あなたとよむ短歌 テーマ詠「宇宙」結果発表 ~短歌の「余白」とは~


テーマ詠で短歌を募集し、歌人・柴田葵さんと一緒に短歌をよむ(詠む・読む)連載。
(『母の愛、僕のラブ』より)
テーマ詠「宇宙」結果発表
~短歌の「余白」とは~
短歌を読む・詠む連載、「あなたとよむ短歌」。今回はテーマ詠「宇宙」の結果発表です。
ロマンチックでもあり科学的な側面もある「宇宙」というテーマだったからか、実に多様な短歌が集まり、拝読していてとても楽しかったです。大きくて漠然としたものだからこそ、自分らしい視点で詠んだ人も多かったのかもしれません。
宇宙そのものや宇宙観を短歌にするのではなく、日々の行動や人との関わりなど一見関係なさそうなことが宇宙とつながる、そんな瞬間を短歌にすると気持ちのよい詩的な飛躍がでます。
今回も後半では投稿者の皆さんから寄せられた質問にお返事しています。作品と合わせて、ぜひ最後までお付きあいください。
それでは、最優秀賞の発表です!

おにぎりの具のことなど思ひき
「宙」は「そら」と読むのでしょう。宇宙は絶え間なく広がっていて、そのなかに太陽系があり、地球があり、自分がいて、おにぎりを食べ、具が入っている。まるでマトリョーシカのようですね。すべてはすべての内側にあり、外側にあるとも言えそうです。壮大な宇宙と、手のひらに収まるおにぎりがリンクする瞬間を描いた短歌です。
「そのときに」の「その」は「この宙が膨らんでゐる」を示すので、意味としてはダブっている部分です。音数が限られている短歌では、指示語(この、その等)を使って言い直すのは音数がもったいない、他の情報を入れた方が内容が濃くなる、などと言われることもあります。けれども、この川村さんの一首は「そのときに」こそが効果的ですね。指示語を使って、内容と同じように言葉も入れ子式になっている点がとても魅力的です。
続いて、優秀賞2首です。

宇宙と同じ暗闇で泣く
宇宙も自分の心臓も24時間止まることなく動いています。ここまでは他の投稿作にも見られた発想でしたが「宇宙と同じ暗闇で泣く」という点が秀逸です。心臓も体のなかに入っていて、外に出ることはなく、当然真っ暗で光を見ることはないという気づきが書かれています。
宇宙には自ら光を発する恒星がありますが、心臓はどうなのでしょう。心臓が動く仕組みもざっと言えば電気信号ですから、その点でも宇宙の暗闇と似ていますね。心臓が泣くということは「心」に辛いことがあったのかもしれません。

クラスに忘れ物を届ける
同じ学校に通うきょうだいなのでしょう。他学年の教室って、ものすごくアウェイ感がありますよね。自分もその学年だったことがあるはずなのに、まるで宇宙人たちがいるような違和感があります。弟という身内がいるにも関わらず、微妙に緊張するし、話が通じないような気がするし、空気が薄いような気がするし……。弟の顔も、心なしか普段とは違うような気がします。
そんなぎこちなさを「ちょっとだけ宇宙みたいな」という比喩に詰めこんでいる点が印象的な一首です。届けた後のホッとする感じまで想像できます。