高橋源一郎の小説指南「小説でもどうぞ」選外佳作 はよ歌え/キユサマワカルフ
キユサマワカルフ
キーーーーン、とハウリング。が終わらないうちに男は喋り出す。声は思ったより高い。
(謎に長い間)
オレたち『ブッコロシーズ』は……………アナーキーパンクロックなんで、歌うことしか、できないから。
じゃあチョコバナナはどーですかって申し訳ないけどオレは生まれ持っての反逆者なわけで。弱きには愛を、でもお上がいい加減なことしてると、この指立てるよ平気でね。そういう日々の悶々沸々とした思いを音楽のチカラで全世界に発信したい。魂を揺さぶりたいわけで。ワールドワイドでおかしいよ世の中。全人類的に狂ってるぜ。道端で四00円でお弁当売ってるおばさんがいる。みんな汗して働いてんの。ね。オレはおばさんから唐揚げ弁当を買ったね。お茶までついてた。で、四00円。そして割り箸袋に入ってた爪楊枝で指を刺しました。理不尽じゃね? オレに一体なんの罰? ちょっと血が出たし。誰も悪くないのに傷つく人がいる。そんな内なる言葉にならないこととか、ニュースとか実家の新聞とか読んで、いやいやいやこれおかしいんちゃうかーって親が言うこととか、誰かが言わないといけないこと、誰も言えないならオレが言うって感じで、そんな思いを母親にいろいろ言ってたら、詩にしてくれました。サンキュービッグマザー!
まぁそんなこんなで、ちょっと長い話聞かせちゃったけど、はじめてのステージなんで許せみんな傷ついてるオレも傷ついてるその傷ついた世界をオレらパンク魂みたいなもので吹っ飛ばすぞって想い、この曲に込めました。オレ、パンクロッカーだからね、シノゴの言わず結局歌うしかないわけで。不器用です。そこはごめんね、ほんとごめん、言葉足らずはサウンドで繋ぐぜ。歌います。
あ、でもこれ、実はせつないバラードなんだよね。母親がアナーキーとかパンクあんまり分かってないっつーか好きじゃないっつーか、なんかしっとりしたのがええわぁ、まーくんのキレイな声で歌って欲しいなー思て書いた詩なんよーゆうようなことで。作詞者を立ててってことでもないんだけど、それ、逆に、パンクかもねって話。逆にね。予定調和をブッコロシーズってことで。オレたち記念すべきはじめてのステージ。今年サイコーのパンクロックバラードです。
聞いてくれ。
(了)