ネーミング・ キャッチフレーズ 入選に導く:公募の分析と入選のヒント②


公募の分析と入選のヒント:キャッチフレーズ編
七五調はリズムはいいが、古くさい印象もある
ここでは、公募で選ばれたキャッチフレーズをなるべくたくさん挙げてみました。
採用されたキャッチフレーズを見ると、七五調が多いことに気づきます。確かに、五七五などで揃えるとリズムがよく、すんなりまとまります。語呂もいい。
しかし、七五調にすると標語やスローガン、演歌の歌詞のような古くさい印象も出ますから、何か新しいことをやろうという雰囲気の公募には向きません。
また、キャッチフレーズ公募の中には、募集要項の中に「キャッチフレーズ募集」とだけしか書かれていないものもあります。
これだとキーワードを出しにくいので、どんな団体なのか、どんな特徴があるのか、なるべくたくさんの情報を集めます。
ただし、たくさん集めるのが目的ではなく、集めた中からどれを選んで、どう料理するかが重要です。いい情報を集めても、詰めが甘いと秀作にはなりません。
最近のキャッチフレーズ公募採用作
自治体・団体
自治体や公的団体自体のキャッチフレーズ公募は、趣旨がはっきりしないことが多く、それだけに「夢・未来・創造」といった抽象的な言葉が目立つ。そうした言葉を強い言葉にできるかが入選のポイント。
- せたな町キャッチフレーズ
「輪になって つなぐ せたなの夢未来」 - 神栖市キャッチフレーズ
「かんどう みつけて すまいる かみす」 - 猪名川町町制60周年記念キャッチフレーズ
「このまちと、いつまでも。いながわ」 - 松阪市シンボルフレーズ
「神様も 途中下車する 松阪市」 - 新杵築市10周年記念キャッチフレーズ
「これまでを大切に、これからを創る」 - 新佐久市10周年記念事業キャッチフレーズ
「きらり佐久 夢 未来」 - JA大北キャッチコピー
「地域に愛される笑顔の輪」 - 日本理学療法士協会50周年企画キャッチフレーズ
「たくさんの『一歩』と歩んで50年」
大会・事業・運動
この手の公募は、大会や運動の趣旨がはっきりしているので、伝えたいことは汲み取りやすい。
しかし、それだけに似たような作品が多くなる傾向があるので、ちょっとした表現の違いが大きな差になる。
- 第76回国民体育大会 スローガン
「ときめいて人 かがやいて未来」 - 第75回国民体育大会 スローガン(鹿児島国体)
「熱い鼓動 風は南から」 - 第18回全国農業担い手サミットみやざき 大会テーマ
「語ろう未来を 受け継ごう今を!〜農業の無限の可能性を信じて〜」 - 平成27年度「男女共同参画週間」のキャッチフレーズ
「地域力×女性力=無限大の未来」 - 第30回全国健康福祉祭あきた大会の大会テーマ
「秋田からつながれ!つらなれ!長寿の輪」 - 「みどり香るまちづくり」企画キャッチフレーズ
「香りで立ち止まり 香りで振り返るそんな街が好き」 - 北方領土に関する標語・キャッチコピー
「四島返還 ひとりの力が 大きな力に」
観光・商品・その他
観光、商品・ブランドのPRといった目的がはっきりしているので、あとはどう伝えるかになる。公募では少ないが、企業の商品の場合は売り上げに直結するので、記憶に残る強い惹句が求められる。
- 三郷市観光キャッチフレーズ
「来て 見て 知って 楽しい『みさと』」 - 「花笑み・せんなんブランド」キャッチコピー
「咲き誇る 花と笑顔の 薫るまち」 - 大河ドラマ「真田丸」にかかるキャッチコピー
「九度山は真田のこころ生きる郷」 - 北アルプス日本海広域観光連携会議キャッチフレーズ
「新しい夢 新しい感動北アルプス日本海」 - JA常磐線湯本駅 副駅名称
「フラガールと湯けむりに出逢える町」 - 「労働安全衛生優良企業」のキャッチフレーズ
「働く人の安全と健康こそ企業の業績」
ネーミング・キャッチフレーズ なんでもQ&A
――ネーミングには著作権は発生しますか。商標ってなんですか。
ネーミングや題名、タイトルなどには著作権は発生しません。
商標は、簡単に言えば商品名やマークのことです。特許庁に出願して認可されれば登録されます。作っただけでは商標権は得られず、先に登録したほうが権利を持ちます(先願主義)。ちなみに「公募ガイド」も登録商標です。
――公募の作品には、あんまりひねってないものもありますが、なぜでしょうか。
作品の出来より、わかりやすさを優先したか、いい作品がなかったか、批判を恐れて無難なものになってしまったかだと思います。
ユニークな作品、凝った作品を選べば批判もあると思いますが、批判にひるまず、自信を持って「これが最良」と言える作品を選んでほしいですね。
――ネーミングやキャッチフレーズをコピーと言うのはなぜですか。
印刷物のことをコピースクリプト(複製文)と言います。それが省略されてコピーと言われるようになり、さらに広告の文章だけを指すようになって今日に至ります。ちなみに広告業界では、コピーとコピー機を混同しないように、コピー機のほうはゼロックスと言っていた時代もありました。
※本記事は「公募ガイド2015年11月号」の記事を再掲載したものです。