せきしろの自由律俳句 第91回「白」結果発表 (2/3)
第 91回 課題: 白
佳作
白和えは好きだけど一位ではない
(東京都 タニタクミ 28歳)
そうめんと冷奴ばかりというわけにもいかず
(大阪府 なでしこ 82歳)
冷えたミルクと新しい朝
(東京都 めめめい 17歳)
ご飯に朝日のせて食べる
(神奈川県 木暮俊貴 25歳)
朝5時バスを待つ息たち
(埼玉県 古屋郁美 30歳)
眩しい光が素描されてる余白である
(栃木県 水母の瞼 23歳)
母の器には形崩れた白玉団子
(東京都 とかげまろぅ 17歳)
面接官の歯が嘘みたいに白い
(福島県 可笑式 58歳)
好きだったのに思い出は白
(熊本県 古子 74歳)
掌の白さに夏の生き様
(東京都 ハルオ 52歳)
寄せ書きの色紙まだ白である
(埼玉県 天海楓 21歳)
日記の余白を親指で隠す
(愛知県 白川 譽 18歳)
何もやってない宿題のノートの純白さ
(長野県 はるしぐれ 14歳)
いつから父に白髪があっただろうか
(静岡県 満腹中将 17歳)
白が好き黒が好きシマウマが好きチェスが好き
(岡山県 コアラくん 15歳)
今日はひときわ白いのを着ていく
(北海道 ぶんぶん丸 18歳)
金魚の墓が雪に埋もれる
(東京都 川村仁 16歳)
エアコンが壊れた白い部屋足で壁に涼しさを探す
(東京都 おさよ 16歳)
パンダのしっぽの色さえ知らない
(熊本県 陽 16歳)
ヨーグルト平たくなるよう掬う
(福島県 きりんのき 22歳)
重くかたいであろう雲が立つ夏空
(東京都 蛸壺 22歳)
つま先立ちのエアコン業者の靴下は白
(長崎県 毎日ハッピー 歳)
『白和えは好きだけど一位ではない』
たしかに一位ではないか。でも一位の人もどこかにいるのだろう。
『そうめんと冷奴ばかりというわけにもいかず』
毎日そうめんと冷奴ばかりともいかないか。でもそうでもOKな数日間もある。
『冷えたミルクと新しい朝』
冷たくなった昨日がまだある。それが朝を浴びている。
『ご飯に朝日のせて食べる』
朝らしい俳句だ。朝が浮かび上がってくる。子どもの頃はこんな日もあった気がする。こういう暮らしがしたかった。
『朝5時バスを待つ息たち』
こちらは厳しい冬の朝の風景。まだ暗い。
『眩しい光が素描されてる余白である」
デッサンの明暗が浮かび上がる句だ。白の眩しさ。
『母の器には形崩れた白玉団子』
母の優しさか。優しさならそれに気づくことが自分はできていたのだろうか。
『面接官の歯が嘘みたいに白い』
これは嘘みたいではなくきっと嘘。
『好きだったのに思い出は白』
忘却、あるいは片思いの句。私も白が増えている。