<アイデア発想と事業計画書作り> 「獲りにいく」学生ビジコン 就活のトレンド!


ビジネスを考え、文書やプレゼンでの表現によってその新規性・実現性・市場性を競う「ビジネスプランコンテスト」。高校生や大学生でも、賞金狙いや就活での“ガクチカ”のネタづくりで応募する人が増えています。
学生ビジコンで「選ばれる」プランの作り方とは? この記事では、主に大学生が“ビジネスプランコンテスト”にエントリーする際の、アイデアの探し方から事業計画書づくりまでを一から解説します。説明に沿って思考を進めていけば、ビジネスプランの大枠が完成するはず。
出てみたいけれど、何のプランも浮かんでいないあなた、下心でビジコンに挑戦するあなた、注目です! 鍵はやっぱり、思いの強さ…!?
アイデアの種の探し方
課題と出会おう
学生の皆さんは、所属する会社の中で新しい事業を起こしたり、自ら何らかの志をもって起業したりする機会は少ないと思います。まずはアイデアの種となる疑問や怒りを一旦整理してみましょう。
方法①自身の生活の身の回りから「不(=不便、不快、不安、不満)」を見つける
方法②身近な人にインタビューしてみる
実際に、今当たり前となっているビジネスモデルや、これまで発表されているビジネスプランを見てみると…こんな課題から始まったようです。
| 課題 | 解決策 | 事例 | |
| 事例① | ・寿司を食べたいが高い(顧客側)。 ・注文を受けるのに時間がかかる(店舗側)。 | ベルトコンベアと同じ構造を活用して、多数の客の注文を低コストで効率的にさばく。 | 日本初の回転寿司・元祖廻る元禄寿司 |
| 事例② | ・獲れる時期に偏りがあるために値段がつかず(=漁業者の稼ぎにならず)市場に流通していない「未利用魚」が魚全体の3割ある | 未利用魚を漁業者から仕入れて、美味しい加工品にして高値で販売する。 | 未利用魚の加工販売・新廻魚(前回インタビューのお二人/宮崎・学生ビジネスプランコンテスト グランプリ) |
| 事例③ | ・落とし物をしても、めんどくさくて探すのを諦めたり電話を怠ったりする(落とし主側)。 ・落とし物を保管していても落とし主が見つからない(管理者側)。 | 各施設(管理者側)が同一のプラットフォームに登録・管理することで、落とし主がスマホ一台で落とし物を検索したりAIによるお知らせが受け取れたりする。 | 落とし物マッチングサービスatta(学生ベンチャーコンテスト2025 Powered by RIMIX グランプリ) |
こんなこと考えつかないと思いましたか? それとも「私でも考え付くような課題だけど、まさかこれがビジネスになるなんて」と思いましたか? 現在、世の中の流れとして「社会課題こそが新たな価値創造の起点になる」という考え方が広がっています。学生ビジコンでも同じで、審査員は、学生ならではの視点で発見した課題を高く評価することが多いです。
といっても、顧客に直に関わり、利益を生み出すのは解決策の部分なので「どのように」にこだわり、魅力的なビジネスにしていきましょう。
解決策ってどう考える?
実際のところ、ビジネスの要となる解決策の部分は、1から緻密に計算されたものではなく、偶然の出会いによる思いつきであることが多いようです。しかし、ビジネスが次々と生まれている現代では、課題に対して皆さんがぱっと思い浮かぶ解決策は、すでに存在していたり、他の新たな課題を生んだりする可能性があります。先ほどの事例3点も、最初の思いつきから試行錯誤が繰り返されています。以下2点を参考に、解決策を考えましょう。
・二つ以上の要素を掛け合わせる<例>運動したいけどまとまった時間が取れないという課題…スキマ時間×運動×近所「chocoZAP」、SNSで文字以外の表現がしたいという課題…写真×SNS「Instagram」
→既存のアイデアがある場合でも、特定層に特化させたり、違う切り口を加えることで新たな価値が生まれます
・同じ課題にアプローチしているビジネス(競合)の特徴を書き出し、あえて競合が踏み込んでいないテリトリー(顧客、販売場所、販売方法)に狙いを定める<例>高級料理をカウンター式の立ち食い形式にすることで低価格を実現し、新たに若年層や一人客を取り入れた「いきなりステーキ」
→「ポジショニングマップ」を参考にしてみてください
また、そもそも何一つ思い浮かばない!という方は
・課題を抱えている人に直接インタビューする
・「10分以内に30個のアイデアを出す」「スマホを使わないアイデアだけを考える」などの制約を設けてアイデアを出す
・「1億円を使ってこの課題を解決するには?」とスケールを大きくして考える
といった、少し強引な方法もおすすめです。
また、学生ビジコンでは、学生が事業を立ち上げるという金銭的な実現性は一旦置いておいて、目新しさと社会性があるプランが選ばれやすい傾向にあります(結果、ビジネスとして実現に至っているプランも多数あります)。SDGsの具体的な項目をひとつ抽出して課題や解決策に応用し、グランプリをかっさらう戦法も大アリ!
事業計画書って何?それぞれの項目を解説&一緒に書いてみよう!
課題を見つけたら、次は事業計画書に落とし込んでいきましょう。
事業計画書とは、実際のビジネスの現場で使われているものです。分かりやすくいうと、起業する際、銀行や投資家などに提出して、融資・出資を決定する判断材料のひとつにしてもらう、とっても大切な書類です。事業の内容や戦略、収益見込みを明確にし、まだ目の前にないビジネスを誰でも理解できるようにします。
事業計画書を書いていくうちに、強みや課題が明確になっていく場合が多くあるんです!
