エッセイを書く勘どころ⑥:エッセイに必要な 5つの要素


さあ、エッセイを書き出そう。いや、ちょっと待って! その前に設計をしておきましょう。
1.テーマ
テーマという言葉を広くとらえると、どんなことを書くか(題材)と、それを通じて何を言いたいか(テーマ)の二つがありますが、いずれにしても書く前には以下のことを考えましょう。
1.この題材でもう誰か書いてないか。
2.自分の書きたいことであると同時に、他人が読みたいものでもあるか。
平たく言えば、興味を持ってもらえるかどうか。エッセイの良しあしは、ここで半分以上が決まります。
2.エピソード
エッセイにはエピソードが不可欠と言ってもいいです。なくても書けますが、実体験をベースにしたほうが説得力がありますし、読み手もその体験を読んで追体験できますから、何が言いたいかがよく伝わります。
問題は、どんな体験をしたかではなく、どう見たかです。
同じ「ハロウィン」を見ても、楽しいと思う人もいれば迷惑と思う人もいて、そこを穿うがち(穴を空け)、あなたなりの見方をする。同じ体験をしても、何をどう見たかによって差が生じます。
3.ロジック
ロジックとは論理という意味です。
私たちが日常的によく使うのは、三段論法です。
「人間は死ぬ。ソクラテスは人間だ。 だから、ソクラテスもいつか死ぬ」
というような論法ですね。
こういう論理は、誰でも持っています(持っていなければ日常生活が送れませんから、普通に生活しているのなら大丈夫です)。
と言っても、論文のように書くわけではありません。
しかし、文章にも大きな流れがあり、人は誰でも無意識にその文脈に乗っかって読んでいきますから、いきなり関係ない話を持ち出されたら、
「いったいどういうこと?」
と思ってしまいます。
たとえば、子どもの作文で、
〈動物園に行きました。念願のパンダが見られると楽しみでした〉
〈でも、パンダ舎が改装中で、結局、見ることができませんでした〉
この文脈なら、〈残念でした〉とか、〈次回は見たいです〉となるのが普通ですが、ここでいきなり〈楽しかったです〉とあったら、「なんで? あいだを書き飛ばした?」と思いますよね。
ロジックというのは、要するにそういう飛躍をしたらだめということです。
4.スタイル
スタイルというのは、常体(である・だ)で書くか、敬体(です・ます)で書くかということです。ちゃんぽん(混用)はだめです。
ただ、セリフは言ったままを書きますから、地の文とは文体が違ってもOKです。
5.スパイス
ちょっとした味つけのこと。メインの味つけではありませんが、紅ショウガ、福神漬けにあたるもの。具体的には、笑いやくすぐり。
絶対的に必要なものではありませんが、クスっと笑わせ、もっと先を読みたくさせたり、ベースの話のテイストを引きたてたりします。
【5つの作法】
テーマ:興味を持ってもらえるものを。
エピソード:実体験をベースに。
ロジック:論理的に自然な流れを。
スタイル:常体か敬体か。
スパイス:時に笑いやくすぐりを。
※本記事は「公募ガイド2016年11月号」の記事を再掲載したものです。