若桜木虔先生による文学賞指南。「新人賞に応募したらNGな3項目」
作家デビューを目指すのなら要注意!
今回は、新人賞に応募したらNGな3項目を紹介する。
①SF。
現在、SFは全く売れていない(かつて50万部の好調な売れ行きを誇ったSFマガジンが5000部を切り、他のSF誌は全て廃刊)ので、SFと見ただけで、内容の出来不出来に無関係に、一次選考ないし二次選考で落とされる。
日本SF新人賞が二〇〇九年の第十一回を最後に打ち切られている事実を見ても歴然と分かりる。
SFで唯一、可能性があるのは本格トリックを盛り込んだ本格ミステリー、つまり鮎川哲也賞だけ。
この受賞作には市川憂人『ジェリーフィッシュは凍らない』、今村昌弘『屍人荘の殺人』や方丈貴恵『時空旅行者の砂時計』がある。
②中近東ものは壊滅的に売れない。
メフィスト賞史上最高傑作と謳われた古泉迦十『火蛾』は、面白い作品にも拘わらず、中近東が日本人に馴染みの薄いせいもあってか、まるで売れず、作者も、これ1作きりで文壇から消えた。
新人賞受賞作が駄作で文壇から消えた作家は、山ほどいるが、傑作を書いて、その1作きりで文壇から消えた作家は、古泉迦十くらいのものだろう。
③登場人物が片仮名表記の作品は全く売れない。
絶望的に売れない。登場人物が片仮名の名前は読者数が少ない。出版界が絶不況の現在では、採算ベースの部数が売れない。
だから、予選突破して上位に残っても、編集長が選考に関与する最終選考で「この作品は売れない」と落とす可能性は極めて高い。
つまり、海外を舞台にする作品でも、日本人、日系人、中国人、朝鮮人など、漢字名前の登場人物を主軸に据えることが、キーポイントになる。
プロフィール
若桜木虔(わかさき・けん) 昭和22年静岡県生まれ。NHK文化センターで小説講座の講師を務める。若桜木虔名義で約300冊、霧島那智名義で約200冊の著書がある。『修善寺・紅葉の誘拐ライン』が文藝春秋2004年傑作ミステリー第9位にランクイン。