実は、あなたも本が出せる⑦:出版プロデュース~本を売り込むコツを 教えてくれる! ~


1000人の編集者に企画を一斉送信
特定非営利活動法人、企画のたまご屋さんは、全国の無名の著者と出版社をつなぐ日本で唯一の出版支援NPO法人。
その仕組みは画期的で、まずインターネット上のエントリーフォームで企画を送ってもらい、見込みのある企画をブラッシュアップ。
1000人もの編集者に企画書を一斉に配信するというもの。
もちろん、すべての企画を送るわけではなく、企画のたまご屋さんに送られてくる企画書は、同法人に約25名いる出版プロデューサーが目を通し、これは! という人にメールで連絡。
こういう内容に変えてはどうかとか、ここはもっと絞り込んだほうがいいなど、おおむね2~3週間の間に何回か具体的なアドバイスと企画書の修正があり、それで出版プロデューサーのOKが出れば編集者への配信となる。
「平日は毎日1本、企画書を配信します。早いものはその日のうちに出版を検討したい旨、メールで連絡があります」(共同代表・宮本里香さん)
その後、出版社からオファーがあれば、どの出版社と面談するか、あるいは全社と面談するか著者と相談し、企画のたまご屋さんの出版プロデューサーが編集者との面談に同行してくれる。これは出版については素人で、右も左もわからない人には心強い。
「企画のプレゼンは基本的には著者本人がやりますが、印税や出版計画など確認すべきことをサポートします。また、初版のうちの1000部を買い取るような不利な契約をさせられないようにするためにも同行します」
ここまでは無料でサポートしてくれる。報酬は成功報酬のみで、契約した印税の30%が企画のたまご屋さんに、70%が著者に支払われる。
NPO法人企画のたまご屋さん:手がけた本は500冊、昨年45冊プロデュース
企画のたまご屋さんがプロデュースした本は、2004年の設立以来、500冊を超える。
2016年は45冊が単行本化されたので、配信した5~6企画に1つの割合で出版が実現したことになる。これは持ち込みをした場合の採用率が1%にも満たないことを考えると、かなり高い。
そうなる理由は、所属する出版プロデューサーたちの手腕と熱意によるもの。著述家、元編集者など経歴はいろいろだが、企画のたまご屋さんはNPO法人だから、出版プロデューサーたちは別に本業を持つ。
個人として活動するときはコンサル料数万円という出版プロデューサーもいて、そうした人たちが成功報酬のみでサポートしてくれるのは心意気しかない。
「企画のたまご屋さんは出版社にコネもツテもなく、どの出版社がどの分野に強いといったこともわからない人のためにあります」
エントリーするにはインターネット環境が必要だが、パソコンを持っている人はこの機会にぜひエントリーを。
企画が通らない、通っても出版に至らないこともあるが、最初からすべてうまくいくわけではない。
まずは企画のたまご屋さんのハードルを越えよう!
企画のたまご屋さんの仕組み
1.企画のセレクト
日々送られてくる企画書の中から、企画のたまご屋さんが、配信する企画をセレクト。その企画を誰が見るかは、企画のたまご屋さんの約25名からなる出版プロデューサーが自分で「私が担当します」のように名乗り出て決まる。
2.編集者にメール配信
毎朝9時、編集者にメール配信。配信されるのは毎日1企画で、土日・祝日を除く平日に配信される。受け取る編集者は1000人を超える(異動や退職者がいても後任に引き継いでもらっている)。
3.編集者からオファーがある
早ければその日のうちに、遅いと1週間後ぐらいに、企画のたまご屋さん宛てに「この企画の出版を検討したい」と編集者から連絡が来る。もちろん、残念ながら手が上がらない場合もある。
4.出版社の企画会議で採用決定
著者に連絡をし、企画のたまご屋さんの出版プロデューサーが同行して面談、プレゼン。決裁権のある編集者の場合はその人自身が決定する場合もあるが、多くは企画会議を経て出版が決定する。
5.原稿作成、編集
原稿がすでにある場合はすぐに編集に入り、数か月で出版される。
原稿がない場合や、企画内容が大幅に変わった場合は半年ほどかかる場合も。著者は表紙を確認し、本文の著者校正をする。
6.初版の部数が書店に配本
企画のたまご屋さん:https://tamagoyasan.net/