ビジコンの提出資料として、以下のような事業計画書が使用されています。
一般財団法人学生サポートセンター主催 学生ビジネスプランコンテスト 申込書(事業計画書)
多くのコンテストで、大体同じ形式がとられています。詳しく項目を見ていきましょう。
【基本情報】
・代表者名、他メンバーの氏名、連絡先、所属
・プランの分野(IT分野、サービス、流通、物販、もの作り、情報提供 等)
【ビジネスプラン概要】
・プラン名…誰でもわかるプラン名 →専門性の高い言葉はひらがなにしたり短くしたりして言い換えると、特に書類段階では記憶に残りやすい
・目的・概要…提案する事業&なぜそれが必要とされるのか →事業を一文で表すとなにか?を意識。なぜの部分では「課題=現状⇔理想」。課題はなにか、現状はどうか、自分が理想とする未来はどんなものかを説明すると、必要性の説得力がUP!
・新規性・独創性…従来のものと比較したときの事業の目新しさ・独創性・優位性はなにか →先述の「ポジショニングマップ」などの環境分析を活用してイメージを明確に。図を入れ込んでもOK!
・実現性…商品・技術・サービス等をどのように生産・提供するのか。そのために必要な人材、施設、原材料は何か、それらをどうやって確保するか
・市場性(成長性)…商品・サービスを購入するのはどのような人、組織、地域で、どのくらいの数がいて今後どのように変化していくか
・マーケティング…販売ターゲット、販売価格、販売方法、販売促進方法、PR方法
・社会性…この事業が行われることによる社会的な利益、効果
・売上・利益計画…今後の利益はどのように推移していくか →無理やりにでも利益が出るように記載(この段階では)。1年目はマイナスからのスタートでもOK!
・資金計画…事業展開するために必要な資金とその調達方法 →設備資金と運転資金それぞれをモレなく記載する
参考元:一般財団法人学生サポートセンター主催 学生ビジネスプランコンテスト
このように、世の中のビジコンではそれぞれ形式が用意されており、その項目に沿って埋めていくことで基本的には大枠が完成するようになっています。ですが、学生の皆さんがビジコンを攻略するうえで、あえて人を使うことが“手”なんです。
キャンパスにはヒントが転がっている!
先ほどご紹介した事業計画書は、エントリーするうえでは必須の提出物ではありますが、見切り発車で書き始めるよりも効率的に進められる(かもしれない?)方法もあります。
キャリアセンターやゼミの教授に相談しよう
例えば、東京大学の起業家育成センターや慶應義塾大学SFC研究所では、学生向けにビジネスプランの詳細なテンプレートを用意しており、在学生であれば無料で利用できるようです。皆さんが通う学校にもそのような窓口があるかもしれません。キャリアセンター等に問い合わせてみましょう。ググることでしか知れなかった会計の知識も教えてもらえるかも! ゼミの教授や、所属学部の教授に相談し、会話のきっかけにするのも有効です。ビジコンに出ること自体をアピール!
また、「まずは簡単に整理したい」という学生には、1ページで完結するビジネスモデルキャンバスが便利です。筆者は実際に、このフォーマットを教授とのおしゃべりから知りました。

このように、顧客セグメント(顧客層)・提供価値・収益の流れなど、事業の要素を9つのブロックに分けて記入するフォーマットで、ビジネスプランがA4用紙1枚にまとまります。ひと目で全体像を把握しやすいのがポイント!
miroや、Lucidsparkが提供しているものだとオンラインで共同編集が可能なので、誰かに意見を求める際や、前回インタビューに答えてくれたお二人のように、チームで議論する際にも役立ちます。
そして、ビジネスプランの作成段階が終わり、検証をする際にも、周りの人を頼ってみましょう。
声を集めて検証しよう
ビジコンで受賞するプランの共通点として「実証している」もしくは「実際の声がある」点があります。自分が発見した困りごと、他に同じ困りごとを持っている人はどこにどのくらいいるんだろう?自分が思いついたこの商品、実際に作ってみたはいいけど、ターゲットは欲しがってくれるだろうか? ほんの少しでいいので、リアルな声を織り交ぜてみると、一気に実現性が増します。
ここでの「実現性」とは、金銭的な実現性というよりは、ターゲットからのニーズがあるかどうかの実現性です。あなたが発見した課題の先に、同じ不便さを抱えている人が多くいて、その人達はあなたのビジネスプランを求めている、ということをデータとして証明しましょう。
審査員もひとりの人間なので、心掴まれること間違いなし!
選ばれるプランは、やっぱり思いの強さ
課題を見つけて、事業計画書に落とし込んでいると、いやというほど現実に向き合わされる場合があります。このプランはどこにでもあるのではないかと思えてきたり、正しい解決法ではない気がしてきたりします。そんな時に、課題はなんだったか立ち返る気力は、思いの強さからくるのではないかと思います。前回インタビューした「宮崎・学生ビジネスプランコンテスト」グランプリのお二人は、実は、決勝の一週間前に大幅にプランを変えたそうです。
思いの強さがあるから話を聞きに行ったり実証をしたりする。この試行錯誤が、選ばれるプランへの一番の近道なのです。
今回は、アイデアの探し方と事業計画書作成について解説しました。それぞれのステップで、学びと成長の機会があります。ぜひ、あなたの「思い」をビジネスプランにぶつけてみませんか?