あなたとよむ短歌 テーマ詠「熱」佳作 結果発表


それでは、佳作5首のご紹介です!
熱帯魚の名前みたいな流行り風邪引いてゆらゆら揺れる天井
(ゆめみさえさん)
たしかに、インフルエンザやヘルパンギーナと、ネオンテトラやコリドラスなどは、語感が似ていますね。そんなことを思いつくのも、風邪で他に何もできないからかもしれません。熱でゆらゆら見える天井は、水底から見上げた水面のよう。
ひとりきりギターに熱を注いでる私以外は恋をしている
(宮本七海さん)
ギターを抱える私と、誰かと抱きあう・そう願うような恋をする私以外。私については「注いでる」と気楽なイ抜き言葉を使い、私以外には「している」としっかりイ有り言葉を使う点も、自分と他者との壁を感じさせます。
保健室にすら入れぬ私にも出されたストーブきちんと熱い
(久方リンネさん)
ストーブが熱いのは当たり前のことです。けれどもあえて「きちんと熱い」とすることで、反対に「きちん」とできていない私【なんか】にも「きちんと熱い」ストーブを出してもらってしまった、という思いが現れています。登校が難しくなって、廊下まではこられて、動けなくなってしまったのでしょうか。辛いですね。でもきっと大丈夫です。きちんとしなくても。
情熱を燃やす場所など見つからずコンビニ弁当温めている
(乃木ひかりさん)
昼か夜か、自宅か自宅外かはわかりません。ただ、外食や自炊ではなくコンビニ弁当を温めている描写は、時間や体力・気力を節約せざるを得ない、忙しそうな印象を受けます。仕事は繁忙で、けれども情熱を「燃やす場所」ではないのかもしれません。熱くならない情熱と、温かくなるコンビニ弁当の対比。
護摩の火にスマホをかざし天空の岩窟寺に心清めて
(そらさん)
祈りの場も観光地になりがちな昨今、護摩のお焚き上げの様子を撮影する人もいるでしょう。けれども、この一首はどうも違う気がします。煩悩を焼くといわれる護摩の火にスマホを向けて、心を清めようとしている様子。もはやスマホは現代人の脳の一部です。スマホにも護摩が効くといいですね。