第2回 岸本葉子選 1000字エッセイ募集「おい・おい」 結果発表


「老い」は老いる人にも老いられる人にも無関心ではいられない問題です。
「老い」について、切実なもの、ユーモアのあるものなど、バラエティーに富んだエッセイを期待します。
「老い」をテーマに、毎回の課題に沿ったエッセイをお送りください。

1961年、神奈川県生まれ。東京大学卒。エッセイスト。俳句、介護、老いに関するエッセイ多数。淑徳大学客員教授。
募集中の課題
第3回 [ 年末年始 ] 締切 11/20(必着)
※「老い」をテーマに、今回は「年末年始」に関するエッセイを募集します。
< 第2回 >
課題 /
買い物
総評
今回も読みでがありました。老いにまつわる失敗に驚いたり落ち込んだり、ときに悔いたりしながら、読後感は穏やかで明るい作品が多かったです。タイトルとオチに懲りすぎの作品は惜しく感じました。狙いが前面に出すぎて、読者にはくどくなってしまいます。サクッとしているくらいが短いエッセイには合います。
(岸本葉子)
最優秀賞
衰え知らず
壺さくら(神奈川県・33歳)
岸本講評
「衰え知らず」はバランスのとれた作品です。「年齢には適わない」と思われた義祖母が実は一枚上手だったという展開には、ユーモアに加えて老いへのリスペクトがあります。義祖母の願いを叶えようと頑張るけなげな義孫に自分がなってしまわないよう、義父に対する心理を入れて中和したのが巧みです。作者がいい子すぎると読者は微妙に反発してしまいます(私はありがち。自戒)。
優秀賞
天丼
当麻スヘ(東京都・64歳)
岸本講評
「天丼」は情報の出し方がとても適切。中ほどの「天丼(並一つ)」により、結びの「三日続き」は一日目に買ってきたものを二日目も食べたのではなく、三日とも買いにいかされたことがわかります。「衰え知らず」の作者と同様、読者への想像力のある作品です。
佳作
暑中見舞いに、じゃがいもはいかが?
梅沢海(東京都・73歳)
編集部コメント
ネットで買い物をしたら、間違って姪に届けてしまい、暑中見舞いだと言いわけしたというエッセイです。ネットショッピングあるあるですね。妙な贈り物をもらってしまった姪御さんの戸惑いが見えるようでした。
あの母といた夏
大澤優子(広島県・68歳)
編集部コメント
最低限の生活費しか渡されなかった母親が、高齢になって買い物依存になり、認知症も入って消費者金融に大変な借金をしていたと。作者としては大惨事ですし、作者のお母さまもなんだか哀しいですね。
老いを楽しむ
うさこ(北海道・67歳)
編集部コメント
「どのようなボウでしょうか?」は笑えますね。店員さんも、まさか自分の奥さんを探しているとは思わなかったでしょう。ほのぼのして読後感もいいですね。本題に入るのが少し遅かったのがちょっと惜しかったです。
アツイ夏の買い物
佐々木祥子(福岡県・38歳)
編集部コメント
確かに、アイスクリームにもカップ麺にも「スーパーカップ」があります。あれは勘違いするよねという共感もありますが、このネタは昔からありますから、ネタ以外の売りが欲しかったですね。最後はちょっと自慢話っぽくなってしまったのが難でした。
一世一代ではない勝負
色ロウソク(東京都・35歳)
編集部コメント
なくなりそうだったのはショウガかからしか。からしだと思った途端、わさびではなかったかという疑念にかられる。これもあるあるです。よくある小ネタではありますが、今まさに買い物をしている臨場感を出したところが秀逸でした。二段オチもよかったです。
ポストと母と買い物
都良炯子(石川県・60歳)
編集部コメント
これも認知症の母親を持ったつらくて大変なエッセイでした。その月の全財産が入った財布と預金通帳と印鑑を郵便ポストに入れて柏手とは。神社と間違えたんですかね。ショッピングセンターには行っていますが、「買い物」から遠くなってしまったかもしれませんね。
<選外佳作>
メモなんかいらない?
