つくり続ける人たちの理由 VOL.4 国外から公募に挑み続けることで見えたもの
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大切な人たちのこと。
渡豪する前から創作はしていましたが、2006年に夫婦で渡豪し、子育て期の中断を経て2018年より公募への応募を再開しました。普段は主に作文などに挑戦しています。
オーストラリアにもコンテストはたくさんあるのですが、私は英語がそこまで堪能ではなく、日常会話と執筆はやはり違いますから、もっぱら日本が主戦場です。
海外で暮らしているからこそ、家族のことや日本のことを書きたくなりますし、今までとは違った目線から書けるのかなと思いますね。遠くから見ると、祖国はすごく美しく見えるんです。創作していると自分の中で感謝の気持ちが生まれて、感情が素直になります。あと、親が身近にいると、ついケンカをしてしまうのですが、離れていると愛おしいものに変わるというか。日本にいたら家族のことは書けなかったかもしれません。
「第31回 お父さんへの作文コンクール」の賞状。
いえ、むしろ日本にいて日本語に埋もれているよりも、言葉と向き合う時間が濃密な気がします。日本だと新聞や雑誌をサッと読むだけかもしれないけれど、今の私は気軽に日本語の本が手に入るわけではないので、1冊入手したら何度も繰り返し読み、文章を書き写すくらい日本語と向き合う時間があります。日本にいたときよりも、日本語能力が上がっていると感じますね(笑)。
応募については、海外からということで制限があったり、特にここ何年かはパンデミックで飛行機が飛ばなくなり郵送できなくなるなど、応募したくてもできなかったことはあります。
小学生の頃、アイドルに手紙を出したら返事をもらえたんです。自分の思いを手紙で伝えることができるとわかり、それがうれしくて。本を読めば感想文を作家の先生に送り、テレビを見ればタレントさんに手紙を送って、届いた返事に喜んでいる子どもでした。
大学図書館に勤めていたとき、人に情報を提供することにやりがいを感じていたんです。それ以来、誰かの考えるヒントや参考になったらいいなと思って、新聞や雑誌に投稿するようになりました。子どもの頃のうれしかった気持ちが、仕事や投稿という形で続いたのだと思います。
その後、公募にも挑戦し、初の受賞作は、2001年に白亜書房から発刊された「第1回親と子のほのぼのエピソード大賞・入賞作品集『おもいやり』」という本に収められています。これは公募ガイドを見て応募しました。
両親とほぼ毎日顔を合わせていたときは「常に親は元気で近くにいるもの」とどこかで思っていましたが、渡豪後、コンテストの授賞式に出席するため帰省したときに、いつも元気な両親が妙に小さく見えて、不安や心細さを口にするようにもなりました。このまま世の中から消えてしまうような気がして、「公募を通して両親を世に出してあげたい」と思ったんです。
海外で出産し、慣れない育児に疲弊しているときに、母の言っていた言葉をふと思い出すと、いいことを言っているんです(笑)。これを作文に書いたら、読んだ方も参考になるのではという思いがありました。
有名人ではないけれど誰かに伝えたい。こんな人がいるんだよ、知ってあげて、と。私の場合、それが両親や友人なのだと思います。
気に入った文章や執筆のポイント、落選の原因を分析してまとめた
ノート。表紙は14歳の娘さん作。
好きなところは、学校の課題と違って、自分ができそうなことを自分がやりたい時にトライできること。これなら書けるかもという公募を見つけたときは、天からチャンスが舞い降りてきた!と思ってうれしくなります。あとは、締切までに仕上げる緊張感や、没頭する時間に充実感があるので、公募は自分に合っているんだと思います。
公募を続けていると、「入選したい」、「うまく書きたい」と思うあまり、筆が進まないことがあります。楽しく書くという初心を忘れ、不遜さが言葉の端々にあらわれてしまうんです。そういう文章は読む人にはわかってしまいますよね。
落選して落ち込んだときはたくさん本を読んでいます。たとえば、相田みつをさんの言葉は、自分を大切に、今できることを一生懸命やろうという気持ちにしてくれて、いつ読んでも心に響いてきます。また、イチロー選手の本には10本のファウルから1本のヒットが生まれると書いてあって、応募し続けることの意味を再認識できます。
私にとって、言葉を紡いでいく創作活動で心のよりどころにするのは、言葉の持つ力なんです。
過去のできごとが現在につながるのが、公募ならではの醍醐味だと思いますね。
日本にいるときに買って読んでいた公募ガイドとも、今、取材という形でつながりましたし、子どもの頃に両親がしてくれた話を作文にして応募したら賞をいただいたこともあります。特に、2019年、「いじめ・自殺防止」作文コンテストで佳作を受賞し、表彰式で松本零士先生から賞状をいただいたときは天にも昇る心地でした。子どもの頃から銀河鉄道999の大ファンだった私は、書くことを続けてきてよかった、応募してよかったと心から思いました。
写真提供:NPO法人「再チャレンジ東京・いじめ自殺防止国民運動本部」
「2018年度「いじめ・自殺防止」作文コンクール」の表彰式。
漫画家・松本零士先生から賞状を授与された。
ライター。最近ハマッているのはロコなスーパー。旅先で地元のスーパーの看板を見ると入らずにいられません。
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ビギナーさんも、熟練者さんも大歓迎。
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