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Look  第23回 家の光読書エッセイ「本と出合って、日々が変わった。」

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エッセイ
公募ガイド編集部が、いま最も注目しているコンテストをご紹介します。 審査のポイントからアイデアの出し方まで、作品づくりのヒントが満載!

読書から得た
体的な体験を描こう

■審査員
岸本葉子(エッセイスト)
1961年神奈川県生まれ。東京大学教養学部卒業後、執筆活動に入る。生活エッセイや旅のエッセイを多く発表。俳句にも造詣が深い。

読書感想文とエッセイの違いとは何か? どうしたら審査員を唸らせる作品が書けるのか? 作品を応募するうえでの技術的なコツや注意点を、審査員の岸本葉子さんにお聞きしました。
読書への切実な思いが
あるか
―― 読書感想文とエッセイの違いは?
岸本さん:一般に読書感想文というと課題図書がありますが、これは読書にまつわるエッセイなのでそれはありません。本の正しい読み方を書くわけではないので、自分と本との出合い方、読むことの風景を書いてもいいのです。入口は、「本が嫌いだった」とか、「家に本が1冊もなかった」でもインパクトがあっていいのではないでしょうか。
―― そう考えると、書ける範囲が広がりますね。
岸本さん:ただ、最後まで本と関わりがないのではなく、そんな自分が「本との出合いから何に気付いたか」という展開は欲しい。「本とあなた」「読むということとあなた」についての物語を書いていただければいいと思います。
―― 審査された中で、印象に残っている表現や作品はありますか?
岸本さん:それはたくさんありますね。年配の方に多いのですが、今は本が簡単に手に入るけど、本が手に入らない読書を禁じられる、そんな時代があった。そういう方が読書に出合い、ある1冊の本が忘れがたいものになる。その事実を知り衝撃を受けました。困難を乗り越えて本に出合ったエピソードには胸を打たれました。
―― 若い人の作品で印象に残っているのは?
岸本さん:若い人ですと、学校や家族の中での生きづらさを抱えていて、その中で読書が心を許せる相手になっていったという話が印象に残っています。今は世の中に心の不調を抱える人が多い。そんな方たちに読書がとても力を与えているのだと思いました。
これは入選の秘訣ではないのですが、審査をして感じるのは、その本や読書を通じて親や先生、もしくは昔の自分や誰かと出会い直すということなんだと思います。そういう経験や想いが、狙わず無意識に出てくるなと感じます。
―― 審査をしていて気になる内容や表現はありますか?
岸本さん:この人は本当にこの本を読んでいるのかな?と思うことがあります。どんなコンテストでも、文章で世に出たい、入選が目的という人がいるんですね。その気持ちは重々わかるんですけれども、この作者にとっての読むことの切実さが伝わってこないと作品として弱くなります。だから、多くの方に応募していただきたいけれど、「このテーマで自分が書くことはあるか」と素直に考えて、書こうって思えたら書くのがいいんじゃないかと思います。
―― 5枚は結構な文章量があります。どうまとめればいいですか?
岸本さん:まずは「その本との出合い」を書いて、そしてある程度の「その本の紹介」をした上で、「具体的に感動したこと」を2つくらいは書き、最後に「読書から得た気づき」が欲しいですね。
―― 簡潔に本の紹介をするのが意外と難しいです。
岸本さん:本の外側についている帯の紹介コピーとか、裏側に書かれているあらすじを読むといいですよ。まるごと真似してはいけませんが、参考にするといいです。 たとえば、最近話題の浅田次郎さんの著書『大名倒産』なら、「いきなり藩主に据えられた庶子の四男が、実はその家に膨大な借金があるとわかり、仲間と知恵を合わせて困難に立ち向かっていく物語です」というぐらいで、その借金をどういうふうに清算したのか、それともできなかったのかまでは書かなくてもいい。でも、入口の掴みはあった方がいいと思います。
臨場感ある描写を入れよう
―― 「具体的に感動したこと」は、エピソードをどのように書けばいいのでしょうか?
岸本さん:エピソードで説明するというよりは、シーンを細かく描写する感じでしょうか。臨場感が大事だと思います。臨場感とは、結局のところ五感のどれに訴えるかです。匂いや見えたものとか、全部でなくてもいいけれど、読者に訴える何かがあるといい。ここが題材の肝の部分になります。自分にとってすごく印象的な出来事ってなんだろうと思い出して、それを読者に一緒に体験してもらえるように、しっかり書き込む感じだと思います。
―― 最後のまとめ方で気を付けた方がいい点は?
岸本さん:どうしても、世の中にすでにあるメッセージを持ってきて、きれいに収まりをつけたくなります。それは一見まとまりがいいのですが、予定調和になって作品としてはパワーダウンしてしまうんです。あんまり整えようとせず、素直に書く方がいいと思いますね。
―― 推敲のコツはありますか?
岸本さん:繰り返し読むことにつきます。そして、まずは文章の細かい所より全体の流れを見る。ここがもたもたしているなとか、ここがなんとなく物足りないなとか、そういうバランスを見ることを先にする。文章の細かいところを整えるのは後でもいいのです。
―― 全体の流れを見た後に、文章としてはどこをチェックしたらいいですか?
岸本さん:あなたがどういう家族構成で、どんな人生を送ってきて、今どういう状況なのか。自分のことをまったく知らない読者が読んでわかるかどうかを考えてみてください。エッセイは自分の体験を具体的に書いた方がいいので、最初は自分基準で書くけれど、書き終えた後は他人基準になって、ちゃんと伝わるかを考えましょう。
―― 最後にメッセージをお願いします!
岸本さん:いつも、私の体験や予想をはるかに超える多様な作品が出てくるのでとても楽しみにしています。みなさんと本や読書にまつわる物語をありのままに出してほしいですし、出合いたいなと思います。
 
「読書との関わり」を
書こう

読書の感想を書いてもいいが、そこだけにとどまらず、『あなたと読書の関わり』を書こう。 「本との出合い」「本を通した人との出合い」読書をきっかけとした経験と気付きを書くことが大事。

 
臨場感のある描写をしよう

その本や読書から得た重要な感動のシーンはなるだけ具体的に書こう。その時の状況が読者に伝わり追体験できるのがベスト。音、色、味、匂いなど、五感を刺激するような表現を盛り込みたい。

 
推敲は何度もしよう

書いてすぐは冷静に作品を見ることができない。数時間、数日、期間をあけて客観的な目で見よう。声に出して読む、パソコン原稿なら紙に印刷して読む、誰かに読んでもらい感想を聞くのもGOOD!

主催者からのメッセージ

家の光協会は、農業者を中心に集まって運営しているJA(農業協同組合)グループの出版・文化団体です。紙媒体がほとんどなかった大正14年に創刊された『家の光』をはじめ、各種雑誌、書籍等の出版活動をしています。また、読書運動を推進しており、読書から紡ぎだされたモノ・コトをだいじにしています。「家の光読書エッセイ」の募集もそのひとつ。今年も素晴らしい作品に出合えることを楽しみにしています。

 
1冊の本との思い出、図書館や書店での本との出合い、読書にまつわる感動的な話など、エピソードを募集。応募者全員に入選作品集を贈呈する。
家の光読書エッセイ賞(1編)
………………………賞金30万円
優秀賞(3編)…… 賞金10万円
佳 作(7編)…… 賞金3万円
応募規定 400字詰め原稿用紙(20字×20行)
5枚以内。
ペンネーム不可。
応募方法 郵送、WEBで応募。
締切 2023年11月10日(金)必着
発表 2024年2月上旬

応募要項の詳細は公式サイトを
ご確認ください。