あなたとよむ短歌 vol.58 テーマ詠「文房具」結果発表 ~新春・大量採用祭~(2/3)
今回は「新春・大量採用祭」! コメントもたっぷりです。まずは、佳作5首をご紹介します!
クリップで私の全てを留めておくいつか誰かが外す時まで
(しーさんさん)
忙しいとき、あるいは日常的に感情を押し殺す必要のあるとき、なんだか自分自身がばらばらになってしまう気持ちですよね。応急処置であっても、とりあえずクリップで留めておくことは肝心です。一度無くしてしまうと、なかなか戻らない気がします。
便箋の折り方にさえ「平成」があり ウチら世代はみんなやってた
(しじゅーからさん)
ノートやメモ帳、手作りの便箋にたわいもない話題を書いて、小さく折りたたんでこっそり交換する遊び。LINEやInstagram、BeRealなどのSNSがある現代の学生には、あまりなじみがないかもしれません。「ウチら」という懐かしい表現にもグッときます。私も「ウチら世代」です。
ロフトまで自転車を全力でこぎ限定色のシャープペンシル
(藤井瑶大さん)
文房具やメイク用品のロフト先行発売、見逃せませんよね。限定色のシャープペンシルを買いに全力で自転車を漕ぐ、その熱意をストレートに感じます。「全力でこぎ~シャープペンシル」と体言止めで終わる点も魅力。限定色のそのシャープペンシルに、意識のすべてが注がれているのでしょう。
広瀬から田村になるも筆入れにたった一本広瀬を秘める
(えぺさん)
「鉛筆」という言葉が一切出てこないにも関わらず、鉛筆の一本一本や、その芯の匂いまで思い浮かぶような一首です。小学生か、一本ずつすべてに名前を書く真面目な中学生でしょうか。保護者が離婚したか再婚したか、もしくは養子縁組かもしれません。自分が納得していてもしていなくても、名前が変わるというのは大きな出来事です。
わが恋は三角定規のようなものライバルと仰ぐ頂点の彼女
(江戸川散歩さん)
ペンネームも含めてバッチリ決まっている、すがすがしい一首。「三角定規」という小学生だけが使う文具だからこそ、幼いなりの熱い恋心、バチバチ感が読みとれます。子どもは自分のことを大人と変わらないもののように捉えがちです。「わが恋」「頂点」などの仰々しい言葉も却ってかわいいですね。