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第16回W選考委員版「小説でもどうぞ」 森絵都さんインタビュー&応募要項

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小説でもどうぞ
                                       撮影:冨永智子

第16回W選考委員版「小説でもどうぞ」の募集がスタート!
ゲスト選考委員は、直木賞作家の森絵都さんです。

また、季刊公募ガイド冬号(2026/1/8発売)では、森絵都さんのインタビューを掲載しますが、ここではこのインタビューの別バージョンをお送りします。応募前にぜひとも熟読ください。作家志望者必読の内容になっています。

レギュラー選考委員
高橋源一郎

1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。 小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。

<第16回>
森絵都さん

1968年東京生まれ。講談社児童文学賞新人賞を受賞してデビュー。2006年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞受賞。ほか『カラフル』『みかづき』など著書多数。

第16回のゲスト選考委員は、直木賞作家の森絵都さん。
新刊『デモクラシーのいろは』をもとに、
小説の書き方、心構えについて伺った。
季刊公募ガイドの巻頭インタビューの別バージョンです!


木を育てるとして、

資料は肥料であって種ではない

―― 『デモクラシーのいろは』で民主主義をテーマに選んだのは?
 戦後の占領化の日本に何があったんだろうと興味を持ちまして、それまで軍国主義だった日本人が、民主主義と出会ったことを軸に人間のドラマを作れないかなと考えたのが始まりでした。
―― 史料を読むのにどれくらいの時間がかかりましたか。
 下調べに2年間かかりました。テーマを決めるまでに資料を100冊ぐらい読み、民主主義を軸にしようと決めてから執筆までにまた100冊ぐらい読みました。
―― やはりそれぐらいは調べないと?
 物語の材料を少しでも増やしておきたいというのがあります。お料理と同じで、材料がたくさんあればあるほど味が豊かになり、味の選択肢も増えていきます。
―― 事実という点をつないでいってストーリーにする感じですか。
 一本の大きな木を育てるとして、資料はあくまでも肥料であって種ではないんですよね。肥料のように種に栄養を与えてくれるのが資料であると考えています。
―― ストーリーそのものは最初にあった?
 物語には頑丈な舞台が必要なので、テーマが決まった段階で、ある程度の設定は作りました。
―― 民主主義を学ぶ四人の女性が登場しますが、人物像はどのように作り込んでいくのですか。
 彼女たち一人一人がどのような戦争を体験してきたのかがとても大事だと思ったので、まずはそのバックグラウンドーーどこで生まれて、どんな家族構成で、どんな戦争を体験したのかを一人ずつ作り上げていきました。そのうえで、彼女たちの人となりを作り込んでいきました。
―― やはり、キャラクターがかぶらないようにする?
 小説としての面白さを求めると、やはりそれぞれに違った個性やひと癖のようなものがほしくなります。
―― 人物の履歴も考えますか。
 毎回ではありませんが、書き始まる前の段階でかなり履歴を作り込みます。もちろん、書いている間にも変わっていったりもするんですが。今回は履歴を作るのに時間がかかった分、小説を書き始めた段階ですでに人物に愛着が生まれていたんですよね。
―― 途中で人物の性格等が変わることはありますか。
 私にとって美央子は元華族で、凛ととしていて、でもどこかつかみどころのないところがあったんですが、美央子が急にシャンパンをグビグビ始めるシーンがあり、そこで「この子、こういう子だったんだ」と、それまでと違った角度から美央子が見えてきた感じがしたんですよね。
―― もともとの設定では酒豪ではなかったんですか。
 最初のうちはあんな毒舌キャラとも思わないで書いていました。書くほどに違った面が見えてくるような感触がありました。



3行で書けることに

10行使わない

―― 次の場面に移る前に、ときどき、「いったい誰がまさかの結末を予想できただろうか」のような先が読みたくなる仕掛けがされていますね。
 私は割と自然にそういうことをやりがちというか、読者をどんどん牽引しながら進めていきたいという気持ちがあります。
―― 小説を書くときに心がけていることは?
 一つ大事にしているのは、文章の簡潔さです。冗長な文章にはならないように、3行で書けることに10行使わないということはやっています。
―― 森絵都さんの文章はどこかユーモアがあります。
 シリアスなシーンが続くとくつろぎが欲しくなり、どこかでゆるめたくなるんです。シリアスさにやられてしまうところがあり、私自身がユーモアに救われたりしながら書いています。
――「民主主義星人」という言葉がでてきてちょっと笑いました。
 連載していた「野性時代」の編集部でも、この時代に「○○星人」という言い方はあったかなという話になって、調べていただいたらあったんですよね。
―― あくまでもイメージですが、どこか朝ドラを彷彿とさせます。
 けっこうそう言ってくださる方が多いんですよね(笑)。「カムカムエヴリバディ」とは執筆時期がかぶっていて、ドラマにも終戦直後が出てきますので、毎回楽しみに観ていました。
―― プロットは書き始める前にきっちり決めるのですか。
 連載のときはかなり筋道を立てて、大きなところで辻褄が合わなくなったりしないように事前に構成します。書いているうちに軌道を間違えるんですよね。こっちじゃないところに行ってしまうことが時に起こります。でも、連載だと直せないじゃないですか。間違えた道を行き続けるしかない。それが恐ろしいので、設定とか構成は事前によく考え、大きな道筋は立てるようにしています。
―― “大きな”ということは、すべて決めるわけでもないのですか。
『デモクラシーのいろは』でも、当初、美央子の日記までは考えていたのですが、その先は何も考えてなかったのです。あの日記を読むとそれまで秘められていた事実がわかりますが、「じゃあ、それから先はどうなるの?」という落としどころは何も決めていなかったので、なんかスリリングでしたね。
―― ミステリーの謎解きのようでした。
 あの日記は、最初の段階から計画していないと成立しないので、何月何日に何があったとか、そういうカレンダーを作って、あとで照らし合わせたときに辻褄が合わなくならないようにしました。



