【短歌のお悩み回答】「老い」の詠み方・短歌賞への応募で迷ったときの考え方を解説


最後に、投稿者の皆さまから寄せられた質問を見ていきましょう。
身近な人の老いを書くとき、どうしても「切ない話」や「介護の場面」に寄りすぎてしまいそうになるなと感じます。悲しませようとしている感じにならずに、でも変化の重みは残すには、どんなところを意識すると良いのか、葛藤します。
今回のテーマ「老い」で短歌を詠もうとしたとき、多くの人が感じた問題ではないでしょうか。
「老い」というテーマについて、不安や悲しさ、苦しさ、辛さ、やるせなさなど、それを吐き出すように短歌にしてももちろん構いません。そうすることで自分自身が楽になることもあります。
一方で、このような公募やコンテストに応募する、つまり「人前に出す短歌」として仕上げる場合には、読者の視点が欠かせなくなります。質問者さんが感じたように、ただただ辛さを嘆いたり、悲しませようという意図が見えたりする作品は、個人的すぎてどうしても読者が「のれ」なくなります。
今回の入選作品を見ていただけるとわかるかと思いますが、出来事よりも、さらに細分化した仕草や行動、変化、音、匂い、温度など、とにかく「具体的で小さなこと」に注目するのがおすすめです。たとえば「ぎっくり腰」は多くの人が経験したことがあるでしょう。けれども「ぎっくり腰の間は目線が低くなって、普段は目につかなかった電子レンジの汚れが気になってしまった」というのは、とてもオリジナリティのあるリアルな体験です。そして、その体験こそがあなた自身の「老い」の表出であり、心情が現れる瞬間であるはずです。
「ぎっくり腰」とだけ示すと、それは大変だったね、悲しいね、痛いよね、という同情が集まってしまうものです。でも、電子レンジの汚れの話になれば、それはその人の日常です。「悲しませようとしている感じにならずに、でも変化の重みは残す」という、ひとつの手段になるような気がします。
今年から短歌賞に応募してみようと考えています。短歌賞の傾向に合わせて作ったら、うまく作れているけど、自分らしさや自分ウケはしていないなと気づきました。なぜか公私を分けるような考え方をしてしまうのですが、柴田さんにもそういうことはありますか? どういう風に自分ウケの短歌を消化させるべきか、迷っています。
短歌賞、短歌コンテストへの応募、いいですね! 興味があればどんどん挑戦しましょう。特に私のように結社やスクールに入らず短歌を続けている人には、コンテストへの応募は良い目標になります。
さて、各短歌賞の「傾向」を調べている質問者さん。偉いです。おっしゃる通り、すべての短歌賞にはそれぞれ傾向があります。それば悪いことではなく、主催側は目的を持ってその賞を開催し、その理念に基づいて選者を依頼し、選者は自分の信念でもって真剣に選ぶからです。どの賞でも同一の評価がなされるわけではありません。
少なくとも、その選者の短歌を読んでみて「苦手だなあ」と思うばかりの短歌賞に応募するのは、あまり得策ではないと言えるでしょう。挑戦するのはもちろん自由ですが、10首、30首、50首と多くの短歌を応募する賞ならば、自分に合う賞をある程度選んで応募したほうが集中できる人も多いのではないでしょうか。
まずは自分の傾向に合いそうな(少なくとも合わなくなさそうな)短歌賞を選ぶのがいいと思います。一方で、「賞の傾向に合わせて『自分ウケしない短歌』を作ってしまう」というのは、私の個人的なポリシーとしてはNGです。最初の読者であり、創作の原動力である自分自身が好きになる短歌を詠まないと、多少「上手な」短歌ができたところで、上位の賞に入選などしません。自分すら好きにさせられない短歌が、他者からの絶大な評価を得られるはずはありません。正しく言えば、あるかもしれないけれど、それは続きません。
自分が納得する短歌を目指し、他者からの意見や、学んだ技術、広げた語彙は「そのために」使うべきではないでしょうか。自分自身が短歌を詠む理由は、それが自分だからです。
作品や質問のご投稿ありがとうございました。
今月は、テーマ詠「ヒーロー」を募集しています。
テーマ詠は、お題の単語を短歌のなかに入れても入れなくてもOKです。そのテーマにあった短歌をお待ちしています。
どこかに応募した作品も、未発表も作品もぜひご投稿ください。(著作権がご自身にある作品に限ります)
分かち書き、句ごとの改行はしなくてOKです。採用されている短歌の書式をご参考に!
応募要項
| 応募規定 | 短歌(57577)を募集します。 テーマは「ヒーロー」。 応募点数制限なし。 応募フォームに柴田葵さんへの質問欄を設けています。短歌のことや、作品づくりについて選者:柴田葵さんに質問があればご自由にお書きください。匿名で質問内容とその回答を記事に掲載させていただく場合があります。必ずしも回答があるわけではございませんので、ご了承ください。 |
| 応募方法 | 応募フォームからご応募ください。 ※X(旧Twitter)での応募はなくなりました。 ※応募者には、弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。 |
| 賞 | 最優秀賞1点=Amazonギフト券3000円分 優秀賞2点=Amazonギフト券1000円分 佳作数点=ウェブ掲載 ※該当作品なしの場合があります。 ※作品を記事内で推敲する場合があります。 ※発送は発表月末~翌月頭を予定しております。 |
| 締切 | 2026年7月31日 |
| 発表 | 2026年9月1日 |