あなたの作品が浮世絵に! 「第14回アダチUKIYOE大賞」
公益財団法人アダチ伝統木版画技術保存財団では、共に現代の浮世絵を作る絵師の発掘を目的にポートフォリオを募集しています。大賞受賞者には、賞金30万円と、現代の職人の技で木版画として作品を制作し、完成した木版画を進呈します。締切は、2022年12月23日。あなたの作品を、彫師、摺師との制作で浮世絵にするチャンス! ぜひチャレンジしてみましょう。
鮮やかな色彩、独特な構図を木版画で
日本の伝統文化として名高い浮世絵。江戸時代に花開いたこの文化は、当時人気の役者や遊女、名所などその時代の風俗、世相を反映し描くことで、庶民の間で大流行しました。浮世絵の鮮やかな色彩や独特な構図は、鎖国が解かれ世界に日本文化が流れ込む中で、ゴッホやモネなど印象派の画家にも大きな影響を与えました。
浮世絵は総合芸術と言われています。それは、絵師・彫師・摺師の三者と、それをプロデュースする版元の力がなければ完成しないからです。より速く美しく大量に作るため、当時最先端のカラー印刷技術であった木版が用いられました。商業印刷であることから、簡潔で洗練された浮世絵独自の省略美が生まれました。また、山桜の版木、手漉きの和紙、水性の絵具など、日本独自の素材を用いることで生まれる、木版ならではの鮮やかな発色と温かみのある風合いも魅力の1つです。
こちらは第11回大賞池田和宏さんの作品「Astro Girl」の木版画制作の様子です。
顔や体の輪郭や宇宙服のシワなど、線に強弱をつけながら緻密な筆遣いで描かれた本作品。その特徴を出すため、アウトラインを人物と宇宙服のシワとに分けて彫ったとのこと。板を分け、墨の線の色に濃淡をつくることでより立体感が出ました。ちょっとした色のバランスで絵が変わってしまう部分でもあり、摺師の腕が光ります。
彫師、摺師ともに、女性の表情を決める顔の部分は特に注意したそう。目元の彫は難しく、微笑んでいる目の雰囲気が出るように気をつけて彫ったそうです。
現代的なモチーフをシンプルな構図や色で描いた本作品は、江戸時代、浮世絵に求められた画題の「現代性」と「省略」された表現が兼ね備えられた、現代の浮世絵作品となりました。
今を生きるあなたが描く浮世絵
「現代の浮世絵を描く才能のあるアーティストを発掘する」という趣旨の本公募。ここで、過去の受賞作品を見ていきましょう。
こちらは第12回大賞を受賞したオギハラフウカさんの作品。
墨の濃淡や、朱の効果的な使い方に目が奪われますね。「現代社会における境界」という社会的テーマは、現代の浮世絵としてふさわしいものであると評価されました。受賞者の方は、現在木版画の作成中ということで完成が楽しみですね。
昨年開催された第13回大賞を受賞した榊原太郎さんの作品。
日本美術の古典的画題を現代的な場面へと落とし込む手法で描かれています。一見そうとは見えないながらも、浮世絵への深い造詣が読み取れる構図や、精緻な描き込みが高く評価されたそうです。どこか懐かしい猥雑な街並みや、ユニークなキャラクターたちが魅力的に描かれており、木版作品となった際には看板の文字なども良い味になるのではないかと審査員の中で期待が高まっています。
受賞作品を見ていると、世相を反映するという浮世絵の原点や、浮世絵らしい構図、色彩、そして木版画になるという視点を持ち、どう表現するかもポイントになりそうです。
今回の公募は、応募者の日頃の制作活動や様々な作風を知り、より総合的に浮世絵師としての可能性を探るため、ポートフォリオ審査になります。あなたの今までの活動や作品と、浮世絵の歴史や特徴がリンクするなら、この機会を逃すことなくチャレンジしましょう!
森野たぬき
チョコレートが大好きな公募情報ライター。児童文学や童話の公募を見ると目が輝いてしまう。趣味はクラリネット。
出典:https://foundation.adachi-hanga.com/award2022/
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