とにかく丁寧に書いて

何回も何回も書き直す

―― 短編は書けるが、長編は書けないという人にアドバイスを!
 私の場合、物語が浮かんだ瞬間から、物語のスケール感はだいたい決まっていて、この物語は30枚ぐらいかな、この物語は500枚ぐらいいっちゃうかなとか想定します。その小説世界のスケール感が大きければ枚数も必要になりますし、そこじゃないですかね。長編が書けないとしたら、想定している小説のスケール感が長編向きではないということかもしれません。物語の設定自体を膨らませると自然と長編になっていくのかもしれないですね。
―― 第一稿が書き上がってからどれくらい直しますか。
 一気に最後まで書いて、それから直すのではなく、今日8枚書いたとするじゃないですか。そうしたら明日はその8枚を書き直すところから始めていきます。とにかく丁寧に書くことですね。丁寧に書いて何回も何回も書き直します。
―― 果てしない作業です。
 何度も同じところを書き直していると、次が書きたくなるんですよ。新しい風景が見たくなるというか、いい加減、先に進みたくなります。そうやって最後まで書き上げ、それからまた読み返して直します。
―― 直しだけで一日が終わってしまったり?
 どうしてもここのセリフが決まらないとかあるんですよね。何回書き直してもしっくりこない。それを延々やって、単行本化するときもやって、文庫化するときにもやっぱり嫌だなと思ってまた直したり。
―― これまで数々の文学賞の選考委員をされています。
 選考するのは、やはり難しいですね。私が関わっている選考会は毎回激論になります。でも、好みについては意見が分かれることがありますが、文章が練られている、丁寧に書かれているということは誰が見てもわかることだから、誰の意見もそこだけは一致します。
―― いい作品とはどういう作品ですか。
 新しさを感じさせてくれる作品ですね。
―― 文学賞の選評にはうまいだけではだめと書かれています。
 一番いやがられるのは、どこかで読んだことがある小説ですね。
―― 最後に『デモクラシーのいろは』を読む方にメッセージを!
 まず、読んで楽しんでほしいですね。そのあと、自分にとっての民主主義って何かと考えてもらえたらうれしいですね。




森絵都さん 新刊
『デモクラシーのいろは』
(KADOKAWA・2310円)

GHQが始めた民主主義のレッスン。日系2世のリュウのもと、個性豊かな4人の女性が風変わりな授業を受ける。


W選考委員版 第15回「小説でもどうぞ」の結果発表と選考会の裏側は、季刊公募ガイド2026冬号(2026/1/8発売)または2026/1/8更新のこちらをご覧ください。
応募要項
課 題

■第16回 [ 悲劇 ]

 映画や演劇には「悲劇」がつきものですが、日常生活でだって、たくさん「悲劇」が起こります。中には、「もしかしたら、あれは悲劇だったの?」なんてものもあるかもしれませんね。どんな悲劇があるのかな?
(高橋源一郎)

締 切

■第16回 [ 悲劇 ] 
2026/2/9(23:59)

応募規定

400字詰原稿用紙の換算枚数本文5枚厳守(数行の増減は可)。
データ原稿はA4判40字×30行、縦書きの設定を推奨します。
(テキストデータは横書きでかまいません)
枚数が規定どおりか調べたいなら便宜的に20字×20行の設定にし、最終ページを見れば5枚ちょうどかどうかがわかります。

応募方法

WEB応募に限ります。
応募専用ページにアクセスし、作品をアップロード。
(ファイル名は「第16回_作品名_作者名」とし、ファイル名に左記以外の記号類、および全角は使用不可)
作品の1行目にタイトル、2行目に氏名(ペンネームを使うときはペンネーム)、3行目を空けて4行目から本文をお書きください。
本文以外の字数は規定枚数(字数)にカウントしません。

作品にはノンブル(ページ数)をふってください。
応募点数3編以内。作品の返却は不可。

Wordで書かれる方は、40字×30行を推奨します。
ご自分で設定してもかまいませんが、こちらからもフォーマットがダウンロードできます。

応募条件

作品は未発表オリジナル作品に限ります。
入賞作品の著作権は公募ガイド社に帰属します。
AIを使用して書いた作品はご遠慮ください。
入選作品は趣旨を変えない範囲で加筆修正することがあります。
応募者には公募ガイド社から公募やイベントに関する情報をお知らせすることがあります。

発 表

第16回・2026/4/9、季刊公募ガイド春誌上

最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載
※最優秀賞が複数あった場合は按分とします。
※発表月の翌月初旬頃に記念品を発送いたします。
配送の遅れ等により時期が前後する場合がございます。

お問い合わせ先

ten@koubo.co.jp


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「小説でもどうぞ」の応募作品を添削します。
受講料 5,500円
https://school.koubo.co.jp/news/information/entry-8069/