賞金総額3600万円!電池に迫る発火リスクを防げ「NEDO Challenge, Li-ion Battery 2025」
スマホやパソコンのバッテリーにも使われている、リチウムイオン蓄電池。廃棄物処理やリサイクル現場で、火災や事故が発生する危険があるのをご存知ですか?
「NEDO Challenge, Li-ion Battery 2025」は、リチウムイオン蓄電池の使用後の処理について、安全性を円滑に高められる取り組みや装置など、研究開発を公募するコンテストです。
締切は2024年6月10日。2つのテーマで募集が行われ、それぞれ1位には1000万円が贈られます。賞金総額は3600万円と超高額。それほどに現代の社会において重要な課題だといえそうです。「こんなの応募できないよ」という方も、本公募を通じて理解を深めていきましょう!
知っている? リチウムイオン蓄電池
リチウムイオン蓄電池(Lithium ion battery、略してLiB)は、充電式で繰り返し使うことのできる小型家電製品(スマホやゲーム機器、電子タバコ、掃除機など)に使われています。主催者の解説によると、急速充電が可能で、繰り返し利用による充電容量の低下が少ないという特徴があるとのこと。家電製品の小型化により、需要も高まっています。
問題点は廃棄の難しさです。このリチウムイオン蓄電池は、衝撃を加えると発火する性質があります。簡単にいえば内部に燃えやすい液体が入っているのです。
本来であれば分別して処理されるべきものですが、小型家電などのプラスチック製容器に含まれたまま捨てられるケースも多く、プラスチックのリサイクル工場での発火トラブルにつながっています。特にリサイクルの初期段階である解砕機や破袋機の刃によって当該電池が押し潰され、周囲のプラスチックに着火することが多いそうです。
プラスチック製容器包装再生処理事業者での発煙・発火トラブル件数は、平成の間は年数十件だったものが、令和に入るごろから300件弱と急速に増加しました。主催者のWEBサイトでは、発火の様子の動画も視聴できます。ぜひ見てみましょう。
https://www.lithium-ion-battery-challenge.nedo.go.jp/socialissues.html#moveA
いかに見つけ、どう無効化するか
今回の公募で募るテーマは以下の2つです。
1)リチウムイオン蓄電池の検出装置(ポータブル型・設置型)
不燃ごみ、容器包装プラスチックごみなど、誤ったごみ区分に当該電池が含まれた小型製品が混入した場合、粉砕などの処理工程に入る前に検知する装置を募集するものです。検知によって発火を防ぎ、資源物として選別することを可能にする目的があります。
2)リチウムイオン蓄電池の発火危険性の回避・無効化装置
当該電池の回収・運搬・処理工程では、常に発火の危険性が伴います。その危険性を回避・無効化する装置を募集するものです。発火能力を低下させた状態の当該電池のみを選別して受け入れる方法や、回収した当該電池すべてに対して効率的に放電する、電解液を除去するなど、発火能力を無効化して安全な資源にする方法が求められます。
リチウムイオン蓄電池を「いかに見つけるか」「発火リスクをいかに無効化するか」の2つの側面から、実現可能な仕組みを考えるコンテスト。現代社会の利便性を支え、人々の安全を守る、まさに縁の下のヒーローのような装置の登場が期待されます。
事業化を目指そう
応募は、主催者の指定するフォーマットに沿った計画書を提出する形式です。事業化を目指す意思がある研究を募集しています。一次審査通過後、成果確認審査(12月予定)で稼働テストの実施が可能な装置を用意する必要があります。もちろんグループや企業での参加も可能。学生は先生に相談するとよさそうです。
一般の人が応募するには難しめな、本格的な研究コンペティション。けれども、リチウムイオン蓄電池自体は子どもから大人まで誰にでも身近なものです。その危険性や、分別の大切さを理解するのも大事なこと。本公募をきっかけに、小中学生は自由研究の対象にしてもいいかもしれません。公募を通じて社会問題にも関心を持ち、安全で便利な家電ライフを送りましょう!
公募情報ライター。最近は各地を盛り上げるご当地公募から目が離せない。好物はネギトロ。公募ガイド公式Instagramでも執筆中。
出典: https://www.lithium-ion-battery-challenge.nedo.go.jp/
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