公募/コンテスト/コンペ情報なら「Koubo」

警察考証のポイント

タグ
作文・エッセイ
作家デビュー

文学賞を受賞するにはどうすればいいのか、傾向と対策はどう立てればよいのか。

多数のプロ作家を世に送り出してきた若桜木虔先生が、デビューするための裏技を文学賞別に伝授します。

警察考証のポイント

第一回警察小説大賞の締切が徐々に近づいて来ているので、今年の三月号に続いて、この賞を狙うに際しての警察考証のキーポイントを述べる。

もちろん、横溝正史ミステリ&ホラー大賞、江戸川乱歩賞などを狙うに際しての〝傾向と対策〞に関しても役立つはずである。

三月号に書いたことで私に応募作の原稿を送ってくる方が増えたが、残念ながら警察考証が正しかった作品は、唯の一作もなかった。

物語を神様視点で書いている(主人公が介在しない場面を書く)だとか、節替えもなしに主人公が交代する(視点人物が切り替わる)といった形式面だけで落選にされる、小説作法的に重大な瑕疵を持った作品は論外として、目立った欠陥を列挙していくと次のようになる。

①警察官と警察職員の区別がついていない。

②地方公務員の警察官と国家公務員の警察官(キャリアおよび準キャリア)の明確な相違点が、分かっていない。国家公務員が、だいたいどういうペースで異動していくのかが、分かっていない。

③地方公務員の警察官が国家公務員になった時にどういう待遇になるのかが、分かっていない。

④独身の警察官と家族持ちの警察官で、どう生活パターンが違うのかが分かっていない。

⑤警察学校と警察大学校がどう違うのかが分かっていない。

⑥科学捜査研究所と科学警察研究所の違いが分かっていない。

⑦司法解剖と行政解剖の違いが分かっていない。

⑧捜査本部、特別捜査本部、合同捜査本部、指揮本部、前線本部、対策本部、移動指揮本部の違いが分かっていない。

⑨朝の捜査会議と夜の捜査会議の相違点が分かっていない。

⑩捜査会議で誰が雛壇に並び、誰が司会をし、実質的な現場指揮を誰が執るのかが分かっていない。

⑪検視を誰が行い、検死を誰が行うのか、検視と検死の違いが分かっていない。

実は、これらは全て綿密にネット検索すれば突き止められることばかりである。

例えば管理職以上の警察官の人事異動は、全国四十七都道府県の全てが、インターネット上に公開されている。

前職が何で、新たな役職が何なのかが載っているから、これを事細かに見れば、だいたいどういう異動が定番なのかが、読み取れる。

刑事小説を書き始めたばかりのアマチュアの相当数が、刑事と鑑識は全く別で、鑑識は警察官ではない技術者であるかのように大きな誤解をしているが、前述のインターネット上の警察官の人事異動を綿密にチェックすると、鑑識課長が刑事トップの捜査一課長に異動している人事が相当数あることに気づく。

警察官ではない技術者がいるのは鑑識課ではなくて科学捜査研究所である。もっとも、田舎の小規模警察では、鑑識課と科学捜査研究所が隣同士の部屋配置になっている事例が多いが。

警視庁は最も規模が大きいので、鑑識課は警察総合庁舎の一階と二階を占め、科学捜査研究所は六階から八階までを占めている。

三月号では必読書として毛利文彦『警視庁捜査一課殺人班』『警 視庁捜査一課特殊班』、今井良『警 視庁科学捜査最前線』、古野まほろ『警察手帳』の四冊を勧めたが、今回、今井良『警視庁監察係』『マ ル暴捜査』の二冊を加える。

『警視庁捜査一課特殊班』は誘拐事件ミステリーを書くには必読だが、刊行されたのが二〇〇二年なので、逆探知の手法などが古く、 日進月歩のSSBC(警視庁捜査支援分析センター)の現在の技術が反映されていない。

