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戦時下の演劇人の葛藤!大佛次郎賞受賞作が明かす「喜劇王」の知られざる軌跡

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作文・エッセイ
ノンフィクション
報道発表
講演会会場の横浜市開港記念会館(プレスリリースより)

第51回大佛次郎賞の受賞作が発表された。日比野啓氏の『「喜劇」の誕生 評伝・曾我廼家五郎』が栄えある賞に輝き、文学界に新たな風を吹き込んでいる。本作は、日本の喜劇界に多大な影響を与えた曾我廼家五郎の生涯を丹念に描き出した評伝だ。

曾我廼家五郎は、明治から昭和初期にかけて「日本の喜劇王」として君臨した人物。歌舞伎や俄をもとに、日本に「喜劇」という概念を定着させた功績は計り知れない。しかし、その名は時代とともに忘れられつつある。なぜ彼の存在が薄れてしまったのか。日比野氏は膨大な資料を紐解き、その謎に迫る。

本書の特筆すべき点は、曾我廼家五郎の人生を当時の政治や社会情勢と絡めて描いていることだ。特に戦時中の演劇人としての葛藤に焦点を当て、文化と戦争の関係性を鋭く考察している。国策に協力しようとしながらも、当局から冷遇された曾我廼家五郎。その背景には、「近代」の捉え方をめぐる深い対立があったという。

日比野氏は受賞を記念した講演会で、「戦争協力できなかった演劇人―曾我廼家五郎と長谷川伸」と題して語る予定だ。戦後80年を迎える今、文学者の戦争責任については多くの議論がなされてきた。しかし、演劇人についてはあまり語られてこなかった。この講演会は、日本の文化史における重要な一面を照らし出す貴重な機会となるだろう。

講演会は2025年6月1日、横浜市開港記念会館にて開催される。チケットは900円で、チケットぴあや大佛次郎記念館窓口で購入可能だ。また、チケットを提示すれば大佛次郎記念館の特別展も観覧できるという特典付き。文学ファンにとっては見逃せないイベントとなりそうだ。

日本の喜劇史を紐解きながら、戦時下の芸術家たちの苦悩に迫る本作。文化と歴史の交差点に立つ曾我廼家五郎の姿を通じて、私たちは日本の近代化の光と影を垣間見ることができるだろう。日比野氏の鋭い洞察と丹念な資料調査が織りなす本書は、単なる評伝を超えた日本文化論として、幅広い読者の心に響くに違いない。

出典: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001234.000014302.html