永井荷風の生涯を辿る大作『荷風の昭和』前後篇が発売 - 激動の時代を生きた文豪の姿を描く


文豪・永井荷風の生涯を辿る大作『荷風の昭和』前後篇が、「昭和百年」の今年5月21日に新潮選書から同時発売される。著者は文芸評論家の川本三郎氏。6年以上の歳月をかけて執筆された本書は、荷風の作品を徹底的に読み込み、激動の昭和を生きた文豪の姿を鮮やかに描き出している。
前篇「関東大震災から日米開戦まで」では、モダン都市東京の誕生から軍国主義の台頭まで、荷風が目撃した昭和初期の世相が克明に記されている。後篇「偏奇館焼亡から最期の日まで」では、戦中・戦後の荷風の姿が描かれ、権威を嫌い個として生き抜こうとした文豪の姿勢が浮き彫りにされている。
本書の特徴は、荷風の日記『断腸亭日乗』などの作品を丹念に読み解きながら、昭和という時代の空気感を鮮やかに再現している点だ。モダンな都市文化や、カフェの女給、私娼といった新しい女性たちとの交流、軍国主義への反発など、荷風独特の視点で捉えられた昭和の姿が生き生きと描かれている。
著者の川本氏は「本書は、都市の作家である荷風が、ことの多い激動の昭和をどう生きたかを検証した」と語る。軍国主義の時代に息苦しさを感じながらも、女性たちとの交流を通じて「柔らかで優しい女性文化」への愛情を貫いた荷風の姿勢にも光を当てている。
小説家の小川洋子氏は本書を「荷風の透徹な瞳は、歴史からこぼれ落ちた"小文字の昭和"の体温を映し出す」と評している。荷風という一人の作家を通して昭和という時代を俯瞰する本書は、文学ファンはもちろん、昭和史に興味がある読者にとっても魅力的な一冊となりそうだ。
『荷風の昭和』前後篇は各2860円(税込)。文学、歴史、そして人間の生き方に興味がある方にぜひ手に取ってもらいたい一冊である。
出典: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002106.000047877.html