SSBCに関しては『マル暴捜査』にも詳述されているが、伊原剛志が主演した『電子の標的』を見ると、感覚が掴める。

もちろんテレビドラマなのでフィクション部分も多いが、原作が警視庁警視(警視庁公安部や内閣情報調査室に勤務)だった濱嘉之なので的外れの部分が少ない。これはユーチューブで、いつでも全三作が視聴可能である。

田舎警察を舞台にする場合には 横山秀夫原作の『第三の時効』シリーズ全六作が、参考になる。

原作は短編集だが、各話を二時間ドラマに仕立てたために、原作よりも膨らみが出た。

テレビ化タイトルは原作と同じ 『沈黙のアリバイ』『第三の時効』『囚人のジレンマ』『密室の抜け穴』『ペルソナの微笑』『モノクロームの反転』でTBSで制作され、BSやCSで頻繁に再放送されるので、気をつけてテレビ番組表をチェックしていれば、必ずいつか見ることができる。

また、四十七都道府県の警察本部は全て、予約を取れば見学可能なので、警察小説を書くには絶対に見学しておくべき(田舎の小規模警察の本部だと、いきなり飛び 込みで行っても見学させてくれることがある)。

 

 受賞できるかどうかは、書く前から決まっていた!

 あらすじ・プロットの段階で添削するのが、受賞の近道!

 あらすじ・プロット添削講座

 自分に合った文学賞はどれ? どこに応募すればいい?

 あなたの欠点を添削しつつ、応募すべき文学賞を教えます。

 文学賞指南 添削講座

若桜木先生が送り出した作家たち

日経小説大賞 西山ガラシャ(第7回)
小説現代長編新人賞 泉ゆたか(第11回)

小島環(第9回)

仁志耕一郎(第7回)

田牧大和(第2回)

中路啓太(第1回奨励賞)

朝日時代小説大賞 木村忠啓(第8回)

仁志耕一郎(第4回)

平茂寛(第3回)

歴史群像大賞 山田剛(第17回佳作)

祝迫力(第20回佳作)

富士見新時代小説大賞 近藤五郎(第1回優秀賞)
電撃小説大賞 有間カオル(第16回メディアワークス文庫賞)
『幽』怪談文学賞長編賞 風花千里(第9回佳作)

近藤五郎(第9回佳作)

藤原葉子(第4回佳作)

日本ミステリー文学大賞新人賞 石川渓月(第14回)
角川春樹小説賞 鳴神響一(第6回)
C★NOVELS大賞 松葉屋なつみ(第10回)
ゴールデン・エレファント賞 時武ぼたん(第4回)

わかたけまさこ(第3回特別賞)

新沖縄文学賞 梓弓(第42回)
歴史浪漫文学賞 扇子忠(第13回研究部門賞)
日本文学館 自分史大賞 扇子忠(第4回)
その他の主な作家 加藤廣『信長の棺』、小早川涼、森山茂里、庵乃音人、山中将司
新人賞の最終候補に残った生徒 菊谷智恵子(日本ミステリー文学大賞新人賞)、高田在子(朝日時代小説大賞、日本ラブストーリー大賞、日経小説大賞、坊っちゃん文学賞、ゴールデン・エレファント賞)、日向那由他(角川春樹小説賞、富士見新時代小説大賞)、三笠咲(朝日時代小説大賞)、木村啓之介(きらら文学賞)、鈴城なつみち(TBSドラマ原作大賞)、大原健碁(TBSドラマ原作大賞)、赤神諒(松本清張賞)、高橋桐矢(小松左京賞)、藤野まり子(日本ラブストーリー&エンターテインメント大賞)

若桜木虔(わかさき・けん) プロフィール

昭和22年静岡県生まれ。NHK文化センター、読売文化センター(町田市)で小説講座の講師を務める。若桜木虔名義で約300冊、霧島那智名義で約200冊の著書がある。『修善寺・紅葉の誘拐ライン』が文藝春秋2004年傑作ミステリー第9位にランクイン。