川柳・俳句・短歌 はじめました!2:川柳・俳句・短歌コンテスト必勝ガイド


川柳公募の魅力
川柳公募の魅力は、なんといっても楽しいということでしょう。
たとえば、昨年の第27回サラリーマン川柳の入選句。
- うちの嫁 後ろ姿はフナッシー(段三っつ)
- 帰宅してうがい手洗い皿洗い(しゅうくりーむ)
単純に「面白い!」「私にもできそう」と思えますね。実際には奥の深い世界ですが、高額賞金を目指し、まずは一句ひねってみましょう。
川柳公募の4タイプ
川柳公募のタイプを4つに分類すると、以下のようになります。
まずは、文学としての川柳。
文学的川柳は、作者の内面を詠んだり、他者を詠んでもペーソスを感じさせる深い川柳。 「人間って面白いな」とは思っても、必ずしも爆笑できるとは限りません。
サラリーマン川柳的な川柳は、文学的川柳ほどは堅くはなく、シンプルに笑えて共感できるもの。
狂句的川柳は、雑誌やラジオなどによくある戯れ句。ダジャレ、言葉合わせだけの軽薄な句。
標語的川柳は 「挨拶しよう」といった常識的な句を求めるものです。
タイプの見分け方
どの川柳公募がどのタイプなのかを見分けるには、まず選者を見ます。
川柳の専門家が選者の場合は、戯れ句のような作品が選ばれることはないでしょう。
選者がはっきりしない場合は、過去の入選作品を見るのが一番です。
あとは雰囲気を読んで、大きな傾向をつかみましょう。
標語的川柳は、募集内容を見れば一目瞭然です。この場合は風刺やパロディはやりにくい。五七五の標語だと思いましょう。
文学的
笑えればいいという川柳ではなく、文芸としての深い川柳
サラ川的
狂句に近いものもあるが、ペーソスも感じさせる現代的川柳
狂句的
質の悪い笑い、ダジャレ、エログロナンセンスな川柳
標語的
川柳のもつ風刺性や意外性はなく、標語のような川柳
受賞者インタビュー2014 年度「オリックス マネー川柳」大賞受賞 まここしゃんさん
――川柳歴は何年ですか。
昨年9月からなので、4ヶ月ほどです。
――過去に何回ぐらい応募されましたか? 今まで入選されたことはありますか。
16 回応募しました。2回入選していずれも5000 円分の図書カードをいただきました。今回が3回目の入選です。
――川柳の魅力は?
字数やお題以外に難しい制限もなく、誰でも気軽に作れるところです。
――川柳を作るコツはありますか。
はじめたばかりなので、コツなどよくわからなくて教えてほしいくらいですが、最近の流行語などを盛り込むことなどを心がけています。
――今回の受賞の感想を。
大賞を取れるとは思っていませんでしたので、たいへんびっくりしています。ビギナーズラックかもしれませんが、とてもうれしいです。がんばってまた川柳を作って応募したいと思います。
俳句公募の魅力
俳句公募の魅力は、そのとっつきやすさと賞金でしょう。小学校の授業に取り入れられているくらい親しみやすいジャンルであるのに、高額賞金の公募も目白押しです。
最高額は、伊藤園お〜いお茶新俳句大賞と西東三鬼賞の賞金50万円。
五七五の17字で50万円だから、一文字約3万円かと下世話な計算をしてしまいそうです。
もちろん、それゆえ応募も多く、伊藤園の応募数は173万句。と言うとひるんでしまいそうですが、抽選ではありませんから、要はいい作品を作ればいいわけです。
季語と文語
俳句には季語を入れない無季俳句というものもありますが、有季定型を求めるものもあります。
季語には三つありますが、詳しくは右下の解説をご覧ください。
季語は膨大な数がありますから、『歳時記』を見るなどして、少しずつでも慣れるようにしましょう。
もう一つ、俳句を作るときにネックになるものに文語があります。
苦手な方は口語俳句でかまいませんが、「や」「かな」「けり」といった切れ字はそこで切れて詠嘆する効果があります。
また、「見せよう」を「見せん」にすれば1字節約できます。既存の作品をたくさん読むなどして、文語にも強くなっておきましょう。
有季定型
季節を表す季語が入り、五七五の定型の俳句。
自由律俳句
形式にこだわらない俳句。尾崎放哉の「咳をしても一人」が有名。
無季俳句
季語を入れない俳句。
雑詠
お題によらない自由吟。
題詠
お題にそって作句すること。
受賞者インタビュー第25 回伊藤園お~いお茶新俳句大賞 文部科学大臣賞受賞竹岡佐緒理さん
――俳句歴は何年ですか。
高校生の頃からですから、10年以上になります。
――俳句の魅力は?
短いけれど、詩になるところと、季語があるところです。
――俳句を作るコツはありますか。
声に出して読みやすいリズムになっているか、情景が浮かぶかどうかを心がけています。
――高校で教鞭を執られているそうですが、受賞に関するエピソードがあればお願いします。
勤務している高校で授賞式をしていただき、大変驚きましたが、うれしかったです。
――受賞作について一言。
自宅近くで見た夜空は、空気が澄んで満天の星がとてもきれいでした。私は夜景などが見えるロマンチックな場所でのプロポーズに憧れていて、このときの夜空は、伝えようと思っていなくても、プロポーズしてしまいそうなほどきれいだったので句にしました。
短歌は敷居が高い?
短歌というと、貴族のたしなみというイメージがあります。
こんな話があります。
ある貴族が藤の花を手に持って女をくどきます。すると女は 「それが裏葉の……」と言う。男はわけが分からず立ち去り、その話を父親にします。 父親は、「それは『後選集』の『春日さす藤の裏葉のうらとけて君し思はばわれも思はむ』 の一節だよ。誘われて帰ってくるなんって、このバカ」。貴族階級には恋の道具だったようです。
でも、文語を知らない人が短歌を学ぼうとして万葉集などをひもといてしまうと、やはり敷居が高い。
- 田子の浦ゆうち出でてみれば真白にそ富士の高嶺に雪は降りける 山部赤人
「ゆ」ってなんだよと思ってしまいますね(助詞ですね)。
明治時代に正岡子規が短歌を改革し、「使ってはいけない言葉や歌ってはいけない事柄なんてない。何を題材にしてもいいし、外来語も漢語も俗語もOK」としましたが、文語の壁というのはあります。でも、それも心配には及びません。
口語短歌ならいけそう
これを一変させたのが、俵万智、穂村弘など1980年代に出てきた歌人です。
文語の短歌では自分で作れるとは思えず、共感もしなかった人も、
- 砂浜のランチついに手つかずの卵サンドが気になっている(俵万智)
これなら作れそうな気がし、共感も覚えるということで、短歌は人気を回復しました。
短歌公募の中にはとてもハイレベルのものもありますが、初心者にもとっつきやすいものもあります。過去の入選作品を参考に、自分に向いたものから挑戦してみましょう。
※本記事は「公募ガイド2015年1月号」の記事を再掲載したものです。