せきしろの自由律俳句　第73回「車」結果発表

2023/04/15

タグ: 川柳・俳句・短歌・詩; 俳句; 投稿する; せきしろ自由律; 結果発表

【自由律俳句とは】

自由律俳句は定型ではなく、自分のリズムで詠む俳句です。

「俳句にしたい！」と感じた情景を句にしてください。（せきしろ）

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結果発表

第73回課題：車

せきしろの一句

町の小さな自転車屋の乱雑さが良い

最優秀賞

父なのに一輪車に乗れる

（大阪府　反時計　23歳）

世の中には一輪車に乗れる父親はかなりの人数いるだろうが、乗れないイメージを持っている人の気持ちもわかる。自分の親は乗れないが、自分より年下の父親は乗れそうだ。

優秀賞

駐車場にすべての車が揃う夜

（千葉県　xissa　57歳）

たとえば住んでいるアパートやマンションの駐車場。昼間はガラガラであるが日没とともに車は増えてきていつしか満車になる。「すべての車が揃う」という表現が良い。

両親の会話を後部座席で聴く

（大阪府　猫田しろ　41歳）

こんな光景、自分にもあったなあと思い出させてくれる句だ。噂話の時もあれば、思い出話の時もある。神妙な様子の時もある。そんな時は寝たふりをしたこともあった。

佳作

された肩車する肩車
（茨城県　夢人　72歳）

立ち漕ぎの自転車春風強し
（千葉県　基人　74歳）

長旅帰りのエフエム京都
（滋賀県　わっかさん　16歳）

夜更けの車でこれからの話
（東京都　汐海　岬　50歳）

カーナビ表す家族の日記
（滋賀県　でぃーち　16歳）

水掛けてより荒ぶれる山車
（山口県　くまじい　84歳）

バックミラーに薄髪梳かす祖父
（大阪府　がんどぶり　31歳）

チョロＱを押さえる猫
（神奈川県　広瀬誠　61歳）

雪のフロントガラスに子どもの痕跡
（島根県　キラキラ金魚　19歳）

換気中の窓から春
（熊本県　アブラゼミ　35歳）

柚子を一つ落としたと助手席の下を覗き込む義母
（東京都　ラムキシ58　60歳）

免許証みたいな顔で待っている
（大阪府　フルカワ　31歳）

サービスエリアの匂いが残る
（滋賀県　たこ焼き　16歳）

フロントガラスに肉球の白
（栃木県　縦川島々　32歳）

あげたトミカは並べられていない
（奈良県　りんご月　17歳）

カーブで気付いた小銭67円
（東京都　南国人面魚　32歳）

降ってきたよとフロントガラス
（大阪府　ろっさん　42歳）

弱冷房車に汗だくがきた
（埼玉県　ちいこ　40歳）

ワイパーの止め時分からぬまま虹
（北海道　エリンギ　35歳）

何度も寝た帰り道
（滋賀県　あき　16歳）

ワゴン車の閉まる音が響く
（京都府　NCハマー　46歳）

二台に分かれもう一台のほうが楽しそう
（長崎県　毎日ハッピー　45歳）

今月の総評

『された肩車する肩車』。たしかに肩車にはこのふたつがある。昔と今。思い出と今。『立ち漕ぎの自転車春風強し』。存分に春の香りがしてくる句だ。春特有のソワソワ感もある。『長旅帰りのエフエム京都』。地元のＦＭが流れてきた時の「帰ってきた」感は半端ではない。『夜更けの車でこれからの話』。この句から浮かび上がる情景は確かに見た覚えも経験した覚えもある。そこには良い話も悪い話もあった。『カーナビ表す家族の日記』。カーナビの履歴だろう。日記と考える感性が瑞々しい。『水掛けてより荒ぶれる山車』。祭りの楽しさと激しさが読むたびに伝わってくる句だ。それが楽しくて何度も読んでしまった。『バックミラーに薄髪梳かす祖父』。見てはいけないものを見てしまった感もあるし、いつまでもオシャレでいたい気持ちもわかる。いや、いてほしい。『チョロＱを押さえる猫』。きっとチョロＱを止めたのだろう。