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かずんど

私の〈名人〉の落選作ですが、もし入賞していたら「こんな作品でごめんなさい」と、つくログで謝るしかないと思っていた作品でした。残酷でイヤな話なのにオチがしょうもなくて、ブラックな作品として成立しているのか自分でもわからない作品だったのです。 他の賞に転用出来ない感じの作品なので、つくログで供養すればいいのでしょうが、ネガティブ人間の私としては、選ばれなかったうえに自己評価も低い作品を公開する気にはなれませんでした。しかし皆さんがどんどんと落選供養しているのを見て、自分だけ逃げているようなうしろめたさを感じていました。 決心するのに約一週間かかりました(笑)。私も落選供養してみます。成仏できるのか、あるいは悪い霊となって私を呪うのか……。(おおげさな……) おそらく今回の #第35回どうぞ落選供養 で一番長い、前置き(言い訳)とともにアップします。 タイトル:狩りの名人 氏名:ササキカズト  名人? 何て呼ばれようが、俺には関係ねえ。俺は、親父や爺さんがやってきた仕事を、ただやっているだけだ。猟師という仕事をな。まあ四十になって、死んだ親父と肩を並べるくらいになれたかなって、ようやく思えるようになったかな。  ああ、そうだ。俺は親父から、狩りのすべてを教わった。俺は親父以外の猟師をよく知らねえから、自分の腕前がどの程度かなんてわからねえ。爺さんもいい猟師だったと親父が言っていたが、俺が赤ん坊のころに死んでるから、爺さんの腕前も俺は知らねえんだ。  今使っている銃は、親父が買ったやつだから、まあ形見みたいなもんかもしれねえな。もちろん役所には届けてあるとも。銃の管理も、鍵かけて、ちゃんとやってるさ。確認するか? ……今日はいいのか。まあ、いつ調査に来られても大丈夫なようにしてあるから、いつでも見にくるといい。  冬? 雪が積もれば、あまり山には入らねえが、山に食いもんがなくなるから、奴らも町に下りてくる。町の住民に被害が出ねえように、奴らを仕留めるのも俺の仕事だ。  それ以外の時期は、月に二回くらい山に入る。一度山に入ったら四~五日は戻らねえ。奴らは巣を転々と移動するが、群で生活しているから、痕跡を追うのは難しくねえ。しばらく奴らの様子を観察して、群のボスを見極めるんだ。俺はまずそのボスをやる。ボスがいなくなると、その群は弱くなる。次のボスを決めるのに、若いオスが争ったり、群がいくつかに分かれたりする。そうすると、町まで下りて食いもんをあさろうなんて知恵も働かなくなるんだ、しばらくはな。あとは若いオスとメスを少し減らしておく。数が増えねえようにするのが目的だからな。  え? どんな気持ちかって? 撃つときか? ……どうもこうもねえ。俺は猟師だから、ただ仕事としてやってるだけだ。特に何の感情もねえさ。  かわいそうに思わないのかって? なんでそんなこと聞くんだ? 何の調査なんだ、これ? お前たち本当に役所から来たのか?  ……お前らさては、あれだな。動物愛護とか、そういう団体の連中だな。過激な手段に出る奴らもいるって聞いてるぜ。役所委託の害獣駆除に関する調査だなんて騙しやがって。……役所から来たとは言ってねえだと、この野郎!  ……まあ、いい。俺もお前らには思うところもあったんだ。いい機会だから言わせてもらおう。  いいか。お前たちは知らねえんだ、奴らのことを。放っておいたら増えすぎて手に負えなくなる。奴らのずる賢さを知らねえから、かわいそうなどと言えるんだ。奴らはな、こっちがどんなに気配を消して近づいても、敏感に察知して逃げやがる。油断すれば、群で囲んでこっちがやられる。俺の親父も爺さんも、奴らにやられて死んだんだ。俺も、何度危ない目にあったか知れねえ。さっきは奴らに何の感情もねえって言ったが、あれは嘘だ。役所の調査かと思っていたからな。本音を言えば憎んでいる。奴らなんて絶滅しちまえばいいんだ。奴らのテリトリーを山に限定して、数を管理するなんて、役所のやり方は馬鹿げている。いつかこっちが痛い目にあうかも知れねえってのに。  何? 役所の指示以上に狩っているだろうって? 何でそんなこと知ってるんだ? そうか、お前たちも山に入って調査してるって聞いたことがある。俺が全滅させた群を調べたんだな。役所にバレねえように埋めておいたんだがな。  役所の倍の金? それで狩りをやめろって? ふざけるな! 役所のはした金のためなんかで、この仕事ができるか。こっちは命張ってんだ。この仕事をやめたら俺が俺じゃなくなっちまう。俺は奴らを狩るために生きてるんだ。役所からクビになったって無許可でやってやる。  この前、群を全滅させたときのことを教えてやろう。まる一日、群の様子を観察し、まずボスをやった。それから若いオス、次に年取ったオス。それから普通はメスをやって最後に子どもだ。強い順に狩るのが鉄則だからな。だがな、俺は奴らが苦しむ姿が見たかった。だからこの前は、メスを最後にやったんだ。メスどもの目の前で子どもをやって、それを見せつけてから、メスを皆殺しにした。どうだ。俺はそういう男だ。俺に狩りをやめさせようなんて無理だってわかったろ?  一ついいことを教えてやろう。お前たち動物愛護の団体ほどじゃねえが、奴らを憎む者たちのグループも、密かに存在するんだ。奴らなんて滅ぼしてしまえって思っている仲間たちが、けっこういるのさ。俺は、その仲間うちでこう呼ばれている。「ヒト殺しの名人」ってな。  大昔、この世界を支配していたかどうか知らねえが、人間なんて害獣は滅んじまえばいいんだ! ここは、俺たち猿の世界なんだからな! 〈了〉

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