公募/コンテスト/コンペ情報なら「Koubo」

実は、あなたも本が出せる③:持ち込み ~企画を売り込もう~

タグ
作文・エッセイ
その他
バックナンバー

書籍化される可能性は800分の1

本を出す方法として、真っ先に思い浮かぶのが「持ち込み」。
『夢をかなえるゾウ』などの著作で知られる水野敬也さんが設立した文響社の編集者・宮本沙織さんによれば、
「持ち込み企画は年間100本ほどあります」
とのこと。やはり持ち込み=出版への王道と考える人が多いことがうかがえる。
同社では、水野さん、社長の山本周嗣さんらの共著であり、デビュー作である『ウケる技術』 が持ち込みだったこともあり、持ち込み企画は編集者全員で共有し、必ず目を通す方針を取っている。
ただし、設立8年目の現在、持ち込みから書籍化に至ったものは
『あなたの魅力を爆発させる方法』(山田マキ著)の1冊のみ。
その理由は、大半の持ち込み企画が「自分の伝えたいこと」はしっかり説明できている反面、それが「どう読者の役に立つのか」という視点がすっぽり抜け落ちてしまっているから。
「人がお金を払ってまで読みたいと思うのは、なんらかの形で自分の役に立つものなんです。持ち込まれる企画には、戦時中の体験談なども多いのですが、体験そのものは貴重でも、それが自分視点の自伝のような形のままだと出版は難しいんです。その体験が今を生きる読者にどう役に立つのか、という視点があれば、編集者の見方も変わってくると思います」
また、現在、全例文に「うんこ」を使った同社の『うんこ漢字ドリル』は発売から2か月半でシリーズ累計180万部を突破しているが、こうしたヒット本が出ると、類似企画が数多く持ち込まれるそうだ。
「ヒットした企画や第一人者がいる分野で書籍化を実現するのはなかなか難しいものがあります。一般の方からの持ち込み企画に期待するのは、既存の著者やプロの書き手にはない「新しい切り口」や「独自の視点」なんです」

出版社は企画同様、プロフィールも重視

企画に独自性が求められる一方、多くの購読者が見込めないマニアックすぎるジャンルだと、書籍化されにくいのもまた事実。
『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由』などが話題のあさ出版で持ち込み担当を務める三浦良純さんによれば、
「書籍化に結びつきやすいのはマーケットが広い健康・お金・語学などの分野です」
ただし、その分、競合する本も多いため、「他の類似書とどう違うのか」というポイントを明らかにすることが大切だ。
「昨年、主婦の方が持ち込んだ赤ちゃんの寝かしつけについての企画は、独自のノウハウが斬新だったので書籍化しました。寝かしつけ本は一定の読者がいる人気ジャンルなんです」
さらに、企画書や原稿と同じくらいプロフィール作成にもこだわるべきと三浦さんは言う。
「セミナーで○人に教えた、こんな賞を受賞したという具体的な数字、実績をしっかり書き込むことで、企画の説得力が違ってくるからです。プロフィールが魅力的なら、こちらから企画を提案し、著者としてデビューしていただくこともあり得ます」
ひと筋縄ではいかない書籍化だが、「企画の斬新さ」か「ウリになるプロフィール」が、道を切りひらくポイントになりそうだ。

セルフプロデュースのための持ち込み必勝講座

商業出版をするには大きな壁がある。その壁を乗り越えるために必要な最低限のことをレクチャー!

今は先生にあらず! 企画を買ってもらう側

どうしたら企画の持ち込みが成功するかの前に、どういう立場で持ち込むのかが問われる。
「オレは才能あふれる作家先生だ。原稿を書いてやるよ」なんて不遜な態度では通る企画も通らない。
そんな人はいないと思うが、原稿だけ送ったり、要領を得ない企画書を送ったりすれば、「何様のつもりだ」と思われる。
そもそも企画を持ち込むということは、場合によれば出版社に大損をさせかねない投資をさせることだから、そこは立場をわきまえよう。自分を卑下するのではなく、ひとりのビジネスパーソンとして真摯に行動すること。
さらに言えば、編集者はかなり忙しい部類の職種。そんな人に企画を気に入ってもらうためには、極端に言えばタイトルを見ただけで内容も売りもわかるように工夫すること。
オリジナリティーも必須。素人ほど自分の企画に自信を持ちすぎ、「類書は世の中にない」と思ってしまいがちだが、編集者や販売のプロが見れば「そんな本、掃いて捨てるほどある」となる。
書店等で類書を調べ、類書との違いを打ち出そう!

成功するパターン

企画が良い

求められるのは売れる企画。類書がないか、類書とは決定的に違う内容のもの。世の中を変える力があるもの。話題性があり、ありそうでなかったもの、刺さる企画が採用される。

プレゼンがうまい

弁が立つだけでなく、話に説得力がある。読む人を納得させる実績、経験がある。専門知識がある。プロフィールがユニークで、キャラが立っている。取材されたときにテレビ映えする。

出版社選びがうまい

持ち込みをする出版社の出版傾向を把握し、それに合った企画を持ち込んでいる。文庫を出しているような最大手の出版社ではなく、実用書を得意とする中堅どころを狙うのがベスト。

失敗するパターン

原稿だけを送る

文芸書や漫画は原稿が必要だが、実用書は原稿より企画が重要。原稿だけ送れば「これを読めっていうのか」と思われる。読まなくても中身がわかるようにするのがマナー。

買ってもらう自覚がない

商業出版を依頼するということは出版社に対して300万~500万円の投資をしてくれということ。有名になれば作家先生でも今は一介の素人。投資に見合うだけの企画が必要。

マナーがなってない

商業出版を依頼するということは出版社に対して300万~500万円の投資をしてくれということ。有名になれば作家先生でも今は一介の素人。投資に見合うだけの企画が必要。

持ち込みQ&A

企画書だけでもいいの?

持ち込まれる企画は、特に出版社から指定がない阪り、「企画書だけ」「企画書と完成原稿」「企画書とサンプル原稿」「完成原稿だけ」とさまざまな形態がある。編集者としては書籍化の判断材料になる「企画のウリ」がひと目でわかる企画書は必須。原稿はあれば参考になるものの、なくても企画書で魅力が伝われば問題ない。

郵送とメール、どちらでもよい?

どちらでも目を通してくれる出版社が多いのだが、文響社のように全編集者で情報を共有する場合には、郵送原稿をすべてスキャンしデータ化するという手間が発生してしまうため、可能であるならばメールでの持ち込みのほうがありがたいとのこと。判断がつかない場合には、事前にメール等で問い合わせてみてもいい。

どの出版社に持ち込むべき?

同じ趣味の本でも「初心者向けに強い」「ニッチなジャンルも扱う」など、出版社ごとにカラーがある。自分とテイストが似ていて、かつ丸かぶりしない出版社にアプローチするのも手。または、お金というジャンルの中で家計簿や貯金の本はあるのに、投資の本はないという場合には、投資本の企画が通りやすい可能性も。

 

※本記事は「公募ガイド2017年7月号」の記事を再掲載したものです。

特集の続きを読む