岸本葉子選 老いる者と老いられる者の1000字エッセイ募集「おい・おい」


「老い」は老いる人にも老いられる人にも無関心ではいられない問題です。
「老い」について、切実なもの、ユーモアのあるものなど、バラエティーに富んだエッセイを期待します。
入れ物と中身が合っていること

1961年、神奈川県生まれ。東京大学卒。エッセイスト。俳句、介護、老いに関するエッセイ多数。淑徳大学客員教授。
早くフレームを示し、要所要所に立て札を
――エッセイを定義すると?
エッセイはノンフィクションです。小説のように架空の話を書くのではなく、作者の私が経験したことを書く。経験したことでないことも交えていいですが、事実に依拠して書く。これが原則です。しかし、事実は曲げませんが、話を整備し、加工することは必要です。
――いいエッセイを書くには?
読み手を意識することだと思います。この書き方でわかるかな、わかりにくくないかなということを読み手の頭で点検するというマインドを持つといいですね。
――今回の規定は1000字というお手頃な長さです。
作品の出来ばえを決めるのは題材のよしあしもさることながら、入れ物と中身の関係が合っていること。面白い題材でも器に合わないところにぎゅうぎゅうに押し込めると、題材のよさが生きません。収納と同じで、捨てるコツというか、スペースに合わせて収納することがすごく大事だと思います。
――隙間なくびっしり詰め込みたくなるんですよね。
一番伝えたい山場はどこかを考えて、そこにたどりついてもらうために必要な情報を書き、それ以外の情報はなるべく捨てる。収納で言えば、捨てることで余白が出て、収納したものが取り出しやすくなりますし、何があるのかもわかりやすくなります。
――つい前置きの説明が長くなってしまうことがあります。
1000字に達しないのではないかという不安があると、起承転結の起承のあたりが長くなりがちですね。
――岸本先生は、起承転結は意識して書かれますか。
転の部分に一番書きたいことを持ってきます。山場となる具体的なエピソードですね。転だからといって転ずるとは考えず、読者に追体験してもらいたい中心を転に持ってくるといいですね。結はくどくどと言わず、一言、二言でさらっと終わる。
――起承には何を書きますか。
転の山場の部分を存分に体験してもらうために必要な情報を手際よく出していくという感じですね。転結から逆算して起承を書くといいですね。
――よく「つかみ」と言ったりしますが。
書き出しでつかもうとしないで、書き出しは「あれ、いつ入ったんだっけ? 最初に何が書いてあったんだっけ?」と覚えていないぐらいで大丈夫です。
――書き出しを書くにあたって心がけておいたほうがいいことはありますか。
これから書くフレーム(枠組み)をなるべく早く読者に知らせて安心させてあげること。読者は何が書かれているかわかりませんので、最初に手際よくアウトラインを示してあげるといいですね。
――話の方向性がわかると、その後の理解が早くなりますね。
読者は目の前にある一語一語をたどっていくしかないので、つまずきそうな小石は除いておき、入り口をわかりやすくして順路を整備しておきます。
――迷子にならないように?
「こっちに行くんですよ」という立て札を要所要所に立てておき、読み手が迷わずに山場にたどりつけるようにします。
――自身の考えを述べたようなエッセイはどうでしょうか。
書き手の体験を追体験できるように、具体的なエピソードを書くことが大事です。自分が考えたこと、感じたことを長々と述べるのではなく、読み手も同じ体験をしたような気持ちになってもらう。自分の感じ方、考え方は最後にさらっと書くぐらいがいいですね。
――市販されているエッセイには、学術エッセイ、自虐エッセイなども多いです。
エッセイ=随筆なので、筆の赴くままに書いてもらうのでいいと思いますが、専門家やタレントが書いたエッセイは、その作者だから読めるというところがあります。公募エッセイではなかなか成立しづらいと思います。
――今回は「老い」をテーマにエッセイを公募していきますが、応募される方にメッセージをお願いします。
「老い」というテーマは、どんな年齢の人でも、昨日の自分よりは今日の自分のほうが一日分老いているので、誰にでも題材はあると思います。皆さんが書こうと思ったことは、たいがいの人は「あるある」と思ってくれることだと思います。あとは、「老い」を感じたことを、いかに読者にも同じように追体験してもらえるかを考えて1000字にまとめてください。
――20代、30代でも「年かな」と思うこともあります。加齢による切ない話から笑える話まで、バラエティーに富んだ作品を期待します。ぜひとも奮ってご応募ください。
応募要項
課 題
第1回 [違う、そうじゃない]
応募規定
1000字以内。400字詰原稿用紙の場合は3枚以内。
タイトル、〒住所、氏名(ペンネーム使用の場合は兵器)、年齢、電話番号、メールアドレスを明記。作品の返却は不可。
応募条件
作品は未発表オリジナル作品に限る。AIの使用は不可。
入選作品の著作権は公募ガイド社に帰属。
発 表
季刊公募ガイド夏号(7/9発売)誌上
賞
【最優秀賞】1編=Amazonギフト券5,000円分
【優秀賞】 2編=Amazonギフト券2,000円分
【佳作】 7編=WEB掲載
応募先
WEBまたは郵送で応募。
【郵送】
〒105-8475(住所不要)公募ガイド編集部
「第1回おい・おい」係
締切
5月20日(必着)