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AI小説の境界線。 主要文学賞の応募要項から読み解く「オリジナル作品」の真意│規定なし15賞【後編】

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ラノベ・ファンタジー系【4選】

ラノベ・WEB小説系では「全面禁止」「補助利用OK」と賞ごとにスタンスが分かれています。明言なしのこの4賞は今後どちらに動くか、注目されるところです。

ピッコマノベルズ大賞(カカオピッコマ)

※第4回(第4シーズン2026年7月28日締切)応募要項時点

韓国発の電子コミックプラットフォーム・ピッコマが運営するWEB小説新人賞です。表現ガイドラインで著作権侵害への注意は喚起されているものの、AIに関する具体的な記述は確認できませんでした。

日本ファンタジーノベル大賞(新潮社)

※2026年(2025年6月30日締切)応募要項時点

新潮社が主催するファンタジー系新人賞でが、新潮社全体の沈黙傾向のなかにある一賞ですが、ファンタジーというジャンル上、AI活用と相性がいいタイプの作品も多く、応募者の判断が分かれそうな領域です。

オレンジ文庫ノベル大賞(集英社)

※2027年度(2027年1月予定)応募要項時点

集英社オレンジ文庫が主催するライト文芸系新人賞です。同じ集英社のみらい文庫大賞は全面禁止、小説すばる新人賞は補助利用OKと両極端に分かれており、本賞の方針を判断するのは難しいでしょう。

https://orangebunko.shueisha.co.jp/novel-award/outline

ファンタジア大賞(KADOKAWA)

※第40回前期(2026年8月31日締切)応募要項時点

KADOKAWAのファンタジア文庫が主催する大型新人賞です。応募要項にAI利用に関する記載はありません。同じKADOKAWAの横溝正史・電撃・野性時代・角川つばさ文庫の4賞がすべて「補助利用OK」を明文化していますが、本賞では明記されていません。

ノンフィクション・エンタメ系【2選】

ジャンル特性上、AI活用との相性が異なる2賞です。

小学館ノンフィクション大賞(小学館)

※第33回(2026年8月31日締切)応募要項時点

小学館が主催するノンフィクション系の権威ある賞です。賞金は1,200万円という超大型賞ですが、応募要項にAI利用に関する記載は見当たりません。同じ小学館の警察小説新人賞は全面禁止に踏み込んでおり、ノンフィクションというジャンル特性上、取材・記録の真正性が重視されやすい分野です。

ポプラ社小説新人賞(ポプラ社)

※第16回(2026年6月30日締切)応募要項時点

ポプラ社が主催する一般エンタメ系新人賞です。FAQまで確認しましたが、AI利用についての記載は見当たりませんでした。

規定なしの賞にAI使って応募するなら、どう判断する?

同じ出版社の他の賞のスタンスを手がかりにする

出版社ごとにAIへのスタンスは異なります。

そこで、主要5出版社の傾向を一覧にしてみました。

出版社AIに関する記載規定明示の例明言なしの例
講談社最も整備されたスタンス。「補助OK+開示」を複数賞で明示江戸川乱歩・群像・小説現代長編・青い鳥文庫・メフィスト賞なし
KADOKAWA補助OK+段階的整備。カクヨムではタグ推奨制も横溝正史・電撃・野性時代・角川つばさ文庫ファンタジア大賞
小学館一部の賞で全面禁止を明示警察小説新人賞(全面禁止)小学館ノンフィクション・小学館児童出版文化賞ほか
文藝春秋1賞のみ規定あり松本清張賞文學界新人賞・オール讀物新人賞ほか
新潮社主催の文学賞でAIの規定はなしなし新潮新人賞・新潮ミステリー・日本ファンタジー・R-18・三島由紀夫賞・山本周五郎賞・川端康成賞

たとえば、KADOKAWAの3賞すべてが「補助利用OK」を打ち出しているなか、ファンタジア大賞だけが明言なしという状況。これは「ファンタジア大賞も同じスタンスに準じる可能性が高い」と読むことができそうです。

一方、新潮社系の賞は7賞すべてで明言なし。

ただし、これらはあくまで推測にすぎません。

最終的な確認は次の方法で進めましょう。

不安なら主催者に問い合わせるのが確実

応募要項に書かれていない以上、「規定なしの賞でAIを使ってよいか」は応募者には判断できません。一番確実な方法は、主催者・編集部に問い合わせることです。

問い合わせる際のポイント:

  • 応募要項の「お問い合わせ先」または「事務局」に連絡する
  • 使用したAIツール名と利用範囲(プロット出し/文章補助/本文執筆など)を具体的に伝える
  • 「応募作品にAIを利用したのですが問題ないでしょうか」と率直に質問する

黙って使って受賞後に発覚、というリスクは避けたい

最も避けたいのは、何も申告せずにAI利用作品で受賞し、後から発覚することです。

たとえば、2025年11月18日にアルファポリスが、自社主催の全コンテストおよび出版申請を対象に、生成AIで作成された作品(プロット検討や校正など補助的な利用は対象外)の応募を禁止すると発表しました。

【重要】AI生成作品を対象とした出版申請及びコンテストにおける禁止行為の追加について(2025/11/18)

同社は、受賞や書籍化の打診後にAI生成作品と判明した場合は、それらを取りやめるとしています。実際に、この規約改定をめぐっては、受賞後に書籍化・コミカライズの企画が見直された事例も報じられています。

「現時点で規定がない」賞であっても、選考の途中や受賞後に方針が示される・変更される可能性はあり、その場合に影響を受けうる、という一例です。

実は「規定なし」とされる賞でも、最終候補や受賞前のヒアリングでAI利用について確認される可能性は否定できません。

たとえば群像新人文学賞は「最終候補作品については、選考委員会がAI使用の有無と使用方法を確認」と明示しており、表向きには「全面禁止」と書いていなくても、最終段階で確認する場合もあります。

応募要項に明記がない場合でも、応募作品にAIを利用したのであれば、応募時のひと言メモやカバーレターで「補助的にAIを利用した」と添えておくとよいでしょう。

これだけで、受賞後の信頼関係を守ることができます。

結局のところ、AIで小説を書いて応募していいのか?

ここまで32賞のAIに対するスタンスを見てきました。「全文OK」がある一方で「全面禁止」もあり、調査範囲の約半数では明言が避けられているという、現在の文学界の混沌とした実態が浮き彫りになっています。

そんななか、星新一賞では今年(2026年3月発表)、受賞4作品中3作品がAIを活用していました。AIによって小説の入り口に立てる人が増える。これは紛れもない事実です。

一方で、応募要項にある「未発表オリジナル作品」の「オリジナル」を、応募者本人が紡いだ言葉と定義するならば、AIに本文を任せることは「オリジナル」の枠から外れることになります。それが2025年11月のアルファポリス規約改定(AI生成作品の応募禁止)が突きつけた問いでもありました。

AIで小説を書いて応募していいのか?

その答えは、いまだ業界全体で揺れています。応募する一人ひとりが、自分の応募する一作について「これは自分の作品と呼べるのか」と問いかけ、判断するしかない時代になったのかもしれません。

※掲載している情報は各賞の最新応募要項時点のものです。AI関連の規定は2025〜2026年にかけて業界全体で整備が進行中であり、次回開催時には新たな規定が追加・変更される可能性があります。応募前に必ず主催者の公式サイトで最新の応募要項をご確認ください。