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川柳・俳句・短歌 はじめました!1:あなたは 川柳人間? 俳句人間? 短歌人間?

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川柳・俳句・短歌・詩
川柳
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今、あなたは短詩を始めようとしています。
でも、川柳、俳句、短歌とあるうちのどれから始めたらいいのかが分かりません。全部やってみるというのも手ですが、実はそれぞれに向き不向きもあるのです。

以下の3つの作品のうち、あなたのお好みのものは?

➊ゲゲゲからじぇじぇじぇになって好景気(やっとかめ)

この作品は、2013年度「オリックスマネー川柳」募集で大賞に選ばれた川柳です。わずか17字で、賞金は30万円でした。

❷プロポーズされそうなほど冬銀河(竹岡佐緒理)

この作品は、第25回伊藤園お~いお茶新俳句大賞で文部科学大臣賞選ばれた俳句です。こちらの賞金はなんと50万円でした。

❸キュロットをはいていた夏恋をするようにはできていなかった胸(山上秋恵)

この作品は、第20回与謝野晶子短歌文学賞で文部科学大臣賞(一般の部)に選ばれた短歌です。受賞者には副賞が贈呈されました。

➊を選んだあなた:戯画的な川柳人間

川柳は、自他を笑う文芸です。
「本降りになって出ていく雨宿り」という古川柳がありますが、自分や他人を笑いながら、でもその句は人間の本質を突いていて、アイロニーを感じさせる。そういう着眼点を持った人が川柳人間です。

❷を選んだあなた:写生的な俳句人間

 俳句は自然を句にします。人間を詠む場合も、自然の中の人間としてとらえます。
「五月雨をあつめて早し最上川」
心のカメラで外を見て、心に留まったことをさらりと切り取る。そういう感性を持った人が俳句人間です。

❸を選んだあなた:主観的な短歌人間

「やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君」
与謝野晶子の短歌です。
短歌人間は主観的、情熱的、自己陶酔的で、心が沸騰中で個人的感情を吐き出さずにはいられない人、またはそんなときに向きます。

川柳と俳句と短歌、どこがどう違う?

そば、うどん、ラーメンのように起源を同じくする兄弟を見分けるには、その歴史をたどるのが一番です。
ここではさらに具体的に、川柳、俳句、短歌の違いを明らかにしていきましょう。

川柳は人間を、俳句は自然を

どっからか出して女房は帯を買い

川柳は、このように第三者的に人間模様を描いたり、社会風刺をしたりします。「や」「かな」「けり」といった切れ字は用いません。使う言葉は口語です。

古池や蛙飛び込む水の音(松尾芭蕉)

 俳句は自然や四季、その中にいる人間を詠みます。文語が基本で、切れ字もよく使います。

俳句は叙景、短歌は叙情

俳句と短歌はどう違うでしょう。
俳句は五七五、短歌は五七五七七です。また、俳句には季語がありますが、短歌にはありません。

たわむれに母を背負いてそのあまり軽きに泣きて三歩あゆまず(石川啄木)

「嫁さんになれよ」だなんてカンチューハイ二本で言ってしまっていいの(俵万智)

俳句は風景を切り取り、余韻を残してさらりと言うことに向いていますが、短歌は沸き立つような感情を詠むことに向いていますね。

世界一短い短詩の歴史

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奈良時代

中国の漢詩にならい、五七を繰り返す長歌が生まれる。この部分では主に事実が述べられ、最後に長歌の意を反復、補足、要約して読み添えられた反歌が独立し、短歌となる。

短歌の隆盛

平安時代から1000年以上、日本の文学の世界を短歌が支配する。短歌は貴族階級のたしなみであり、平安時代には和歌をそらんじられなければ恋愛もできませんでした。

連歌と俳諧

鎌倉時代頃に、多人数で五七五と七七を繰り返す連歌が成立。江戸時代にはこれが庶民にも普及し、俳諧となる。連歌と俳諧は形式は同じですが、俳諧のほうが滑稽味が強い。

俳句の誕生

俳諧の発句(最初の句)が独立し、俳句が生まれる。俳諧の流れをくんで滑稽味があったが、松尾芭蕉が芸術性の高い句風の蕉風を確立。現在の俳句の祖となる。

短詩の改革

明治期に、写生という作法が根づく(正岡子規の俳句改革、短歌改革による)。また、川柳も改革され、エログロ、語呂合わせの狂句を廃し、文芸ジャンルとして生まれ変わる。

川柳俳句短歌、作品作りのコツ

ここでは、川柳、俳句、短歌に共通する作法を紹介します。
それぞれのジャンルに固有のノウハウもありますが、基本的な作法はだいたい同じです。基本ですから、しっかり身につけておきましょう。

無駄をなくす

 短歌は31音、川柳と俳句は17音しかありませんから、冗長な言い方はできません。以下は俳句です。

満月の月が出ている野球場

「満月の月が出ている」は無駄が多い表現です。「満月」だけでも十分通じます。

満月やビール片手の野球場

「満月の月が出ている」を「満月」にした分、「ビール片手の」という情景を加えることができました。

情報を多く

盛り込む情報が多いほど、情景をイメージしやすくなります。

汗だくで球蹴りて追う子供たち

 サッカーをしている子供たちの情景のようです。 

凩や球蹴る子から上る湯気

 季節を盛り込んだことで、どの程度走りまわったかが分かりますし、その結果、湯気が出ているという状態も想像できます。

写生をする

川柳でも俳句でも短歌でも、見たままを写生する、あるいは、見たかのように情景を写しだすことがポイントになります。以下は川柳です。

宝クジ夢の中ではよく当たり

 言いたいことは分かりますが、説明的です。

起こされるまで当たってた宝クジ

こちらのほうが、今誰かに起こされたという場面が浮かびます。

連休に疲れ残れり大あくび

状況は分かりますが、単なる報告で、疲れとあくびの組み合わせもありふれています。

大あくびして連休を締めくくる

 大あくびを生かしました。

紅白の歌合戦は大みそか

これは当たり前。どんなに表現に凝ってみても、見方が平凡、常識的ではだめ。人が見ないところを見るような目を持ちましょう。

 

参考 尾藤一泉オフィシャルページ「ドクター川柳」 http://www.doctor-senryu.com/

 

※本記事は「公募ガイド2015年1月号」の記事を再掲載したものです。