1週間で文章力を上げる!2:言葉トレーニング


5つの言いかえ練習
ここではより的確な表現、言い換えのトレーニングをします。
平易な言葉に換える
漢語は重厚な感じはしますが、具体的なイメージは乏しかったりします。たとえば、「上梓」と言われても動作や状態は目に浮かびにくいものですが、「本を出す」と言えば瞬時に分かります。「疼痛」ではピンと来ませんが、「ずきずきする」と書けば分かります。
このように分かりにくい言葉を平易な言いまわしに翻訳していきます。
実習課題
以下の言葉をより平易な言葉に換えてください。
執筆/薫陶/賢明/面罵/雑踏
ルビトレーニング
ルビ(ふりがな)を使うと、もう一つのイメージを乗せることができます。
もちろん、正式な読みでなくてかまいません。歌詞ではよく見る「あの娘(こ)」や「瞬間(とき)」といった当て字と思ってください。これを飛躍させると、「民主党」と書いて「ばらばら」と読ませると言った芸当もできます。
ただし、トレーニングとしてはいろいろ試せますが、実作の中で「親つれ友の拳はじ銃きで殺ばらすほうが得ベター策」なんてやっているとうるさいのでやめましょう。
実習課題
以下の言葉からイメージを引き出し、ルビをつけてください。
朝焼け/四月/転勤/夫婦/小説
イメージ抽出トレーニング
ひとつの物や状況から、思いつく言葉を引き出していくトレーニングです。
古くからある物や言葉には、それなりのイメージがついていますから、それを言語化していくわけですね。
実習課題
以下の言葉から連想される名詞と形容詞を各五個、考えてください。
ブーケ/校庭/朝の駅/冬の海
比喩トレーニング
うまい比喩ができると、意味やイメージが一瞬で伝わったりします。その意味では比喩は大きな武器になりますから、
新しいものをどんどん作りましょう。
注意したいのは「芋を洗うような混雑」といった常套句で済ませてしまうこと。それからこれとは逆に、斬新だけど伝わらない比喩になってしまうこと。
とはいえ、練習段階ではあまり制約を設けず、この世に一つしかない、しかし、適切な比喩を創作してみましょう。
実習課題
以下の言葉に、誰も書いたことがないような比喩を加えてください。
激流/かんかん照り/刺激臭
象徴トレーニング
感情や状態などは、観念的な言葉では通じにくいことがあります。そこで、これらを象徴する小道具を探します。
たとえば、「新婚」では漠としていますが、「二つ並んだ歯ブラシ」と書けば情景が浮かんできますね。
実習課題
以下の言葉を象徴する小道具を探してみましょう。
平社員/貧しかった/わが世の春
俳句トレーニング
俳句は文章表現のトレーニングにもなります。作句の習慣のない人は俳句日記をつけましょう。
では、『添削例に学ぶ俳句上達法』(鷹羽狩行・片山由美子)から、俳句が文章表現の訓練になる例を引用してみます。あとの句が添削例です。
言葉の適切さ
「ふつふつと煮豆ふくめて夜長かな」
「ふつふつ」だと沸騰に通じて、湧き上がっているかのよう。
「ふっくらと煮豆ふくめて夜長かな」
無駄を省く
「ビル建ちて初富士のなき空の青」
「空の青」まで書いてしまうと一句が複雑になり、富士が見えなくなったという趣旨を邪魔します。
「ビル建ちて初富士のなき富士見坂」
情景を視覚的に
「四人ゐて一人聞き役春うらら」
「春炬燵」とし、情景を視覚的にとらえると場面が具体的になります。
「四人ゐて一人聞き役春炬燵」
焦点がぼける
「殖えるとも減らぬ泡立草の枯れ」
泡立草の繁殖力に焦点を当てる。「枯れ」まで言うと焦点がボケます。
「殖えることあっても減らぬ泡立草」
※本記事は「公募ガイド2012年6月号」の記事を再掲載したものです。