アップルシード・エージェンシー:著者は著述に専念! だから代理人が必要
アップルシード・エージェンシーは、2001年に設立された作家の代理人をする会社。契約する作家の本を年間80冊プロデュースし、うち20冊は新人の著作。
新人は「作家養成講座」を通じて発掘している。同講座は隔月で行われ、定員5名。ただし、「採用される書籍企画書作成講座」の受講者を中心に同社が選抜。
その後、企画を提出できるレベルまで練り上げ持ち込む。
「企画を8~10本持って出版社に持ち込みます。著者は同行しません。断られたら著者は傷つきますし、編集者も断りづらい。会うのは出版が決まったあとです」(アップルシード・エージェンシー代表取締役・鬼塚忠さん)
鬼塚さんが持ち込んだ企画は、だいたい半分が出版される。
「編集者は常にいい作品を求めていますが、すべて読んでいる時間がない。そこで私たちが精査し、これはというものを推薦する。変なものを持ち込めば信頼を失いますから下手はできません」
出版が決まると、アップルシード・エージェンシー所属の作家となり、3年間のマネージメント契約をする(成功報酬として印税をシェア)。契約が終了してもほとんどの人が継続するという。「才能はあっても、出版するノウハウを知らない人が多い。また、日本では著者自身が売り込みをした瞬間、価値が下がります。だから、代理人が必要なんです」
アップルシード・エージェンシー作家志望者向けカリキュラム
ビジネス・実用書・自己啓発
採用される書籍企画書作成講座
毎月募集/定員30名/2時間・7560円。講義形式で学ぶ。
作家養成講座
隔月募集/定員5名/13:00~18:30・10万8000円。
個別添削形式で企画書をブラッシュアップ。
文芸・学芸・ノンフィクション
400字詰原稿用紙400枚まで(5万4000円)。それ以上は100枚増すごとに1万800円加算。
アップルシード・エージェンシー:http://appleseed.co.jp
エリエス・ブック・コンサルティング:戦えるブランドを作る
10年愛される「ベストセラー作家」養成コースは、こんまりこと近藤麻理恵著『人生がときめく片づけの魔法』を世に送り出した。
「こんまりさんも普通のOLでした。講座では片づけの本を企画しましたが、それでは戦えない。それで彼女との対話の中で『ときめき』というキーワードを発見し、それを切り口とした。それまで片づけは必要か必要でないかでしたが、それがときめくかときめかないかになった。基準を変えちゃいました。この人の武器は何か、この人を何で戦わせようかと考え、10年愛されるブランドを作る。それが僕の仕事です」(エリエス・ブック・コンサルティング代表・土井英司さん)
同講座は、入門講座を受けてそこで選抜された人だけが本講座に進める。本講座は月1回、全6回で、最後に編集者の前でプレゼン、そこで手があがれば出版となる。
「本講座では、半分は企画づくり、執筆、マーケティングを学び、半分はブランディングを学びます。なぜか。こんまりさんでいう「ときめき」が見つかった時点で出版が決まるからです。理想的なのは編集者が企画を持って著者に依頼に来ること。面白い企画も大事だけれど、それ以前に面白い人になってくださいというのがうちのコンセプト。面白い人は出版社が放っておかないんです」
エリエス・ブック・コンサルティング:http://eliesbook.eo.jp/
出版を支援する会社をどう選ぶか?
本項では、出版コーディネート、出版エージェント、出版コンサルティングの3つに分けたが、はっきり3つに分けられるわけではない。A社は企画書のアドバイスのみ、B社は企画書のブラッシュアップと持ち込み代行、C社はスクール形式といったように千差万別。
さて、インターネットで検索すると無数の会社が出てくるが、その中からどんな基準で選べばいいのか。
まず、注目したいのは実績。出版した本があまりなく、あっても怪しい出版社の本ばかりというのは注意。
次に本人の要望と合うかどうか。企画と持ち込みをサポートしてほしいのか、それともそれ以前の問題なのかによって選ぶ会社は変わってくる。
最後は出版プロデューサーの経歴。単に著者というだけでは自分の体験を語るだけだから応用できない。著者であり、編集者であり、営業力もあるというのが理想。
※本記事は「公募ガイド2017年7月号」の記事を再掲載したものです。