あなたとよむ短歌 テーマ詠「老い」佳作・入選 結果発表


それでは、佳作5首のご紹介です!
大切に使うわというLINE来るちいかわスタンプ母に贈って
(小栁快仁さん)
LINEのスタンプは、使っても減ったり痛んだりしません。それでもオンライン上で贈った「ちいかわ」のスタンプを「大切に使う」と「母」は言う。老いた「母」の返信は少しずれていても、子が幼い頃にくれた贈り物と変わらない喜びがあるのでしょう。
年輪と呼ぶにはすこし柔らかい首のしわごと洗うあかつき
(箭田儀一さん)
箭田さん、テーマ「老い」に強いですね。すばらしい短歌が何首もありました(無記名で選出し、最後に名前を確認しています)。首の皺を年輪にたとえつつも「柔らかい」という質感を交えることで、人間らしさ、人間くささを感じさせます。
父の字の横棒だけがふるえだす住所はずっとそこにあるのに
(macyさん)
住所はずっと変わらない、つまり子どものころから何度となく見てきた、父の書く自宅の住所の字。横棒だけに若干の震えがあることに気づいた、という細やかな視点に、親子らしい親密さを感じます。横棒だけじゃなくなっても、それでも父は生きていくし、自分も生きていかねばなりません。
父の釣りし大チヌの身は痩せており父の如くを父は捌けり
(鰹節虫麻呂さん)
「父の如くを父は捌けり」という下句の迫力が衝撃的です。スペインの画家・ゴヤの名画「我が子を食らうサトゥルヌス」を想起しました。自らの老いと立ち向かうのは、自分自身しかいないのかもしれません。
乗り込んだエレベーターに母が立つ瞬き二回で鏡と気づく
(小仲翠太さん)
「親と自分を見間違える」という短歌は応募作中に複数ありましたが、小仲さんのこの一首は見事です。「乗り込んだエレベーターに母が立つ」という何事もないような状況説明から、「瞬き二回」で状況が一変。読者も共に体感できる短歌です。
つづいて、入選10首のご紹介です!
ソシャゲーでいつも助けてもらってる優先席を譲るみたいに
(大橋奥文さん)
小便の泡が広がりきる前に終わってしまう年頃なんだ
(越野泰徳さん)
「あれ」と言い「それ」と答える食卓に名前を持たない魚の煮付け
(岸寅太郎さん)
夕焼けをあと五千回見るために一日一回朝飲む薬
(空井美穂さん)
散歩する時にふらっと縁石に乗ったりしなくなった気がする
(遊鳥泰隆さん)
白鳩を放つかたちの腕にして父はスマホの通知をひらく
(岸寅太郎さん)
七種入りアソートおかきの半分が好きになったらおじさんである
(水面叩さん)
信号を選べと言われ間違えてロボットかもと思われている
(川村栄さん)
わんぱくと元わんぱくとおてんばと元おてんばが遊びいる午後
(kazumaさん)
右肩をゆっくりあげてばあちゃんはスカイツリーを途中まで見た
(稲野さん)