【余韻のある文章を目指す】エッセイの完成度を高めるには、焦点を絞る&テーマは直接的に書かない!


素材としての文章をエッセイに仕立てる
いない猫のことを書いても仕方ない
下記の第1稿は、ある講座で受講者が実際に書いたエッセイ。このうちの問題ある箇所を削ったものが第2稿。さらにエッセイとしての問題を踏まえて書き直したものが第3稿だ。
第1稿の添削の説明については、第2稿の左に記した。
大きな問題点を2つ挙げると、まず、冒頭で「猫を飼っている」と書いているが、1匹は実家にいて、もう1匹も夏場は東京にいない。つまり、どんな猫なのだろう、この猫にどんなふうに幸せを感じるのだろうと思って読むと、なんとその猫はいない。これだと話の大前提が崩れてしまう。
ハルという猫は実家にいて今は東京にはいないのだから、この猫はもういないことにして、カブキという猫1匹に絞って書いたほうがいい。これはウソとは根本的に違う。焦点を絞ったことで、画角がしぼられ、1匹の猫が外に出たということにすぎない。
もう1つの問題は、猫に関する説明と、「幸せを感じる」「悩んでいることがばかばかしくなる」のような直接的な心情が書かれていること。説明すれば頭では理解できるが、心には響いてこないから、この書き方はおすすめしない。
出来事を書いて、追体験させる
第2稿はカブキという猫の話だけを書き抜いたものだが、当然ながら行数が減ってしまう。
それだけでなく、第2稿のように削ってみると、ここに書かれてあることはすべて頭で書いたものということがわかる。
頭で書く。原稿を書いている今現在の立場から、想像だけで書いているということ。これだと、読み手も猫とじゃれているかのような気分にはならない。
これを解消する方法は、実際にあった具体的な出来事に絞り、その現場に立ち返って書くこと。あなた自身の目を働かせて、場面を立ち上げること。
その際、書くのは出来事が中心で、テーマ(今回なら「なんでもない日常が幸せ」)については直接的には書かないこと。
これは読み手が読みとるもので、それを書いてしまうことは、読み手の楽しみを奪うことにもなるし、最悪の場合、押しつけになって余韻が失われる。
原稿制作の流れ
1.アイデア出し
まず「何か書くか」を決める。猫について書きたいなら、猫から連想されることを箇条書きにし、それらに肉付けする。次ページの第1稿がこの草稿。
2.テーマを絞る
次に「猫」の何について書くか、テーマを絞り込んでいく。次ページの第1稿では「なんでもない日常を幸せにしてくれる」とした。これはOK 。
3.実体験を書く
実体験を書く。理由は、テーマの信憑性を裏づけられるのは、アマチュアの場合、実体験しかないから。第1稿ではこれがうまく書けていなかった。
4.バランスと展開を見る
次にバランスと展開を見る。第1稿は第2段落が書きすぎており、かつ、似たような内容が並んでいるだけで、起承転結的な展開はなかった。
5.最終確認
文字校正を含め、最終チェックを行う。説明が不足しているところは足したり、インパクトのある導入部を加えたり。また、むだがあれば削る。



※本記事は2018年9月号に掲載した記事を再掲載したものです。