せきしろの自由律俳句 第94回「とまる」結果発表
結果発表
第94回 課題: とまる
せきしろの一句
俳句作って誰かを幸せにしたか佇む
最優秀賞
乗らないバスが丁寧に停まる
( 千葉県 ような恵 27歳)
バス停で待つ。やがてバスが来るがそれは行き先が違う乗らないバス。昔は俯いてやり過ごすだけであったが、やがて乗らないアピールをするようになった。それでも停まる。なぜなら降りる人がいるからだ。アピールなどいらなかったのだ。私はまた俯くようになった。「丁寧に」の部分にから様々な感情を受け取ることができる。
優秀賞
蝿にまず感心する冬の食卓
( 岐阜県 場外 54歳)
蝿を好きな人などほぼいないと思うが、冬に現れた蝿に感心する作者に私は共感する。「よくぞ今まで生きていたな」と蝿を褒めてあげても良いとも思う。でも蝿は嫌いである。同様に蚊もそうだ。どこか尾崎一雄の作品を思い出させてくれる句だ。
渋滞しながら安らかな寝息を聞いている
( 神奈川県 Akiki 59歳)
渋滞。車では同乗者が寝ている。寝息と共に薄らとカーラジオの音、時折ウインカーの音が聞こえてきそうである。音がある。それなのに静かな句。その光景を何度も思い浮かべてしまう。
イラスト:飯田研人/撮影:賀地マコト