小説投稿サイトのすべて②:書けない人こそ使おう 小説投稿サイト


小説投稿サイトで書くメリット
- 読んでもらえるので書く気になる
- テンプレを使えば書きやすい
- 同好の仲間がいるので刺激になる
小説投稿サイトはWEB版の同人誌
『戦国自衛隊』の半村良は「作家は読者のなれの果て」と言ったが、小説家は読者の中から出てくる。
飽きるほど小説を読み、次はこんな小説が読みたいと思いながら、それがなかなか現れないので、それではと自分で書き出す。
それで書き出して書きあぐねたら、人はまずうまい人のまねをする。文豪の文体をまねたり、名作の続編を書いたり、人物やストーリーはそのままに設定だけ変えてリメイクしてみたり。
これらは昔からよくある小説の練習方法で、たいがいの人はこうした一定の習作期間を経て、今度は自分なりのオリジナル作品を書くようになる。
実は、これとまったく同じことが小説投稿サイトで行われている。
最初は読み専といって読む専門だったが、自分にも書けるかもしれないと二次創作的なことをしてみたりし、やがてオリジナル作品へと移行していく。
以前は同人誌などでやっていたことが、そっくりそのままWEBで行われている。小説投稿サイトはそうした場でもある。
書き慣れない人は、テンプレを使おう
二次創作というのは、他人の著作物を使って小説を書くことだが、違法なので許諾なくしてやってはいけない。にもかかわらず、現実的には二次創作をする人がいるのは、ひとつにはそれが書きやすい方法だからだ。
キャラクターを一から作るのは大変だが、すでにあるものを使うなら、あとはストーリーを考えるだけだからハードルが低く、ストーリーも浮かびやすい。しかし、くり返すが違法だ。
二次創作と似て非なるものが、テンプレート(略してテンプレ)と言われるものだ。
テンプレとはおおもとのテーマ、設定のことで、これ自体には著作権はない。だから、たとえば誰かが「異世界に転生して生き直す」という小説を書いて人気となったとき、自分もそのテーマで書いてみたいとまねてもいい。
結果、似たような作品が増えるが、それは共感の表れだからうれしいし、その流れに乗った作品を書くのも、逆に定番の展開を裏切るのも楽しい。
ともあれ、初心者はテンプレを使っと書きやすく、人気の設定だから興味を示してくれる人も多い。ぜひ試してみて。


読んでもらえると続きを書きたくなる
小説投稿サイトにはレビューという、読んだ人が感想を書く機能がある。その内容はさまざまだが、以下のように分けられる。
- ほめている
- 感想を書いている
- 誤りの指摘
- ダメ出し
褒められたり、コメントが書かれているのはうれしいもので、書く意欲につながる。
授業中にお話を紙に書いて回したら、「面白い!それで?」と添え書きされて戻ってきたようなもので、期待されると俄然書く気になる。それと同じだ。
なかには、「次回はこんな展開かな」と予想する人もいるが、期待されているのなら期待どおりにやるのもいいし、期待にこたえつつ予想を裏切るのもいい。いいアイデアなら拝借もできる。
誤りの指摘の内容は、誤字、脱字、よじれ文、矛盾、「漢数字の二がカタカナのニになってます」といった指摘、あるいは事実誤認が多いが、WEBだからすぐに修正できるし、ただで校正してもらっていると思えばありがたく勉強にもなる。これはだめ出しについても同じだ。
無料の同人誌、楽しい小説塾
小説を書こうとする人にとって、同好の仲間がいるというのは一番剌激になる。
何年も一人で書いていると、自分を奮い立たせるものがなくなってしまったりするが、誰かが書いた作品に共感したり感心したりすると刺激になり、自分ももっと書きたいと思う。
そして、実際に書いてみたけれど、すぐに行き詰まって挫折してしまったとなっても、少ないながら読んでくれた人がいると思えば簡単には中断できないし、そうなりたくないと思在は次回はしっかり準備をする。
時には厳しく批評されて落ち込むこともあるが、それによって成長できることもある。
つまり、小説投稿サイトは、書くことから脱落しがちな人に剌激を与え、研鑽していく場でもあるのだ。
もちろん、小説投稿サイト自体は趣味として楽しむための場であることが第一義だが、書く大変さも含めて小説を書くことを楽しんだ結果、気がついたら長く書け、力もついていたとなる。
いわば、無料の同人誌、楽しい小説塾とも言える。
作家修業の場の変遷
1.師匠に弟子入り
戦前までは師匠について修業するのが一般。漱石門下の木曜会、大衆小説の大御所、長谷川伸の新鷹会からは多くの有名作家が世に出た。
2.同人誌
太宰治のいた「海豹」など、流通している雑誌が少ない時代は同人誌がたくさんあり、作家志望者は自費で同人誌を作ってそこに書いた。
3.学校・カルチャー教室
昭和後期は小説の書き方を教える学校や、カルチャー教室が流行。そこから多くの小説家が巣立っていった。山村教室ももとはカルチャー教室。
4.小説投稿サイト
学ぶより、下手でも書いて公表したいという表現欲のある人たちが小説投稿サイトに集まり、結果的にそこが小説を書く場、腕を磨く場となる。
※本記事は「公募ガイド2017年8月号」の記事を再掲載したものです。(特集監修:飯田一史(WEB小説評論家))