その作品、みんなとかぶってますよ②:川柳は着眼点が決め手


川柳は短いだけに、どこをどう切り取るか、どこにどんな角度で光を当てるかが問われる。
ここでは川柳の発想と作句法を解説する。
表現以前の問題、こんな作品はボツまっしぐら!
第一発想で詠む
お題が「子ども」だとして、子どもと言われたら誰でも連想するようなこと、たとえば「子どもは天使」「子どもは純白」「子どもはかわいい」という内容ではライバルと差がつかない。もう1つ2つ、ひねる必要がある。
共感がない
現代の川柳では、「そうだよね」「あるある」「私にも経験ある」といった共感が必要。ただ、「私もそう思う、わかるなあ」と「そう思うのは当たり前だろ」は紙一重。人が気づきそうで気づかないことに目を向けられるかが勝負。
作句の手順
1.アイデア出し
公募川柳の場合、お題があることが多い。まずはお題から連想されることをたくさん書き出す。
ただし、川柳の場合は実体験をベースにすることが多いので、連想で記憶を掘り起こす感じ。
2.文章化
「これは面白い」という実体験を思い出したとして、それのどこを句にすればいいかわからない場合は、「こんなことがあって、あのとき、こう思った」のように短文にしてみるとよい。
3.成形する
短文をさらに短くし、「こんなことがあった」(情景)と「こう思った」(気持ち)のどちらか、または両方を五七五にする。言わなくていいことをいかに省略するかがカギとなる。
実体験を書き出し、切り口を探る
【例1】
カラオケで同席した初対面の女性は30代に見えたが、歌う歌が昭和のムード歌謡ばかり。意外と年だったのかと思った。
↓
カラオケを歌えば年の数がわかる
【例2】
父親が認知症になった。娘の私にも反応しないのに、美人の看護師さんが来るとずっと目で追う。男ってやつはと思った。
↓
自分を失っても目で追う先には美人がいる。
マンダラートを活用した発想法
川柳推敲の実例
原案
子供らしい子供とんと見なくなり
↓ 上6、中6でリズムが悪く、形で落ちる。「子供らしい子供」は具体的にする。
添削例
風の子は近頃とんと見なくなり
↓ さらによく聞く表現を改め、「平成」で現代を示し、リフレインでまとめる
さらに添削
平成の風の子はもう風の中
発送は同じでもここまで練れば入選!
原案
やめなさいママの似顔絵角描くの
↓ この句はお母さんが中心になっているので、お題の「子ども」に寄せる。
添削例
似顔絵に角を描く素直な子
↓ さらに視点を変えて詠んでみる。たとえば、子どもの視点で詠む。
さらに添削
似顔絵のママには角をはやしとく
※本記事は「公募ガイド2017年10月号」の記事を再掲載したものです。