詩を書こう①:超ビギナーのための詩作入門1
詩には壁がある。とっつきにくい。まずはこの壁を取り払い、気ままに書いてみよう。
まずはわかりやすいライトバースから
ひとくちに詩といってもさまざまなものがあるが、ここではぐっとハードルを下げ、平易でわかりやすく、誰でも取り組める詩の書き方について解説する。
詩って簡単なんだな、誰にでも書けるものなんだなと気持ちが軽くなってもらえれば幸いだ。
さて、詩を書くとはどういうことか。端的に言えば、感情を言葉に変換していく行為だろう。
これがうまくいき、自分の思いとぴったりの言葉が思いつくと気持ちいい。
かつ、感情に言葉が与えられることで、改めて自分の感情に気づくこともある。言葉がなければ、感じることはできても理解することはできないからだ。
とは言え、1つの単語で自分の感情を完全にくみ取るのは難しい。こぼれ落ちてしまう意味もある。
そこでいくつかの言葉を重ねて、すべての意味をすくい取っていく。
感情には形がなく、完全にすくい取るのは難しいが、だからこそ奥が深く、面白い。
詩の両端
ライトバース
おもいのまま、心のままを書いた分かりやすい詩。大衆的な詩。バース=言葉。
現代詩
狭い意味では前衛的な詩。感動や共感を与えることは主たる目的ではない。
STEP1:詩とは? 言葉の遊びである
読んで気持ちいい言葉はみんな詩
詩はかつては遊びであり、仕事のときに調子を合わせる歌(民謡) でもあった。
下記は、谷川俊太郎「詩ってなんだろう」にある詩。
やせているけど
まるいかお
だれにもにていない
たのむから
かいだんで
ころばないでね
谷川俊太郎『詩ってなんだろう』
上の詩は、1字目を縦に読むと「やまだたかこ」という名前になっている(アクロスティックと言う) 。
かんかんづくしを たずねたら
みかん きんかん さけのかん
おやじやかんで こはきかん
すもうとりはだかで かぜひかん
さるはみかんの かわむかん
谷川俊太郎『詩ってなんだろう』
この詩は語尾を「かん」でそろえた言葉。脚韻と言い、ラップのように音をそろえている。
こうした調子のよい言葉、読んで気持ちいい言葉、気持ちいいように配列や語感などを工夫した言葉はみんな詩。
ほか、赤ちゃんをあやす「かいぐりかいぐりとっとのめ」や、「犬も歩けば棒に当たる」といったいろはかるた、「子どもは風の子」といったことわざ、「なまむぎなまごめなまたまご」といった早口言葉も詩のひとつ。
お客様へ
絶対!絶対!絶対!超!超!超要注意!毎度ありがとうございます。
以下のことを必ずご注意下さいませ!お客様へお知らせです。当店は○○○駅東口から歩1分たらずの駅のホームからも見える、風俗ビルの5F にあるお店です。都築響一『夜露死苦現代詩』
これは都築響一「夜露死苦現代詩」の中にある風俗店の案内。
著者は、詩として書かれたものだけが詩ではないとし、街角などにある詩的な言葉を紹介している。
もちろん、そうした言葉を書いた本人は詩のつもりで書いてはいないが、読む人が詩だと思えればなんだって詩になる。なんだって詩になれるということ。
看板、広告ちらし、取扱説明書の中にだって詩はある。すでに書かれたものの中に詩を見つけよう。
きっと詩的センスが磨かれる。
言葉と格闘するということ
あけがたには
夜汽車のなかを風が吹いていました。
ふしぎな車内放送が風をつたって聞こえます。
………よこはまには、二十三時五十三分
とつかが、零時五分
おおふな、零時十二分
ふじさわは、零時十七分
つじどうに、零時二十一分
ちがさきへ、零時二十五分
ひらつかで、零時三十―分
おおいそを、零時三十五分
にのみやでは、零時四十一分
こうづちゃく、零時四十五分
かものみやが、零時四十九分
おだわらを、零時五十三分
………
ああ、この乗務車掌さんはわたしだ、日本語を
苦しんでいる、いや、日本語で苦しんでいる
日本語が、苦しんでいる
わたくしは目を抑えて小さくなっていました
あけがたには、なごやにつきます(藤井貞和「あけがたには」)
言葉の使い方で苦しんでいる車内放送を聞いて、「日本語を/ 苦しんでいる、いや、日本語で苦しんでいる/日本語が、苦しんでいる」と書いているのが面白い。詩人は「この乗務車掌さんはわたしだ」と書いている。この乗務車掌さんが言葉と格闘する姿は詩人の言葉との関わり方と同じ。だから、この車内放送も詩だ。
※本記事は「公募ガイド2018年7月号」の記事を再掲載したものです。