【第10回】 ヤマモトショウ 創作はいつまで続くのか 「作詞家になるには、どうすればいいの?」


2015年の解散後はソングライターとしてでんぱ組.inc、私立恵比寿中学、ばってん少女隊、きゅるりんってしてみて ら多数のアーティストに詞や曲を提供している。
FRUITS ZIPPERに書き下ろした楽曲「わたしの一番かわいいところ」はTikTokで30億回再生を記録し、MUSIC AWARDS JAPANの最優秀アイドルカルチャー楽曲賞を受賞。
2024年2月にはミステリー小説『そしてレコードはまわる』、2025年8月にはエッセー集『歌う言葉 考える音 世界で一番かわいい哲学的音楽論』を上梓。
作詞作曲・編曲を担当したFRUITS ZIPPERの「わたしの一番かわいいところ」は累計再生数2億回を突破。いま大注目のソングライター、ヤマモトショウさん。地元である静岡県を拠点に運営するアイドルグループ・fishbowlの新曲「鰻登」のダンスパフォーマンスビデオも公開後1週間で180万再生を突破。大注目です。(編集部)
第10回 作詞家になる方法、プロが教えます 実は「作詞家になりたい」というような相談をよく受ける。
時々音楽の作り方を教える専門学校で教えていたり、あるいは中高生のワークショップをしていたりもするのでそういった「将来の職業として」の希望も多いのだが、それ以外にも他の仕事をしていて、ある種の副業として「作詞をやってみたい」という方も実は少なくないのだ。
日本で「作詞家」といえば筆頭で名前があがるであろう、阿久悠さん、秋元康さんといった方々も、元々クリエイティブな方面ではあるが別の仕事をされていたところから作詞家になっているし、文筆業などを生業にしている人が作詞をするというようなケースもある。
さて、あくまで「創作」という意味において、非常にシンプルにこのような「作詞家になりたい」という希望に対して言えることは一つしかない。要は「どうぞなってください」ということだ。
これは例えば小説でもそうなのだが、現代において「作詞をすること」「小説を書くこと」そのものへのハードルはほとんどない。目の前にあるスマホやパソコンに向かって、文字を入力しはじめればいいだけだ。(この文章が見れているのだから、おそらくそれが物理的に不可能ということはないと思う)
小説に関しては完成させることは容易ではないかもしれないが、歌詞ということであれば、その分量はせいぜい用紙一枚分、数十行のテキストで済む。
もちろん、そんなことはわかっている、そうではなくて仕事として、ビジネスとして、あるいはなんらか公的な意味で「作詞家になりたい」と言っていることはこちらも承知はしている。しかし、そうだとしてもここまで書いた前提は実は結構重要なのだ。なりたいならば、作るしかない、特に上にあげたように他の分野でキャリアがない場合、その人がどんな歌詞を書くことができるのか、わかりようがないので、まずは書いたものを見せてほしいということなのだ。
送り先がわからなければ、ぜひヤマモトショウのSNSでもメールアドレスでも公開しているところに送っていただきたい。今、作家として活躍している私の弟子も弾き語りの音源を送ってくれたところからはじまり、今では多くのアイドルに楽曲提供をしている。ただし送る場合は、以下で説明するように「歌詞のテキストだけ」というのは受け取れないので、その点は注意していただきたい。
ここで、作詞に関しての少し特殊な事情と、では実際にどうやって「プロの作詞家として」やっていくのかということを改めて書いてみようと思う。
まず、上で「とりあえず書いてみればいい」とはいったものの、実際には数十行のテキストだけをみせて「これが私の書いた歌詞です」というのはかなり無理がある。こういったテキストを歌詞である、と我々が認識できるのは概ねその前に曲があるからであり、その曲の「歌詞カード」としてそのテキストを見るからだ。
とりあえずここがサビで、ここがAメロで、といったような形式がわかるように書くことは大前提としても、やはり「曲」が先にあることに越したことはない。だから私は常に、「どうせ作詞家を目指すのであれば、作曲もしたほうがいい」ということを言っている。
作曲といっても、完成品の音源をつくるような作業ではない。自分が「歌詞だと思うもの」にメロディをのせてみて、それで歌ってみるというようなことだ。
実際、そこで歌ってみて「これは歌にならないな」と思うような文字の羅列では、歌詞として優れているとはいえないだろう。もちろんそのつくったメロディがリリースされるに値するものであれば、あなたは「作曲家にもなれる」わけだし、そうでないとしても、そうやってつくった歌詞は少なくとも形として「歌詞らしいもの」にはなっているから、それに別の作曲家がメロディをつけて歌詞にするという工程が想像しやすい。
これはまったくの持論なので、そう思わない方がいても良いのだが、私は「「歌詞だけが良い曲」というものは存在しない」と考えている。