ヤマモトショウ「歌詞だけが良い曲なんてない」どうして? 【第10回 創作はいつまで続くのか】


もちろん、「歌詞が良い曲」はありえる。しかし、「歌詞だけ」が優れていて、メロディやアレンジがよくないということは基本的にはありえない。
なぜなら、メロディに合っていなかったり、そもそもメロディがいいと思われていないような曲になっていたり、という時点でそれは歌詞がその役割を果たせていないと考えられるからだ。
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歌詞というのはあくまでも「歌の詞」であって、それ単体で存在する「詩」ではない。だから、万が一「歌詞だけが良い」と感じるようなものがあったとしても、それは「作詞家がメロディを無視している」かあるいは「作曲家が歌詞の良さを十分に表現できておらず、それを引き出せていない歌詞は結局良い歌詞ではない」ということになる。
そのように考えても、いったんメロディまでつくることを試みたほうがいいことは明らかだろうと思う。
実際曲の作り方には「詞先」「曲先」の二つがあり、文字通り歌詞から作るかメロディからつくるかということである(もちろん同時に作ることもあるし、私は基本的にそれが望ましいということを上で書いているわけだが)。
さて今、ビジネスとして作詞を行う場合その多くは作詞コンペに参加するということになるが、体感的にはそれらの多くは「曲先」で行われている。つまり、すでに曲ができている状態のものに、歌詞をのせていくというような作業になる。もちろん、この時にはメロディはすでにあるので、上で書いたように「自分でもメロディをつくる」というようなことはできないのだが、実はもう一つ絶対にこれをやった方がよいということがある。これはよく「作詞家になりたい」といってこの作業をする方が陥っている問題でもある。それは自分の書いてみた歌詞を「歌ってみた方が良い」ということだ。
メロディの音数と文字数を合わせることに一生懸命になってしまい、それを実際に歌ってみたら「なんかぜんぜん気持ちよくない」ということは、作詞を始めたばかりの人だけでなく、「音楽的作業として」作詞をしていない人によく起こる状況だ。
うまく歌える必要はない。むしろ上手くない人でも気持ちよく歌える、歌いたくなるような歌詞とメロディこそ求められているとも言える。
さて、コンペについてもその具体的な様子を少し説明しておこう。今はほとんど楽曲募集が(作詞も作曲も)コンペによって行われている。
コンペ情報は基本的に作家事務所に所属している人にのみ公開されることになる。そこに所属するためには、デモ音源などの審査を経て事務所に採用されるしかない。
そこに参加するしかないのか、開かれたコンペはないのか、と思うかもしれないが、実際にはそうせざるを得ない事情がある。というのも、少なくともビジネスとしての作詞というのは基本的に自分のためではなく、アーティストに提供するものである以上、楽曲制作にはそれに伴った機密情報が多数ある。
例えばタイアップの商品面を知ることも必要になるかもしれない。そのような情報を誰にでも公開するわけにはいかないのだ。だから、まずこのコンペに参加するためには作家事務所に「作詞家」として登録される必要があるのだ。(不思議なことだが、別に作詞家として世に出た作品が一曲もなくても、ここでは「作詞家」になれる、ということである)
作詞家志望の人には、いつもまずこのようなことを話しているのだが、だいたい反応は半々にわかれる。「そんなことより具体的な歌詞の書き方のメソッドを教えて欲しい」という人と、「そんな当たり前のことを」という人だ。
前者の方に私が言えることはあまりない。そんなことより、というが実際にはここが作詞の本質であって、なんなら「一番楽しいところ」でもあるのだ。例えば、曲先の場合、作詞はその曲(歴史的な名曲になるかもしれない曲)を世界ではじめて聴いて、そして一つの「曲にする」ことができる立場にいる。
音楽が好きな人にとってこれほど贅沢なことはないし、一方で責任は非常に重大である。いずれにしても作詞におけるこの「音楽的」な部分を重要視し、楽しめないようでは仕事としての作詞家はなかなか難しい。
後者については、まさにそう思っていただければ良いということなのだが、要は私が言っていることのは作詞ができる人にとってはごく当たり前のことなのだ。そして、意外に思うかもしれないが、多くの「作詞家」は言語化していないだけで上記のことを当たり前にやっている。
作詞家というと、「部屋にこもってパソコンの前でうんうんいっている」と思うかもしれないが、私の場合は音楽を聴きながら、歌ったり踊ったりしている。作詞というのも音楽的な行為であって、基本的には詩を書いているというよりも、音楽を作っているのだ。それを楽しめそうな人は、ぜひヤマモトのところにいい歌詞と曲を書いて送ってみて欲しい。そしてヤマモトが踊り出すような曲であれば、間違いなく世を騒がすのではないかと思う。
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