書くしかない
2021年、皆さんにとってはどのような年でしたか。
私にとっては、挑戦した年となりました。
人生で初めてエッセイの審査に携わったのです。
お話をいただいた時は、まったく自信がなく一度はお断りしようかと思いました。
しかし、後にも先にもこの一度きりの機会かもしれないと考え直し、お引き受けしたのです。
200作以上の作品を拝見しましたが、初めの5作を見たときに、胸がいっぱいになってしまいました。
かけがえのないエピソードや、心の奥底にある深い感情を、私が読んでしまっていいのだろうか。
やると言った手前、一旦読むのをやめて悩みました。
命に係わる病の話や、戦争の話、困難に立ち向かう話や、忘れ難い家族との思い出。
次から次へと貴重品を触らせていただいているような、初めての感覚に陥ってしまったのです。
書くことが好きで単純にプレーヤーと自覚していた私でしたが、この作品すべて責任を持って審査したいと改めて思いました。
でもどのように、この「思いの塊」と向き合えばいいのか……。
考えた末に、私らしく「書くしかない!」と思い立ったのです。
その作品の一番伝えたかったことは何か、どこが一番刺さったか、などをどんどん書き出していきました。
今回のコンテストでは「テーマ」「オリジナリティ」「文章表現」の3つの項目が満たされているかどうかが審査基準でした。
「テーマに沿っているか」や「伝わりやすい文章表現であったか」についてはある程度、点数化しやすいですが「オリジナリティがあるか」については判断が難しい。
癖や偏りがあってもそれは面白い個性であるし、万人に受け入れられるように書かれた文章もそれは努力した結果であると感じました。
日常の小さなことを膨らませているエピソードもあれば、人生でめったに起きないような大きな出来事を書いている人もいます。
「そもそもオリジナリティとは何か」という根っこの部分を考えさせられました。
不慣れではありましたが、私はとにかく作品ごとの感想を書いては比較することを繰り返して点数をつけていきました。
200作以上というと時間もかかり大変な作業でしたが、何度も読み返して、書くことができました。
そのくらい、人の人生の一部を切り取った文章というものは、飽きない。
すべての作品に、それぞれのドラマがあるからです。
また、「審査員の目」という新たな視点で過去の自分の作品も見直してみました。
すると、感動した量を半分も表現しきれていなかったり、題名が的外れで違和感があったりと、多くの課題が見つかりました。
特に感じたことは「他人が見たときにどう感じるか」という配慮が欠けていた点です。
友人や家族にはたいていの説明を省いても話が通じますが、互いの顔も知らない相手が読んだ時にもちゃんと理解してもらえるのか。
その点に気を付けて、親切で丁寧な表現をしていけたらいいな、と強く思いました。
まだまだ来年も、勉強することは山ほどありそうです。
今年もたくさんの方々に感謝して、またここで来年お会いできたら嬉しく思います。
ありがとうございました。
よいお年をお過ごしください。