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公募の一次選考で9割が落ちる理由|審査員が明かす「読まれない原稿」の特徴

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机の上に積み上げられた、数千、数万もの応募作品の山。その前で審査員や下読みスタッフたちが何を思っているか、想像したことはありますか?

「この中に、まだ見ぬ傑作が眠っているはずだ」という期待。それと同時に、「また同じような作品を読むことになるのか」という疲れ。彼らは、この二つの気持ちの間で揺れています。

審査員が求めているのは、きれいにまとまった優等生的な作品ではありません。眠気が吹き飛んで、思わず姿勢を正してしまうような「異物」です。

では、その「異物(=入選作)」と、その他大勢を分ける境目はどこにあるのでしょうか。

多くの応募者が「いかに面白いストーリーを書くか」で頭がいっぱいになりますが、実はそれ以前の段階で勝負がついていることも少なくありません。今日は、少し耳の痛い話をします。でも、これを乗り越えれば、あなたの作品は確実に「審査員の目」に留まるようになるはずです。

テクニック以前の「基礎体力」:9割が「ネガティブチェック」で落ちている

まず、厳しい事実からお伝えします。

多くの公募の1次選考では、作品の面白さを評価する「加点法」の前に、規定外や不備を弾く「減点法(ネガティブチェック)」が行われています。あるミステリー文学賞のデータや、公募の現場での肌感覚として、7割から9割の作品がこの段階で落ちていると言っても言い過ぎではありません。

あなたの自信作が、中身を読まれる前に「処理」されているとしたら……これほど悔しいことはないでしょう。

では、具体的に何が「アウト」なのか。審査員の気持ちと一緒に見ていきましょう。

「読ませる気がない」と思われる原稿

審査員も人間です。物理的に読みづらい作品を手にした瞬間、その作品への期待は一気に下がります。

たとえば、「プリント代を節約したい」と行間をぎゅうぎゅうに詰め込み、無理やり1ページに収めた原稿。これを見た審査員は「工夫したな」とは思いません。「読む側のつらさを想像できない人が、読者を楽しませる物語を書けるわけがない」と判断して、静かにその原稿を脇に置きます。

手書き原稿の公募では、達筆すぎて読めない文字や、鉛筆書きで薄くて見えないものも同じです。「読めるものなら読んでみろ」という態度は、審査員へのケンカを売っているようなものです。

そして、意外と多いのが「ノンブル(ページ番号)」のない原稿。もし審査中に手が滑って原稿を床にばらまいてしまったら? ノンブルがなければ、元の順番に戻すのはほぼ不可能です。「下読みをしていて困る原稿は?」と聞かれたある下読み経験者は、即答で「ノンブルが打っていない原稿」と答えています。これはマナーというより、リスク管理の問題なのです。

ジャンルの「お作法」を無視している

「オリジナリティ」と「ルール無視」を取り違えている作品も、すぐに弾かれます。とくに目立つのが、川柳や俳句といった短詩の公募です。

ある川柳公募の審査員は嘆いていました。「五・七・五のリズムを無視して文章みたいに書いたり、句の横に長々と『言い訳』を書き添えたりする作品が多い」と。

一句だけで勝負すべきところに、「この句を作った背景は……」と説明がついている。選者は苦笑するしかありません。説明がないと伝わらない時点で、作品として成り立っていないからです。

小説でも同じです。「横書き」指定なのに「縦書き」で送ってくる。規定の枚数を大幅に超えている、あるいは足りない。ある編集長の「読み手のことを考えていない原稿は、残念ながら選考の対象になりません」という言葉は、どのジャンルにも当てはまります。

審査員をうならせる「プラスアルファ」とは

ネガティブチェックという「基礎体力」の壁を越えた作品たち。ここからが本当の勝負です。

ここで審査員がいちばん嫌がるのは「どこかで見た感じ」です。

「どこかで読んだことがある」「またこのパターンか」。そう思われた瞬間、その作品は輝きを失って、「その他大勢」の山に埋もれていきます。

「調べていない」とバレる

審査員は、その道のプロです。ネットでちょっと調べただけの知識や、ドラマの設定をそのまま使った描写は、すぐに見抜かれます。

ミステリーの新人賞選考で実際にあった厳しい指摘を紹介しましょう。「30代の女性警部補が、SIT(特殊犯捜査係)の精鋭を現場で指揮する」という設定に対して、選考委員は「絶対にあり得ない」とバッサリ切り捨てました。

警察組織の実態を知っている人からすれば、それはリアルなフィクションではなく、ただの「妄想」に見えます。「作者はドラマの見すぎじゃないか?」「現実の組織図を調べもしないで書いたのか?」――そう思われた時点で、読者は物語の世界から覚めてしまいます。

もっと身近な例もあります。「主人公が住む街の家賃相場すら調べていない」作品。物語の中での生活ぶりと、実際の家賃相場が合っていなければ、キャラクターの行動すべてが嘘くさくなります。「家賃相場なんてネットですぐ調べられますよね。それすらやっていないということは、キャラクターの作り込みも甘いんです」。プロの編集者は、こういう細かい「手抜き」を見逃しません。

