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あなたとよむ短歌 テーマ詠「熱」結果発表 ~句読点、古語、作歌数~

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結果発表

テーマ詠で短歌を募集し、歌人・柴田葵さんと一緒に短歌をよむ(詠む・読む)連載。

柴田 葵 1982年、神奈川県生まれ。元銀行員、現在はライター。「NHK短歌」や雑誌ダ・ヴィンチ「短歌ください」、短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」への投稿を経て、育児クラスタ短歌サークル「いくらたん」、詩・俳句・短歌同人「Qai(クヮイ)」に参加。第6回現代短歌社賞候補。第2回石井僚一短歌賞次席「ぺらぺらなおでん」。第1回笹井宏之賞大賞「母の愛、僕のラブ」。
■作品
プリキュアになるならわたしはキュアおでん 熱いハートのキュアおでんだよ
(『母の愛、僕のラブ』より)
vol.67
テーマ詠「熱」結果発表
~句読点、古語、作歌数~

短歌を読む・詠む連載、「あなたとよむ短歌」。今回はテーマ詠「熱」の結果発表です。

人間は五感を使う場合、得る情報の多くを視覚に頼っているそうです。おのずと短歌も、視覚情報を詠むことが多くなりがちです。それ自体は悪いことではないのですが、他の感覚についても意識的に詠んでみると作品の幅が広がるのではないでしょうか?

五感のうちの触感である「熱」は、テーマ詠の題材として少し難しかったかもしれません。さまざまな角度からとらえたいものです。

後半では投稿者の皆さんの質問に回答しています。作品と合わせて、ぜひ最後までお付きあいください。

それでは、最優秀賞の発表です!


泳ぎかたわすれたイルカのように子は
熱の身体を横たえており
(みつき美希さん)

グイグイと泳ぎ、力強く跳ねることもできるイルカの体には、つややかな生命力を感じます。幼い子どものパワフルなイメージにぴったりですね。しかし発熱をした子どもは、まるで「泳ぎかたわすれたイルカのよう」にぐったりと横たえている。比喩が秀逸です。
「泳ぎかた/わすれたイルカ/のように子は」と、2・3句めが句跨りのような連結になっていますそのため、上句を一気に読ませ、その「長さ」がにゅーんと伸びた子どもの寝姿を想起させます。子どもって寝ていると不思議と大きく見えるんですよね。静かに寝ているからこそ気がつく、子どもの身長、重さ、大きさも表現されています。


続いて、優秀賞2首です。

花柄のグラタン皿が落下して
耐熱できない恋ごと割れた
(Mifuさん)

「耐熱できない恋ごと割れた」のキャッチーさ、インパクト、すごくいいですよね。グラタンも恋も、熱ければいいってもんじゃないんでしょう。熱さにも限度があるようです。
「花柄のグラタン皿」というのも具体的なイメージが浮かびやすく、モチーフとしてGoodです。かわいらしいお皿に、家でつくるのに向いている&ちょっとうれしい感じのメニュー。恋人と食べるために料理していたのかな、などと背景を感じさせます


溶岩を取り出すようにレンジから
熱しすぎたホッケを救う
(佐藤彩夏さん)

電子レンジは生活に欠かせない家電ですが、その加減が意外と難しいもの。熱しすぎて取り出せなくなることもしばしばです。「溶岩を取り出すように」という比喩は、溶岩を取り出したことがない人でも雰囲気が想像できるのではないでしょうか。どこまで触れるか、菜箸を使うのか、タオルを挟んで皿を持つのか……。そーっとがんばるしかありません。
「魚を救う」ではなく「ホッケを救う」とした点も効果的です。他の魚より大きめの、ホッケの開きが思い浮かびます。大きくて柔らかいので、うっかりすると身が崩れそうです。これは困難な作業ですね。まるで「溶岩を取り出すように」。
「熱しすぎた」が6音である点がちょっと気になりました。「熱くしすぎた」とすると7音になり収まりがいい気もするのですが、意図があっての字足らずでしょうか?



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