野間文芸新人賞作家が描く、ドラッグと嘘に溺れる人々の物語『愛の獣は光の海で溺れ死ぬ』4月17日発売


河出書房新社から、注目の作家・金子薫の最新作『愛の獣は光の海で溺れ死ぬ』が2025年4月17日に発売される。本作は、ドラッグと嘘(フェイク)に翻弄される人々の姿を描いた連作小説集だ。
物語の舞台は、高層ビル群のスラム街〈奇天座〉。そこでは究極の幻覚剤〈ロロクリ〉が蔓延し、居住者たちが獣や虫に扮して人間をやめる快楽に溺れていく。その中で、人間であり続けようとする主人公・西尾の姿を通じて、現代社会が直面する問題を鋭く描き出している。
著者の金子薫は、2014年に『アルタッドに捧ぐ』で文藝賞を受賞してデビュー。2018年には『双子は驢馬に跨がって』で野間文芸新人賞を受賞するなど、小説読者から高い評価を得ている作家だ。硬質な文体とシニカルな批評眼、甘美なモチーフを特徴とする彼の作品は、新作が発表されるたびに多くのファンを魅了している。
本書には「成るや成らざるや奇天の蜂」をはじめ、「天使」「蜂」「幻覚剤」「変身」「道化」「双子」「芝居」「言葉」といった様々なモチーフでつながる6つの物語が収録されている。個々の存在や思考が、世界を形作るシステムによって掠め取られていく様子を描いた、現代の黙示録とも言える作品集となっている。
収録作「スカピーノと自然の摂理」は、フランスの雑誌「TEMPURA MAGAZINE」で翻訳が掲載されるなど、海外からも注目を集めている。他人を食いものにする者、食われる者、そして食う側もまた誰かに食われる者という、出口のない無限ループを通じて、現代社会の問題を緻密な文体で描き出している。
『愛の獣は光の海で溺れ死ぬ』は、金子薫の新境地を示す極上のフィクション体験となっている。現代社会の闇を鋭く切り取りながら、諧謔と寓話性を持って風刺する不穏な物語世界に、読者は引き込まれることだろう。
出典: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000927.000012754.html