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誰でも一生に一冊小説が書ける。⑤:公募ガイド流文学賞必勝ガイド 純文学編

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公募文学賞でもプロ・アマ不問の賞と、そうでない賞があるが、ここに挙げた5賞はいわゆる新人賞(他の大きな文学賞を受賞した人は受賞できない)。プロデビューはほぼ確実で、それだけに応募数は膨大。受賞して大手出版社から単行本化されたり、さらにはヒットして文庫にまでなればかなりの収入になるせいか、賞金は高くない。受賞後は主催者の文芸誌を中心に作品を発表していく。ある意味、そこから本当の修業時代が始まる。

文學界新人賞:由緒ある純文学の賞。芥川賞を狙いたい人に!

[沿革・趣旨]
1933年創刊、1936年に文藝春秋が引き継いだ文芸誌『文學界』が主催。文芸誌として圧倒的に歴史が古く、王道。新人賞は、芥川賞の選考団体1968年、新潮文芸振興会が創設。小説・評論・ノンフィクションを募集していたが、2008年より小説のみの募集に。純文学としての芸術性・表を社内にもつ同誌による新人発掘を目的とした純文学の賞。枚数が400字詰め換算70 ~ 150枚と他の純文学系の賞より短い。第1回受賞作は石原慎太郎の『太陽の季節』。以前は年2回だったが、現在は年1回募集。

[過去作品の傾向]
第121回受賞は、吉祥寺が戦場となったリアルな「自衛隊小説」『市街戦』(砂川文次著)と、近現代史とある女性の生涯を斬新な手法で描いた『人生のアルバム』(渡辺勝也著)。その前年度には、自分を植物だと認識している女性が受胎するときを描いた『ヴェジトピア』が選ばれるなど、表現力とアイデアが秀逸で現代性ある作品が選ばれる傾向。出身作家のうち、吉田修一、長嶋有、絲山秋子などはその後、芥川賞も受賞している。

[DATA]
枚数:70枚~150枚
応募数:1,566編(第120回)
賞金:50万円
主催:文藝春秋 文學界編集部

https://www.bunshun.co.jp/mag/bungakukai/bungakukai_prize.htm

 

新潮新人賞:新人育成に積極的。純文系老舗文芸誌の賞

[沿革・趣旨]
1968年、新潮文芸振興会が創設。小説・評論・ノンフィクションを募集していたが、2008年より小説のみの募集に。純文学としての芸術性・表現力が高い作家を輩出。前身は1954年創設の同人雑誌賞。歴史も古く、硬派の賞と言える。芥川賞作家・中村文則、田中慎弥も出身。「小説の新潮」と言われるだけにレベルが高く難関だが、新人育成に積極的。

[過去作品の傾向]
第47回(2015年)受賞作は、義父の介護に縛られた主人公と親や同級生を憎む姪のひと夏の物語『恐竜たちは夏に祈る』(高橋有機子著)。第48回(2016年)受賞作は、自意識が強い男子中学生と意思表示ができない同級生女子の関係性を描いた『二人組み』(鴻池留衣著)と九州の島を舞台にした一族四世代の物語『縫わんばならん』(古川真人著)がダブル受賞。
新しい才能を取りこぼさないため枚数の下限はあえて設けていないのも特徴。

[DATA]
枚数:250枚以内(短編可)
応募数:1,933編(第48回)
賞金:50万円
主催:新潮社

https://www.shinchosha.co.jp/prizes/shinjinsho/

 

文藝賞:10代も活躍。低年齢作家ブームの先駆け

[沿革・趣旨]
「文藝」は1933年に改造社が創刊、戦後、河出書房が引き継ぎ、文藝賞は1962年に創設。2000年頃から中高校生の受賞が増え、低年齢作家ブームの先駆けに。第42回には三並夏が当時中学3年生で受賞し、最年少の文学賞受賞者として話題を呼んだ。田中康夫『なんとなく、クリスタル』や山田詠美『ベッドタイムアイズ』などの話題作を生み出している。

[過去作品の傾向]
第52回(2015年)受賞作は、自分だけの人形を手に入れたいと思った少年の心の「闇」を描いた『ドール』(山下紘加著) と架空の町を舞台に、主人公の壮大な人生を描く『地の底の記憶』(畠山丑雄著)が受賞。
第53回(2016年)受賞作は、身近な人3人を亡くしたボクサー志望の男が日常の中で成長していく『青が破れる』(町屋良平著)。
ダブル受賞も多く新人発掘に積極的。綿矢りさ、羽田圭介、山崎ナオコーラも出身作家。

[DATA]
枚数:100枚~ 400枚
応募数:1,786編(第52回)
賞金:50万円
主催:河出書房新社

https://www.kawade.co.jp/smp/bungei_award.html

 

群像新人文学賞:村上春樹、村上龍を生み出した新人賞

[沿革・趣旨]
講談社でもっとも歴史ある文芸誌『群像』が、1958年に創設した純文学の新人賞。文芸誌としては後発になるので、先行誌にないものを求め、村上春樹、村上龍といった新しい人材を発掘したことで有名。
常識への挑戦、純文学における自由で新しい表現の追求に重きを置いている。出身作家に、高橋三千綱、中沢けい、阿部和重、島本理生、村田沙耶香など。

[過去作品の傾向]
第57回(2014年)受賞作は、日本語と中国語が混在した斬新な文体で評価の高い『吾輩ハ猫ニナル』(横山悠太著)。第58回(2015年)受賞作は、少女が過ごす初夏の1か月をシニカルで緻密な文体で描いた『十七八より』(乗代雄介著)。第59回(2016年)の受賞作は、朝鮮学校に通うことになった主人公が、二つの言語の間でもがきながら過酷な試練に立ち向かう『ジニのパズル』(崔実著)。小説にしかできない、純文学ならではの表現が高く評価される傾向にある。

[DATA]
枚数:70枚~ 250枚
応募数:1,864編(第59回)
賞金:50万円
主催:講談社 群像編集部

https://gunzou.kodansha.co.jp/awards

 

すばる文学賞:既成の純文学にとらわれない新しい才能を育成

[沿革・趣旨]
1977年に創設された純文学の新人賞。純文系5賞の中では一番後発(といっても40年の歴史がある)。既成の文学観にとらわれない意欲作が求められる。森瑤子や原田宗典も出身作家。ミュージシャンでもある辻仁成や俳優の大鶴義丹など、バラエティーに富んだ受賞者を輩出。本間洋平著『家族ゲーム』、金原ひとみ著『蛇にピアス』は映像化もされた。

[過去作品の傾向]
第39回(2015年)受賞作は、美容整形を繰り返す27歳の主人公が温泉宿で中年男と出会い、思わぬ入浴体験をすることになる『温泉妖精』(黒名ひろみ著)。第40回(2016年)受賞作は、かつて恋人同士だった女性二人が再会して共同生活を送ることになり、新たな関係を見出していく『そういう生き物』(春見朔子著)など。その作家ならではのテーマ、視点を重視。最終候補作に残ると担当編集者がつく。新人育成に力を入れている賞。

[DATA]
枚数:100枚~ 300枚
応募数:1,437編(第40回)
賞金:100万円
主催:集英社

https://subaru.shueisha.co.jp/bungakusho/

 

※本記事は「公募ガイド2017年1月号」の記事を再掲載したものです。最新情報は各主催者HPをご確認ください。

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