高橋源一郎の小説指南「小説でもどうぞ」第10回「夢」結果発表
1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。
小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。
■第13回 [ あの日 ]
8/1 ~ 8/31(消印有効)
■第14回 [ 忘却 ]
9/1~9/30(消印有効)
※募集期間外の応募は無効になります。
夢
課題は「夢」ということで、悩んだみなさんも多かったかも。そういう場合は、あれこれ考えず、直球でいった方がいいかもしれませんね。そんなことを考えました。
最優秀賞は、山本絢さんの「Let's meet again」。これはもう、ど真ん中、ふつうの「夢」のお話。朝、「裕司」と妻の「美絵」の、いつもの日常が始まる。以前と違うのは、飼い猫の「ハル」がいないこと。「ハル」は、子どもが生まれなかった彼ら夫婦にとって、子どものような存在だったのだ。今日見た「夢」の中で、「ハル」はいつものように「お父さん、元気? と抱きついてきた。可愛かったな」と「裕司」はいう。「ハル」は死んではいない。夫婦の中で、「夢」の中でずっと生きているのだ。よかったです。とっても。
山内みえ
山内みえさんの「おかしくない」では、いきなり「私」が病院で気づくところで始まる。「なんか変じゃない?」かって。どこが変なんだろう。よくわからない。「私」の身体にはいろんなものが突き刺さってるし。思い出した。今日は恋人の「貴大」の家に行って一緒に映画を見る予定だったんだ。こんなことしてられない!
あれ、「貴大」が来た。しかもものすごく泣いてる。変だ。すごく。声も出ないし……とここまで書けば、わかりますね。これは「夢」じゃない。「夢」だったらいいのに。とても悲しいお話。この作品が最優秀でも良かったかな。
水曜
水曜さんの「夢の続き」は、こんな文章で始まる。「はあ。ようやく、仕事が終わった。深夜まで残業していた私は、ふらふらになりながらも帰路についた。心も体も疲労のピーク。希望はただ一つ。久しぶりに、自宅のベッドで眠ることができるということ。楽しみ過ぎて、逆に寝られる気がしない。次第に次第に早足になっていき、自宅のドアを開けて服を脱いで寝室へダイブ……したところで目が覚めた。『何だ、夢か』。どうやら転寝(うたたね)していたらしい」。そして……ああ、そうなの? 面白いけど、それだけではね。惜しい!
寺谷千兵衛
寺谷千兵衛さんの「空を飛ぶ」は、不思議な作品。課長の「俺」は、昼休み、部下の村井を見つけると、後ろからぶつかる。「何すか、いきなり」という村井。そりゃそうだ。しかし、「俺」にはそうする理由があった。「村井」に「スカイダイビングのパラシュート、つける前に押された」のだから。まあ、今朝見た「夢」の中の出来事だったんだけど。迷惑だよね、「村井」としても。そうやって、昼食を終えて、会社に戻ろうとした、そのときだった。「村井」があることをするのである。えっ? 怖いんですけど……。
長谷部達也
長谷部達也さんの「禁断症状」は、流行病で外出が禁止され、その不満を逸らすため、政府が戦争を始めた世界の物語。主人公の「権蔵」は、妻を亡くし、二人の孫も戦争に駆り出されたあげく、一人は戦死、もう一人の孫は行方不明。失意のどん底で、唯一の楽しみは薬を飲んで寝ること。そして、そのとき見る、楽しい「夢」だけが生き甲斐になっていた。「夢」の中では、家族はみんな元気だったからだ。やがて、「権蔵」はほとんどの時間を眠って過ごすようになる。すると……どうなったでしょうか。やっぱりね。
逸見めんどう
逸見めんどうさんの「わたしの夢」の主人公「私」は、敏腕の社長。社用車で帰社する途中、ラジオから流れる「わたしの夢」というテーマの便りを聴いている。それはいいのだが、やたらと話しかける「社長秘書のカシヅキ」が鬱陶しい。イライラする。車は遅れがちだし。ぼんやり考える。いったい「私」の夢とはなんだろう。すると、突然、気づいたのだ。もちろん、コンビニで車を止めるよう運転手に命じる。敏感な運転手も気づく。では、そんな「私の夢」とは? こういうオチとは! そう来るのか……。
衣奈響子
衣奈響子さんの「悪夢」は、もちろん悪夢に関するお話だ。「私」と一緒に住んでいた「航」は、しょっちゅう悪夢を見る。それはまあいい。その悪夢の話をして「トモミ」と「離れられなくなった」なんて、それこそ悪夢じゃないか。いや、「航」は「お前とおるのが悪夢やったんや!」と言うし、お返しで「私」も「こっちも、あんたとおるのが、悪夢やったんや!」と言い返す。おおこれはいったいどうなるんや。楽しみながら読んでいったが、こちらもうまく着地できなかった。「悪夢」ということばを使いすぎたかもしれませんね。
猫壁バリ
猫壁バリさんの「逆夢」はこんなふうに始まります。
「おぬしは正夢を見る運命にある。夢で告白に成功すれば、現実でも想い人と恋仲になさるじゃろう」と占い師にいわれた「ウチ」は、それなら「夢で三村君に告白しよう」と決心するのだ。ところが、予定通りにはいかないんだよね。告白できないし、異星人が侵略してくるし。でも、「ウチ」は頑張るのだが……おもしろそうな話なのに、オチがうまくいかなかったかな。残念。
■第13回 [ あの日 ]
誰にでも、特別な「あの日」っていうのがあるんじゃないでしょうか。大切な人との思い出の日、二度と戻って来ない日、どうしても忘れたくない日、忘れたい日。そんな特別な「あの日」のことを書いてみてください。
■第14回 [ 忘却 ]最近、忘れちゃうんです。なんでも。老化のせいでしょうか。でも、ちっちゃいときのことは覚えてたりする。不思議ですね。みなさんは、どんなとき、何を忘れましたか? 大切なこと? つまらないこと?
■第13回 [ あの日 ]
8/1 ~ 8/31(消印有効)
■第14回 [ 忘却 ]
9/1 ~ 9/30(消印有効)
A4判400字詰換算5枚厳守。ワープロ原稿可。
用紙は横使い、文字は縦書き。
郵送の場合は、原稿のほか、コピー1部を同封。作品には表紙をつけ(枚数外)、表紙にはタイトル、氏名を明記。別紙に〒住所、氏名(ペンネームの場合は本名も)、電話番号、メールアドレスを明記し、原稿と一緒にホッチキスで右上を綴じる。ノンブル(ページ番号)をふること。コピー原稿には別紙は不要。作品は折らないこと。作品の返却は不可。
※WEB応募の場合も作品には表紙をつけ、タイトルと氏名(ペンネームの場合はペンネームのみ)を記入すること。
未発表オリジナル作品とし、最優秀賞作品の著作権は公募ガイド社に帰属。
応募者には、弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。
第13回・11/15、公募ガイドONLINE上
第14回 12/15、公募ガイドONLINE上
最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載
※最優秀賞の商品券はAmazonギフト券に変更となりました。
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「第〇回小説でもどうぞ」係
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