あなたとよむ短歌 テーマ詠「新しさ」佳作・入選 結果発表


それでは、佳作5首のご紹介です!
うまいとかまずいとかではなく圧倒的に他人の味のきんぴら
(柿﨑薫さん)
実は優秀賞入りと迷いに迷った一首です。「他人の味」という表現が秀逸。あまりに新しい、食べたことのない味のきんぴらだったのでしょう。あなたと私は、違う人生を生きてきた他人なんだ……と感じさせる味のインパクトが伝わってきます。
親子丼ばっか食べてる今出来た細胞たぶんひよこのかた
(嘉賀レキさん)
食べて、生きて、細胞が死んで、細胞が生まれて。私たちの体は目まぐるしく変化してます。もし親子丼を食べてひよこの形の細胞ができるなら、かわいい自分になれそうですね。
開けぬまま期限が切れた缶詰のツナが初めて光を知るとき
(小町川えりさん)
缶詰の内部からの視点。真っ暗な空間の端から、大きな月のように光が差し込んできて、それは美しいでしょうね。ただし、期限が切れてしまった場合、即処分されてしまうのかも。
新品のタオルおろせば思春期のようにすべてを拒否するかたさ
(はっちさん)
見事な比喩です。水を弾き、肌馴染みも悪く、折りぐせが付いていてタオル掛けにも真っ直ぐかからないタオルを思春期に準えたもの。タオルにもよりますが、ここまでカタい時期はいっときなはず。
両足で100回できたリフティング 今の僕は大きめのハマチ
(池田達輝さん)
「できた」と過去形であることから、「かつてはできた」という意味だと読み取れます。いまリフティングすると、大きめのハマチがぴちぴちしている感じになるんでしょうね。ハマチでも大きめで活きがいいなら、結構なことじゃないですか。
つづいて、入選10首のご紹介です!
カレンダーの筒を伸ばせば新年の香りきらきらただようばかり
(石川真琴さん)
何度でも出会うのだろうその度に変わるのだろうたまごっちたち
(てとさん)
愛犬の気持ちで変わる散歩道行ってみようか新しい道
(まなみさん)
今はまだつぶれていないシャンプーのボトル これからつぶれるボトル
(竜泉寺成田さん)
スニーカーの白さも今のうちだけで僕と一緒にだんだん汚れる
(泰源さん)
新しい家族が増える瞬間に地球で最も孤独なわたし
(白鳥さん)
約束の10分前にきみが来る下ろした靴のあかるい硬さ
(嘉賀レキさん)
流行は突然に来る3歳のペンパイナッポーアッポーペン
(飯島一真さん)
ポテサラに加えた辛子の一匙は子育て終了間近のサイン
(坂本真衣子さん)
ハネムーン用に買ったスーツケース傷つくことが確約されて
(びすけさん)