現するための技術を身につけよう
「あなたらしさ」は、特別な才能ではありません。それはすでに、あなたの中にあります。
ただ、それを言葉にするのが難しい。
「感動した」と書いてしまうのは、あなたらしさがないからではありません。それを言葉にする方法を、まだ知らないだけです。
感情を身体で感じてみる、たとえを探してみる、「うれしい」の中をもう少し細かく見てみる。
この記事で紹介した3つは、どれも今日からできることです。語彙を増やすのも同じで、難しい言葉を覚えるためではなく、自分の感動を正確に言葉にするための練習です。