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「小説の取扱説明書」~その59 本当の推敲 文章の推敲PART1

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作文・エッセイ
小説の取説

公募ガイドのキャラクター・ヨルモが小説の書き方やコツをアドバイスします。ショートショートから長編小説まで、小説の執筆に必要な情報が満載の連載企画です。

第59回のテーマは、「本当の推敲 文章の推敲PART1」です。

表現のよしあしをチェックしよう

本当の推敲の最後は、いわゆる校正・校閲的なチェックです。

これも大別すると、確認することは「表現」「文章」「文字」の三つがあります。

では、まずは「表現のチェック」からざっと挙げ、箇条書きにしていきます。


●説明不足はないか

5W1Hといいますが、あなたが書いた場面の基本的な設定、つまり、「出来事があった時間は?」「場所は?」「登場人物は?」「何があった?」「なぜ起きた?」といったことが抜けていないかを確認しましょう。

すべて網羅されていなくてもいいですが、抜けていたら話が成り立たないような大前提は書き洩らさないように!

また、季節感もわかると情景をイメージしやすいです。


●説明で終わっていないか

上記の説明は必要な説明、物語のアウトラインですが、ここで言う説明は、本来は描写すべきところを説明で済ませていないかということです。

たとえば、〈彼女に振られて悲しかった。〉の「悲しかった」は内面の説明であって、描写とは言えません。

では、どうしたら描写になるかというと、振られた現状をありのままに写生することで、「どう悲しいのか」を想像させることです。「悲しい」と書くのではなく、「悲しさ」を表現するのですね。


●読者に伝わるか

〈花が咲いていた。〉と書けば、意味するところはだいたいわかります。しかし、抽象的です。

では、どうするか。〈赤いバラが咲いていた。〉と書けば、絵が浮かんできます。そう書けるようになるには、あなた自身が頭に絵を描き、それを写すことです。

ただ、〈ソメイヨシノの木が三十五本あり、ある木は七分咲き、ある木は五分咲きで、それぞれ風に揺れていた。〉のように詳しく書けばいいというものではありません。

文章が持つ情報は、あるラインを超えると想像力が刺激されず、返ってわかりにくくなります。加減をしましょう。

もう一つ、単純に写生しただけでは伝達効果が悪いという場合があり、そういうときは比喩や擬音を使ってみましょう。

〈何本かの電線に鳥が留まっていた。〉でもいいですが、この情景を何かに見立てて、

〈五線譜に書かれた音符のように電線に鳩が留まっていた。〉

と表現してみる。

やりすぎは禁物ですが、ありありと状況を伝えたいときには比喩や擬音を使うことも考えてみましょう。


●セリフ

いきいきと、本当に人間の言葉でセリフが書けているかチェックしましょう。

説明ゼリフや長すぎるセリフは再考してください。

それ以前に、セリフにする必要があったかも考えましょう。

同時に、誰が言ったセリフかわかるかを考え、わからないと思ったら、セリフ自体か前後する地の文を読めばセリフの主がわかるようにします。

〔さらに表現を磨き、齟齬もなくそう〕

すでに完成度はかなり高まっていると思いますが、さらに磨きをかけていきましょう。


●リズム

ここでいうリズムは、韻文のリズムとは違います。

むしろ、散文の中に急に七五調の文章や文語文が混ざったら、それはそれでリズムが狂います。

また、体言止めや連用止め、現在形の多用も文章の品を落とします。基本的には過去形で書き、ここぞというときに体言止めや現在形を用いるといいと思います。

リズムが悪いなと思ったら、音読してみるのも手です。


●意味は通るのか

「言語明瞭、意味不明」という言葉がありますが、書かれていることはわかるのに、なんとなく意味が伝わってこないときがあります。

こういうときは、自問してみましょう。

「ええと、私は何が言いたいんだっけ」と。

また、文脈のロジックがおかしい場合もあります。

〈AはBだ。そして、BはCだ。〉という流れで書いてきて、〈だから、AはCでない。〉と言われたら、「え?」となりますよね。

筋道が通った文章かどうかもチェックしましょう。


●視点のブレ

たとえば、「ぼく」の視点で書いていた一人称小説で、

〈彼女は内心、帰りたいと思っていた。〉と書いては、「ぼく」は人の心が読めるエスパーになってしまいますね。

このような人物を視点人物と言いますが、視点人物に「見えないもの、聞こえないものなど知覚できないこと」を書いていないか、チェックしてみましょう。


●設定との齟齬

たとえば、聴覚を失った人物が、〈あ、ウグイスが鳴いた。〉と言ったら変ですね。

このような明らかにおかしいという文章のほか、初対面の人から〈君らしいね。〉と言われるなど、なんとなく不自然だな、そんなこと言うかなと思うような文章もあります。

初対面でもお調子者ならそう言ったりすることもあるかもしれませんが、悪くすると、「初対面と言いながら、実は前に会ったことがあるという伏線?」と思われて、その実、伏線でもなんでもなかったとなったら読者は拍子抜けします。


●そもそも必要?

調子よく長々と書いてしまったが、よくよく考えると、「この文章、必要?」と思うこともあります。

「せっかく書いたのだし、私の名文、開陳したい」と思う気持ちはわかりますが、こういうときは削る方向で考えると、想像以上

と、つらつらと挙げていたら、けっこうな分量になってしまいました。続きは「本当の推敲 文章の推敲PART2」に譲ります。

(ヨルモ)

 

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ヨルモって何者?

公募ガイドのキャラクターの黒ヤギくん。公募に応募していることを内緒にしている隠れ公募ファン。幼馴染に白ヤギのヒルモくんがいます。「小説の取扱書」を執筆しているのは、ヨルモのお父さんの先代ヨルモ。