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第10回「小説でもどうぞ」佳作 逆夢/猫壁バリ

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作文・エッセイ
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小説でもどうぞ
第10回結果発表
課 題

※応募数291編
「逆夢」猫壁バリ
   0
「おぬしは正夢を見る運命にある。夢で告白に成功すれば、現実でも想い人と恋仲になれるじゃろう」
 占い師の北町バアにそう言われて、ウチは決意した。絶ッッ対に、夢で三村君に告白しようって。

   5
 その夢は、夢のような夢のシチュエーションだった。放課後の木漏れ日の下には、ウチと三村君の二人だけ。高校の体育館裏に、五月の爽やかな風が流れていた。
 三村君は、その少し長い前髪を揺らして、微笑んでいた。

   4
 ウチは告白の言葉が自分の口から出てくるのを一秒、また一秒と待っていた。でも待てど暮らせどウチは黙ったまま。もう~ウチのグズ! 制服のスカートを握りしめて、自分を奮い立たせる。そして、想いを口にする。
「大好きです、付き合ってください」

   3
 ……そう言うつもりだった。
 でも結局、ウチが三村君に伝えたのは、別の言葉だった。
「LINE交換してください」
 うそ~なんで!? 緊張のあまりテンパって、弱気になった。あと一歩だったのに……。でも三村君はLINEの交換をOKしてくれた。QRコードで三村君のIDをスキャンすると、ウチは逃げるように立ち去る。
 まだチャンスはある。LINEで告白すればいい。本当は顔を見て、直接気持ちを伝えるべきだと思ってたけど、背に腹はかえられない。ウチは家に着くなり二階の自分の部屋へ駆けあがり、バッグからスマホを取り出そうとした。
 無い。スマホが無い。
 ええ、落とした!? これじゃ告白できないじゃん! 確かにウチはスマホをよく失くすけど、それは現実の話で、夢の中でまで再現しなくてもいいのに。夢なら、夢のようなことが起こるべきでしょ!
 その時、暮色だった空が突然明るくなったかと思うと、大気圏を突破した小惑星が地球に衝突し、地球は一切の生物が住めない死の惑星と化したところで、ウチは目を覚ました。何この夢。最悪の目覚めだった。

 翌日の夢。ウチはまた、三村君を体育館裏に呼び出した。『放課後、体育館の裏で待ってます』。そう書いたメモを、昼休みにこっそり三村君に渡した。メモの文字は力んで少し歪んでいた。
 六限目が終わり、下校ラッシュも落ち着いた頃、ウチは体育館裏で三村君と向かい合っていた。
 言わなきゃ。気持ちを直接、伝えなきゃ……。

   2
 告白は上手くいかなかった。体育館裏で告白するはずが、なぜか「ツイッターやってる?」と訳の分からないことを訊いてしまい、でもまあツイッターのダイレクトメッセージでも告白はできるな、と考えているところに異星人の軍勢が地球を侵略せんと現れ、さらに「そうはさせるか」と未来の地球人が宇宙艦隊群と共に時空を超えて登場し、地球の運命を決する防衛戦が始まったところで、ウチは夢から覚めた。何この夢。最悪の目覚めだった。
 明日こそ。明日の夢こそ、伝えて見せる。
「ウチは三村君のことが好きだ」って。

   1
 絶対に三村君の恋人になってみせる。告白するために、ウチは何度だって夢を見る。
 夢の中で、ウチはメモを書く。『放課後、体育館裏で待ってます』。その文字は少し歪んでいる。何度書いても、どうも上手くいかない。夢で書いたメモは、夢の中の昼休みに、三村君へ渡す。
 この気持ちを打ち明けるチャンスをくださいと願いながら。
《おぬしは正夢を見る運命にある》
(了)