あなたとよむ短歌 vol.48 テーマ詠「はじめる」結果発表 ~短歌のつくりかた~(2/3)
それでは、佳作のご紹介です!
君のことぜんぶ言葉にする前にもう次の人と恋をはじめる
(むぎはんかちさん)
「君のことぜんぶ言葉にする」つもりだったんでしょうね。なかなかそうはいかないものです。
きっかけはたまたま蹴った白黒のボールが窓を割ったからです
(反時計さん)
「白黒のボール」と表現する理屈っぽさ。冷静さを装っている感じが妙に面白い作品です。
聞かれたら答える用の趣味がある 鞄の中から傘を取り出す
(大山田いぬふぐりさん)
傘を持ち歩くように、返答用の趣味を備える周到さ。無難にやりすごしたいときもありますよね。
唐突にじゃんけんをして貴方との距離がぱいなつぷると広がる
(水面叩さん)
じゃんけんして歩く遊びを模した短歌。ぐりこ、と戻るかもしれないし、戻らないかもしれない。
知らぬ人の目で窓の外見る娘12歳になる年がはじまる
(伊従あゆみさん)
いつのまにか大人に近づいていた、その気づき。「知らぬ人の目」という表現が印象的です。
終活を始める我を厭(いと)う妻先に逝くのは私だと言う
(与志朗さん)
胸に迫る作品です。死について話せる間柄も、残されるのは嫌だと言える関係性もすてきです。