麻生雀(埼玉県・73歳)
編集部コメント
買い物に関する失敗例をあれもこれもと並べるのではなく、「メモなしでも売り場で次々と買うものを思い出したが、肝心のものを買い忘れた」という一点で突破したところが潔い。中盤は最後に落とすためのミスリードになっていました。
欲深い九十三歳
聖野クロード(群馬県・59歳)
編集部コメント
足が悪い母親が試着しないでズボンを買い、Lサイズに交換しにいったら別のズボンがいいと言い、そっちのほうが安かったから、交換して差額を返せとはいいにくかったというエピソードでした。人に何かを要求するのが苦手という作者の困惑が見えます。
心付きレジスター
西條詩珠(大阪府・57歳)
編集部コメント
レジで小銭ではなく一万円札を出した祖母を見て、小銭を数えて出すことがもうできなくなっているんだと感じたというエピソードは切ないですね。これがメインテーマですが、後半は優等生っぽくまとめに入ってしまった感がありました。
ウォーキングマシン
蟹玉リク(神奈川県・29歳)
編集部コメント
母親は年々年老いてきたかと思ったら、ウォーキングマシンで足腰を鍛え、一緒に歩いていると、娘である作者が追いつかないくらい速い。高齢者が弱っていく話かと思ったら、意外な方向に展開しました。まあ、55歳はまだまだ若いですが。
この夏、人生初の夏バテがやってきた。
いとおかし(東京都・51歳)
編集部コメント
年を取ると食欲がなくなるとか、夏バテで食べられないという経験が一切なかった作者にもついに念願?の夏バテが! と思ったら全然痩せない。食欲がないと言いながら実は知らぬ間に何かを食べていたという結末は微笑ましい。もう少し中身があると○。
ラッキーボーイ
こまいぬ(愛知県・58歳)
編集部コメント
お釣りを手渡しされて気分がよかったが、金額が少ない。まさかわざとかと疑う。一方、別の店では支払い金額が多いと教えられ、その店員が推しになる。二つのエピソードを対比的に置きましたが、そこから浮かび上がってくるテーマをあまり感じなかったかな。文章はとても手馴れていましたが。
きざみ煙草
紅帽子(北海道・67歳)
編集部コメント
祖母の煙草を買いに行き、お駄賃をもらうというのは、昔はよくありました。煙管で刻み煙草を吸っていたというのは粋ですね。ここを足場にさらにテーマを深めたかったですが、孫娘のエピソードになって話がずれてしまった気がします。ちょっと惜しかったですね。
コロッケを買ったついでに買いました
雑賀明美(大阪府・69歳)
編集部コメント
コロッケ買うついでにマンションを買ったというエピソードには度肝を抜かれました。さらに、それだけでなく、この母親は自分の家で天寿を全うするだけでなく、最後には認知症になって百歳まで生きます。もっと長い枚数で読みたい気がします。
日日是口実
ベッカム隊長(群馬県・63歳)
編集部コメント
ソーメンを買いに行きましたが、買い物をしているうちに目移りし、あれこれ買い込んできましたが、肝心のソーメンを買い忘れたという話です。序盤が少し長い気がします。ちょっと大げさにやりすぎて脚色が入った印象もあります。頃合いが難しいですね。
実家とは近くにありて行かぬもの
松本俊彦(京都府・61歳)
編集部コメント
母親がケガをし、自転車に乗れなくなります。困ったのが買い物。それで歩いて15分のところに住む作者が手伝いに行きます。面倒ではありますが、行けば話すし、話せば状況がわかり、状況がわかれば安心する。ケガ以外の大きな事件は起きませんが、落ち着いたエッセイでした。
第2回もご応募、ありがとうございます。
第3回もたくさんのご応募をお待ちしています。
課題は「年末年始」。年末でも年始でも、両方でもかまいません。
「老い」ならではの年末年始があると思います。
岸本葉子先生を唸らせるようなエッセイをお待ちしています。
<応募総数 168 編>
応募要項
課 題
第3回 [ 年末年始 ]
応募規定
1000字以内。Wordの方は文字数カウント1000字以内。
応募点数制限なし。
応募条件
作品は未発表オリジナル作品に限る。
AIの使用は不可。
入選作品の著作権は公募ガイド社に帰属。
賞
【 最優秀賞 】 1 編 = Amazon ギ フ ト 券 5000 円 分
【 優秀賞 】 1 編 = Amazon ギ フ ト 券 2000 円 分
【佳作】 6 編=記念品
【選外佳作】10 編=WEB 掲載
応募先
【WEB 応募】
【郵送】
A4 用紙に縦書き。40 字 ×30 行、または 20 字 ×20 行。
タイトル、〒住所、氏名(ペンネーム使用の場合は併記)、年齢、電話番号、 メールアドレスを明記。作品の返却は不可。
◾応募先 〒105-8475(住所不要)公募ガイド編集部「第3回おい・おい」係
締切
2025年11月20日(必着)
発表
季刊公募ガイド冬号(2026/1/9 発売予定)誌上、Koubo 上
入選作品は趣旨を変えない範囲で加筆修正することがあります。
応募者には弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。