「みんなと同じ」になってしまう

時事ネタや流行語は共感を呼びやすい反面、他の応募者とかぶるリスクが跳ね上がります。川柳の世界ではこれを「同想句(どうそうく)」と呼びます。

たとえば、コロナ禍での「リモート」「ズーム」というワード。あるいは、その年の流行語大賞。これらを使った作品は、山のように届きます。審査員は、同じような言葉、同じようなオチの作品を何百回も見せられることになります。「よほどひねりがなければ、埋もれますね」。審査員が求めているのは、「みんなが言っていること」の確認ではなく、「あなたにしか見えていない景色」なのです。

コピーライターの公募でも同じです。主催者を持ち上げるだけの「ヨイショ作品」、たとえば「〇〇(商品名)で効果バツグン!」みたいな安易なフレーズ。たとえそれが本当のことでも、審査員は「またか」とため息をついて終わりです。そこには何の発見も、驚きもないからです。

粗削りでも「熱」があれば勝てる

では、審査員が「推したい」と思う作品とは何でしょうか。

それは、多少文章が荒くても、作者の「これが書きたいんだ!」という強い思いや熱が伝わってくる作品です。

ある編集者はこう話しています。「『自分はこれが書きたいんだ!』というメッセージがビンビン伝わってくるものがいいですね。粗削りでも、自分の得意なところを遠慮なく突きつめてほしい」。

こぢんまりまとまった優等生的な作品よりも、「変なやつだな」と思わせるくらい突き抜けた個性が評価されます。たとえば、ファンタジー小説の賞で、「机の引き出しで竜の卵を育てる」という、一見シュールだけどワクワクするアイデア。あるいは、「毒くらげ」というマニアックなテーマをユーモラスに詠んだ川柳。

「変なことをいろいろ言っているんですけど、情景は浮かぶんですよね」。審査員にこう言わせたら勝ちです。完成度が低くても、これから伸びそうだと思ってもらえれば、プロの編集者がついて直すことができます。でも、「熱」や「独自の視点」は、あとから教えることができないのです。

過去の『公募ガイド』から読み解く「入選への近道」

たくさんのデータと過去の受賞作を分析してわかった、プロへの近道。それは、審査員の「頭の中」をハックすることです。

「最初の1行」ですべてが決まる

審査員は忙しい。何千もの作品を「ざっと読む」のが当たり前――この現実を受け止めてください。だからこそ、冒頭の数行、あるいはタイトルだけで「おっ?」と思わせる必要があります。

「すでに文体ができあがっている作品は、冒頭から文章に説得力があるんです」。書き出しの数行で、語り手の立ち位置や、物語の雰囲気がはっきりしていること。それができれば、審査員に「これは最後まで安心して読めそうだ」と感じてもらえて、予選通過の確率はぐんと上がります。

審査員の「好み」と「地雷」を知る

「傾向と対策なんて意味がない」という人もいますが、それはやり方が間違っているだけです。過去の受賞作を調べる本当の目的は、審査員の「好み」と「これだけはやめてくれ」を知ることにあります。

たとえば、選考委員が元編集者なら、出版業界を舞台にした小説でいい加減な描写をしたら致命傷です。また、ある小説新人賞では、「夢オチ」や「転職して人生やり直し」みたいな安易なラストが、はっきりマイナス評価を受けています。

「過去の受賞作を読むのは、それとは違う作品を書くためなんです」。過去作をなぞるのではなく、「まだ誰も書いていない穴」を見つけるために調べる。これが正しいやり方です。

「幽体離脱」して自分の原稿を読み直す

作品を書き終えた瞬間、書いた本人は自分の作品を過大評価しがちです。心理学で「ダニング=クルーガー効果」と呼ばれる現象で、要するに、自分の作品が傑作に見えてしまうのです。

ここで必要なのが「幽体離脱」。自分の体から抜け出して、審査員の目で自分の原稿を読み返してみてください。「リズムは悪くないか?」「この説明、くどくないか?」「この設定、どこかで見たことないか?」

「自分を買いかぶらないことですね」。この冷静な「客観性」こそが、アマチュアとプロを分けるいちばん大きな壁なのです。

審査員は「あなた」を見つけたがっている

審査員は敵ではありません。彼らは、まだ見ぬ才能――つまり「あなた」を見つけたがっているのです。

落選の通知は、「才能がない」という宣告ではありません。「まだ準備が足りない(ネガティブチェックで引っかかっている)」か、「熱が伝わっていない」だけかもしれません。

「読み終わったあと明るい気持ちになれるもの、ほのぼのした気分になれるものが好まれる傾向がありますね」という分析もあります。ひとりよがりにならず、読み手(審査員)を楽しませようという気持ちを持つこと。そして、最低限のルールを守ること。

それさえできれば、あなたの作品はきっと、審査員の心に残るはずです。

さあ、もう一度、自分の原稿を見直してみませんか?

ノンブルは、ちゃんと打ってありますか?