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ツイートする短歌2:短歌の現在地

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若い才能が次々デビューし、盛り上がりを見せている現代短歌の世界。昨年、1970年生まれ以降の若手歌人とその歌を紹介するアンソロジー『桜前線開架宣言』を刊行した山田航さんに、その理由について話を聞いた。

口語短歌のレベルアップが短歌人気につながった

数ある短歌の賞を総なめにしている注目の若手歌人・山田航さんは、批評家としての顔も持つ。そんな山田さんが、1970年以降に生まれた若手歌人40人を解説文+短歌をつけて紹介したアンソロジー『桜前線開架宣言』は、「穂村弘以降の現代短歌の全貌を描きだしている」と話題を呼んだ。
「短歌は40代でも若手と言われる世界ですが、最近は1990年代生まれの本当の意味での若手も増えています」と山田さんも言うように、ここ数年は大学の授業やツイッターのタイムライン歌会などで短歌を始めた世代が、その後大学短歌会や結社に入ったり、同人誌やインディーズで活動したりするようになっている。
もともと「古めかしい」「難しそう」というイメージのある短歌が、なぜ今、若い人たちの心をとらえているのだろう。
「1990年代に加藤治郎さんや穂村弘さんらの〝ニューウェーブ短歌〞が登場したことで、ふだんの話し言葉を使って作る〝口語短歌〞のレベルが上がったのが大きいと思います。こうした下地があって口語短歌が若い人たちに浸透し、ここへきて結実したという感じでしょうか」

 

 今、33 歳の山田さんは、一般的に短歌愛好者の年齢層が高いと思われていることを知らなかったという。寺山修司や穂村弘を入り口に短歌を始めたこともあり、歌集=若者向けの書籍だと思い込んでいた。初めて目にした短歌が口語短歌だったという若い世代にとって、〝ニューウェーブ短歌〞が、短歌とはこういうものだという認識の土台になっているのだ。
『桜前線開架宣言』のあとがきで、山田さんは「商業出版される小説の9割は、自費出版の歌集よりつまんないですよ」「21世紀は短歌が勝ちます」と断言している。
これが大げさだと感じないほど、若手歌人やその歌はどれも鮮烈な印象を放っている。
「もちろん、若手に限らず、歌人には面白い歌を作る人がたくさんいます。五七五七七という定型がある短歌は、年齢や経験を問わず誰もが同じスタートラインに立てるのが魅力」
そう山田さんは語る。
「僕自身、地方に住んでいて、手頃な歌会が地元になかったので、新聞への投稿や、直接顔を合わせずに済むミクシィでのネット歌会などからスタートしました。〝同じルールをもとにぶつかり合うゲーム〞という感覚でどんどん作って投稿し、たくさんの歌の中から選ばれる喜びを味わってみてください」

 

山田航(やまだわたる)

北海道札幌市出身・在住。短歌誌「かばん」「pool」所属。第55回角川短歌賞、第27回現代短歌評論賞などを受賞。歌集『さよならバグ・チルドレン』『水に沈む羊』のほか、回文などことばあそびをテーマにした『ことばおてだまジャグリング』も刊行。『野性時代』6月号より短歌投稿欄「野性歌壇」の選者を務めるので、ぜひ投稿を! 公式サイトhttps://yamadawataru.jimdo.com/

山田航さんが選ぶ「現代短歌日本代表 Under35」12人

虫武一俊:歌によって再生していく「おれ」

1981年生まれ、大阪府育ち。龍谷大学社会学部卒。2008年夏に短歌を始め、ラジオ番組や雑誌企画への投稿を重ねる。2012年、うたう☆クラブ大賞(短歌研究社)。

北山あさひ:従来の女性観にNO を突きつける

1983年北海道生まれ。短歌結社「まひる野」所属、島田修三に師事。山川藍とのユニット「北山川」でも活動中。2017年第28回歌壇賞候補。

田丸まひる:切ないエロスを歌う精神科医歌人

1983年徳島県生まれ。2004年、第一歌集『晴れのち神様』(歌葉)上梓。2011年、未来短歌会入会。2014年より「七曜」同人。短歌ユニット「ぺんぎんぱんつ」としても活動中。

瀬戸夏子:“当たり前”を解体する先鋭歌人

1985年生まれ。2005年に作歌を開始し、「早稲田短歌会」入会。同人誌「率」同人。2012年、第一歌集『そのなかに心臓をつくって住みなさい』を私家版で刊行。

望月裕二郎:落語のような言葉で絵本のような世界を描く

1986年東京生まれ。立教大学文学部卒。大学1年のとき、詩人で映画評論家の阿部嘉昭の講義に出席したことから口語短歌を始める。「早稲田短歌会」OB 。

吉岡太朗:生身の身体が作り出す下品さの中の真実

1986年石川県生まれ。京都文教大学人間学部文化人類学科卒。2005年に作歌を始め、「京大短歌会」に入会。2007年、「六千万個の風鈴」で第50回短歌研究新人賞受賞。

野口あや子:ヤンキー寄りの文学少女

1987年岐阜県生まれ。愛知淑徳大学文化創造学部卒。「幻桃」短歌会、「未来」短歌会に所属。2010年、第一歌集『くびすじの欠片』で第54回現代歌人協会賞を史上最年少受賞。

千種創一:リアリティーのある口語文体の使い手

1988年名古屋生まれ。2009年、三井修の授業「短歌創作論」の受講生らと「外大短歌会」創立。2010年、結社「塔」入会。2015年、連作「ザ・ナイト・ビフォア」で歌壇賞次席。

伊舎堂仁:お笑いと抒情の二面性

1988年沖縄県生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒。2014年、第一歌集『トントングラム』刊行。LOSTAGEとナンバーガール、穂村弘、加藤治郎、矢野号の大喜利回答などを愛する。

藪内亮輔:古今混淆で悪意をポップに表現する

1989年京都府生まれ。「塔」編集委員。京都大学大学院理学研究科修士課程修了。大学で和歌の講義を受け「京大短歌会」入会。2012年、「花と雨」で第58回角川短歌賞受賞。

山中千瀬:定型を遊びつくす軽やかさ

1990年愛媛県生まれ。2009年、「早稲田短歌会」に参加。「唐崎昭子」名義でデザイン・装丁の活動も行っている。歌誌「率」のメンバーでもある。

井上法子:巫女を思わせる語り口のファンタジー短歌

1990年福島県生まれ。東京大学大学院博士課程在学中。高校時代より作歌を始め、明治大学文学部入学後「早稲田短歌会」入会。2016年、第一歌集『永遠でないほうの火』刊行。

 

※本記事は「公募ガイド2017年5月号」の記事を再掲載したものです。